オール1でも行ける高校はある? 不登校の通知表と内申点への影響を元教員が解説

オール1の通知表を目にしたあなたへ
1学期や2学期の終業式の日、学校から通知表をもらった。不登校になってから初めて受け取る通知表。
開いてみると、そこに並んでいたのはオール1。
「もう自分はダメだ」
「まったく勉強ができないんだ」
「高校にも行けないんだ」
そんなふうに傷ついている方、あるいはその姿を隣で見ている保護者の方へ。
まず、安心してください。その「1」は、あなたが思っているほど大きな意味を持つものではありません。
不登校が原因で5段階評価でオール1がつく、これは珍しいことではありません。学校側とのやり取りや地域の慣習によって評定欄が空欄や斜線になっているケースもありますが、多くの中学校では、不登校の生徒にはオール1がついてしまいます。
そのとき、本人も親も強いショックを受けます。
「学校の先生たちは血も涙もないのか」
「学校に行けないだけで家では勉強しているのになぜこんな成績なのか」
そういう不満が湧いてくるはずです。
ところが、これは誤解です。
このオール1は、あなたの努力を学校が否定したものではありません。あなたに学力がないと証明したものでもありません。あなたがこれから学び、その力を生かして世の中で活躍する可能性は、他の生徒と全く変わらず開かれています。
私は長く教員をしていました。元々、成績評価を「つける側」だった人間です。
その立場から言うと、多くの場合、オール1という評価そのものは妥当だと考えています。問題は、オール1という成績の意味やその理由が正しく理解されていないことです。
では、なぜ1がつくのか。高校受験にはどう影響するのか。そして、これからどうすればいいのか。
元教員の立場から、丁寧に解説していきます。
成績評価の本当の意味――オール1は「頭が悪い」ではない
ほとんどの方は、オール1の通知表を見ると「成績が悪い」というより「頭が悪い」と受け取ってしまいます。しかし、それは完全な勘違いです。成績評価にはそのような意味はありません。
そもそも、通知表の成績は知能テストの結果ではありません。頭がいいか悪いかを判断するようなことは、学校では行っていないのです。
これは慰めとして言っているのではありません。本来そういうものなのです。順に説明します。
現在の学習指導要領では、各教科の学習状況を「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」という3つの観点で評価することになっています。教員は、テストや提出物、授業中の発言や取り組みの様子といった材料を通じて、学校で教えた内容がどれだけ身についているかを観点ごとに確認し、それらを総括して評定(5段階の数字)をつけます。
この枠組みは、文部科学省の「児童生徒の学習評価及び指導要録の改善等について(通知)」などの公式資料に定められているものです。

そして、この評定をつけるための途中段階の成績を、通知表と呼ばれる学期ごとに発行する書類(これは公式な文書ではありません)に記載することが習慣化しています。
簡単にいえば、通知表の数字が示しているのは「頭の良さ」ではなく、「学校の授業内容が身についていると学校が確認できたかどうか」です。
そのことを正しく理解するために、1つたとえ話をしてみます。
例えば、アメリカからの帰国子女の子どもが不登校になったとします。その子の英語力は極めて高いわけですが、学校に通っていなければ、英語の評定は1になります。その子が英語ができるということを、学校が確認する機会がなかったからです。もちろん、その子の英語力が低いことは意味していませんし、学校側もその子の英語力が高いことはわかっています。それでも1になるのです。
このように、評定は能力のパラメーターではありません。そもそも学力は、異世界系の漫画で「ステータスオープン」と叫べば出てくるように、正確な能力が容易に数字で表示されるようなものではないのです。
中でも、五段階評価の「1」は特に誤解されやすい数字です。
「1」には、教えた内容がほとんど理解できていないと判断されたときにつく1と、評価する材料が何もないときにつく1の、2つが混ざっています。「未学習の1」と「未評価の1」が、同じ数字で表現されてしまうのです。ここが、大きな誤解を生んでいる元凶です。
今回は中学校の通知表を想定していますが、高校になるとさらに厄介で、全日制では「未修得」(履修したが理解が及ばなかった)と「未履修」(そもそも授業に出ておらず、履修自体が認められない)が混ざります。それが結果的に、単位を認定するか否かといった部分に複雑に絡みます。
このように、中学でも高校でも、学校の成績評価を正しく読み取るにはそれなりの知識が必要になります。そして、その知識が欠けたままオール1という成績を目にすることで、誤解により「傷つく」という事態があちこちで発生しています。
学校教育の専門家でもなければ、「頭が良ければ5、悪ければ1」という単純な制度だと誤解してしまうのは、大人であっても自然なことです。ただし、ここを誤解したままだと、本記事の「傷つく必要がない」という主張の核心が理解できなくなります。
本記事で「オール1でも安心していい」というとき、それは気休めや慰めの言葉として言っているのではありません。正しい制度理解に基づけば「本当に傷つく必要がない」と言っているのです。

不登校のオール1は「評価材料がない」という意味
では、不登校だとなぜ1になるのか。ここまで読んでいただいた方にはもうお分かりだと思います。
不登校の場合の1は、簡単に言えば「未評価」です。評価材料が足りないから1になっているという意味です。
評価材料がないということは、学力が測れていないということです。「学力が低いと測定された」のではありません。「測定そのものができなかった」のです。この2つは、まったく意味合いが異なります。
もちろん、「多少は評価材料を出したのに」という方もいるでしょう。提出物を少しは出した、テストだけは受けた——そういうケースは少なくありません。
そして教員も、提出されたものにはきちんと評価をつけています。ただ、評定というのは評価材料を足し算して、しかも観点別に評価したものを最終的に合わせる形で決めるものなので、評価材料に抜けがあるとどうしても低くなりがちです。これは国の定めた仕組みですから、個人の裁量の余地はありません。
特に現行の学習指導要領で定められた、「主体的に学習に取り組む態度」という観点は、授業中の様子で評価することが多いため、授業に出ていない場合はどうしても低評価(A~CのC)になりやすいです。仮にテストだけ受けていたとしても、他の材料が不足して評定が低くなるのは、現行制度では避けにくいことです(なお、この観点の扱いは次の学習指導要領の改訂で変わる可能性が出ています)。
だから、部分的に頑張ったのに成績が振るわなかったとしても、そこで落ち込む必要はありません。
ただし、加えて気を付けなければいけないことがあります。
それはいわば、動かしがたい現実の部分です。成績はともかく、実際のところ学習内容が身についているかというと、どうでしょうか。
不登校の生徒の中には、日々の学習がおろそかになることで、本当に学力面で1がついてもおかしくない状態の子どもが少なくありません。仮にテストを受けていたとしても、ほとんど点が取れなかっただろうという状態です。
その場合、厳しい言い方になりますが、どちらにしても1はつきます。そして、こちらについては深刻に受け止めなければいけません。

お子さんへの伝え方――学校を悪者にせず、正しく慰める
続いて、オール1の通知表をみて傷つく子どもに対してどのように声掛けをすればよいか。保護者の方に向けて書いていきます。
まず何よりも、大人がこのことを冷静に受け止めてください。ここまで説明してきたシステムを正しく理解して、オール1を見てもショックを受けない。これが肝要です。
私はかつて、不登校の親の会に参加した際に、ある保護者の方から「通知表でショックを受ける気持ちも分かってください!」と言われたことがあります。もちろん事情は承知していますし、そういうリスクがあるなら学校は通知表を発行しないのも1つの手だとも思います(そもそも通知表は作成が義務付けられた公式の文書ではありません)。
とはいえ、失礼を承知で言いますが、そこはショックを受けて立ち止まるのでなく、正しく乗り越えるべきだと私は思っています。なぜならそれはシステムの話に過ぎないからです。自分の思い込みに気づき、それに打ち勝つこと——これはある意味で、不登校という経験から得られるとても大事な学びだと私は思います。
学校の成績評価は、学校での教育活動の理解度を測ったものに過ぎず、潜在能力の評価ではない。学校で活動していないのなら評価はできない(オール1になる)。そのことを真正面から理解して、「この状況ならこうなるよね」と親が冷静に受け止められることがとても重要です。
その上で、お子さんへの声かけです。
子どもは、オール1の意味をほぼ確実に誤解します。「自分はダメなんだ」と思ってしまいます。そう思い込むと勉強への意欲を失い、意欲を失えば実際に勉強しなくなり、勉強しなければ本当に学力が下がっていきます。
誤解が誤解のままで終わらず、現実の学力低下につながってしまうのです。だからこそ、正しい理解を伝えて、慰めてあげてほしいのです。
正しく慰めるとは、学校を悪者にすることではありません。
「学校が間違ってるんだよ、あなたは本当はできる子なんだから」と慰めるのではなく、「学校は評価できないと言っているだけで、そういう制度なんだよ」と、事実を伝えてあげることです。
そして、こう伝えてあげてください。
あなたがこれから学んで、その力を発揮して活躍したいなら、その道は十分に開かれている。成績の数字が悪くても、人生が終わるなんてことは絶対にない。だから数字を気にするより、教科書に載っている内容が正しく理解できているかを気にした方がいい。
自分でわからないならテスト問題や演習問題で確認すればいい(テストとは本来、確認のための検査のことです)。そうやってたまに理解度を測りながら、時間をかけて知識や能力を身につけていく。そして積み重ねた知識や力を使えば、他の子と同じように世の中で活躍できるのだから、何も心配する必要はないんだ、と。

オール1は高校受験にどう影響するか
さて、このような声かけにより心が多少落ち着いたとしても、万事解決とはなりません。この後に控えている現実的な関門として高校受験があります。受験は当然、制度の問題です。
もし制度の面で「オール1だと高校に行けない」のだとしたら、やはり傷つくのが正しいということになってしまいます。その辺りはどうでしょうか。
結論からいえば、そうはなっていません。制度の面でも、オール1でも問題がないように少しずつ変わってきているのです。そのことを簡単に解説します。
先に用語を整理しておきましょう。
通知表の評価は、最終的には「指導要録」という公式の記録に残ります。そして高校受験の際には、指導要録をもとに「調査書」という書類が作成され、そこに評定が記載されます。この調査書に記載された成績・評定のことを、俗に「内申点」と呼んでいます。
通知表の評価は公式のものではありませんが、調査書の評定(内申点)は公式のものです。受験での合否判定にも影響します。ですから、通知表がオール1だと受験で不利になりやすいというのは、確かにその通りです。
ただ、今は不登校の生徒が増えている時代です。そういう子どもたちが高校に行けなくなるような窮屈なシステムから変わってきています。特に公立高校の入試では、不登校の生徒に不利益が生じないような仕組みづくりがかなり進んでいます。
その仕組みは都道府県ごとに違うのですが、その前提の上でいえば、内申点がオール1だったとしても、高校に行けないということはありません。公立高校では「不登校の生徒については内申点を見ずに判定する」といった特別な選抜制度の導入が、かなりの都道府県で進んでいます。
こうした改革は今導入が進んでいる最中ですので、お住まいの県にはまだないかもしれません。令和6年度あたりから毎年いくつかの都道府県が入試制度を改革し、不登校の中学生も対等に公立高校に進学できるようになってきています。導入済みのところもあれば、目下、導入を計画中のところもあります。
そうした制度がまだない県であっても、文部科学省が「自己申告書などを活用し、不登校の生徒に不利益がないように」と各都道府県に求めています。これは国からのお達しですから無視はできません。受験の機会は必ずあります。つまり、学力さえあれば高校に行くことはできます。
そもそも、今は、どの都道府県でも定員割れしている高校がかなりの割合であります。選ばなければ何かしらの高校には行けます。高校受験という関門を心配し過ぎる必要はありません(むしろ心配するなら入学後、高校に通えるかといった問題の方です)。
本ウェブサイトでは、都道府県別に「不登校からの高校入試」を解説した記事を用意していますので、お住まいの県の制度はそちらでご確認ください。すべての県を網羅しているわけではありませんが、県ごとの仕組みの違いは掴んでいただけると思います。
- 東京都の不登校からの高校入試状況
- 神奈川県の不登校からの高校入試状況
- 大阪府の不登校からの高校入試状況
- 愛知県の不登校からの高校入試状況
- 埼玉県の不登校からの高校入試状況
- 北海道の不登校からの高校入試状況
- 千葉県の不登校からの高校入試状況
- 兵庫県の不登校からの高校入試状況
- 福岡県の不登校からの高校入試状況
- 静岡県の不登校からの高校入試状況
- 茨城県の不登校からの高校入試状況
- 広島県の不登校からの高校入試状況
- 京都府の不登校からの高校入試状況
話を戻すと、私が残念に思うのは、オール1の通知表を見た瞬間に「もう高校に行けないんだ」と思ったり、「通信制高校にしか行けないんだ」と思い込んだりしてしまう子どもがとても多いことです。仕方のないこととはいえ、それは短絡的だと思います。
「もう高校に行けない」というのが思い込みであることはすでに説明しましたが、「不登校の子は通信制高校しか行けない」というのもまた別の思い込みです。
本当に通信制高校に行きたいならそれはそれでいいのですが、オール1からでも全日制高校を受験して合格する道は、すでに開かれています。そこは大人が、正しい情報として伝えてあげるべきではないでしょうか。
なお、高校生のオール1(全日制高校で評定1がつく場合)は、進級や卒業に関わる話であり、中学生とは事情が異なります。こちらについては別の記事で解説していますので、高校生で不登校になった方はそちらをご覧ください。
まとめ――通知表ではなく基礎学力に向き合おう
以上、不登校のオール1が何を意味するのか、そして高校受験にどう影響するのかについて語ってきました。さて、本記事の締めくくりとして、もう一度大事なことをお伝えします。
オール1でも問題なく高校に行けます。
ですが、それは学力がどれだけ低くても高校に行けますという話ではありません。不登校でほとんど評価材料がないためにオール1がついている状態ならば、過度に心配する必要はないと言っているのです。
興味深いことに、本ウェブサイトの閲覧者の検索ワードをみていくと、「オール1でも入れる高校はどこか」を調べていた形跡があります。しかし、これは問いの立て方そのものが間違っています。
もちろん、定員割れしている高校など山ほどありますから、オール1でも入れる高校はあります。しかし、それ以前に、オール1という事実には高校受験の選択肢を極端に狭めるほどの影響力がないのです。世間は通知表の成績を過大評価しています。
本記事では、その事実を制度面などからていねいに解説してきました。
もし「オール1でも入れる高校はどこか」という検索が、「基礎学力が欠けたままでも入れる高校はどこか」という意味のものであったなら、答えは「学び直しに力を入れている高校に入学すべき」です。どの都道府県にもそのような高校が公立を中心にあります。場合によっては定時制(3年間で卒業できるところも増えています)も検討すべきでしょう。
しかし、「学力はあるのにオール1の状態で入れる高校はどこか」という意味での検索だとしたら、「たくさんある」というのが答えになります。その場合は制度の理解をちゃんとして、内申点を気にしない受験方式を使えばいいだけのことだからです。
いずれにしても、高校に進学したいのなら基礎学力は必要です。
仮に高校に入学できたとしても、高等学校という課程を卒業しようと思ったら、最低限の学力がないと単位を修得できません。英単語が全く書けない、漢字が全く書けない、簡単な方程式が解けない、日本の歴史を全く知らない——そういう状態で高校に入っても、卒業することができません。
だから、こだわるべきは通知表の数字ではなく、基礎学力です。このことは本当に大事なのに、あまりに軽視されていると感じます。
ですから、学校からの評価に一喜一憂するのではなく、基礎学力という現実と真剣に向き合う。ごまかさず、自分の学力が足りていないのなら、毎日勉強する。それを積み重ねれば、高校に行けますし、卒業もできます。
進学校と呼ばれる高校に入ることだって、不可能ではありません。
通知表がオール1でも落ち込む必要はありません。お子さんの一生を本当に左右するのは学力の部分なのですから、そこをごまかさずに見ていきましょう。
この価値観を親子で共有できていれば、不登校であっても、日々を前向きに、楽しく過ごしていけます。学校のつけた成績(評定)はあなたの価値を決めるものではありません。
どうか落ち着いて、今日からできることを一つずつ積み重ねていってください。
応援しています。

~高校入試をがんばる不登校生、募集中~
ということで、今回は、不登校の子どもがオール1の通知表を受け取ったときを想定して、その正しい理解について考えてきました。
ここまで読んでいただいた方にはご理解いただけたかと思うのですが、不登校の中学生が高校受験を突破するために必要なのは、無理して学校に通うことでも内申点を上げることでもありません。
ひとえに、基礎学力を身につけること。
特に五教科の中学内容をしっかり学ぶ(学び直す)ことに尽きます。
実は、私たちSchorbitは、高校入試に向けて自宅から勉強する中学3年生の支援プロジェクトを開始しました。
その名も、Schorbit REBOOT。
不登校でも高校からはがんばりたい。
高校入試に向けて日中、家で勉強したい。
中学校の学習内容に抜けはあるけど何とか勉強して取り戻したい。
そんな中学3年生(中学2年生の途中から参加可能)を応援します。
詳しくはREBOOT | 中学3年間の学び直しプログラムをご覧ください。多くの中学生の参加お待ちしております。

