高校で不登校になったらどうなる?
進級・留年・卒業の仕組みを元高校教員が解説

全日制高校に通っている途中で不登校になったら、進級や卒業はどうなるのでしょうか。
結論からお伝えします。不登校になったからといって、必ずしも転学や退学しなければならないわけではありません。ましてや「人生もう終わり」のような危険な状況ではありません。
全日制高校の進級・卒業の仕組みを正しく知ることで、取るべき選択肢は見えてきます。
ただし、これは小学校や中学校で不登校になるのとは質の違う問題でもあります。なぜなら全日制の高校は、必ず学校に通わなければ卒業できない制度になっているからです。その点、自動的に進級・卒業できる義務教育の小中学校とは前提が違います。
そして厄介なことに、この種の情報はインターネット上を探しても正確なものがほとんど出回っていません。理由は単純で、制度が複雑だからです。
高等学校は学校ごとに制度の運用が大きく異なるため、不登校になったときに進級・卒業へ向けてどう動くべきか、あるいは通信制高校への転学といった対応をすべきかは、複雑なシステムを丁寧に解きほぐして説明しなければ正しく伝わりません。そのため、どこにも網羅的な解説が出回っていない状況なのです。
筆者はもともと高校教員を長く務め、現在では、不登校の生徒を支援するオンラインフリースクールを運営しています。学校の内側で進級判定がどう行われるかを実際に目にしてきました。
その知識を活かして、本記事では「全日制高校の進級・留年・卒業の仕組み」を解説します(長くなりそうなのでシリーズに分けます、本記事は第1弾です)。
本題に入る前に、前提を申し添えておきます。
一つ目、小学校・中学校と高校ではまったくルールが異なりますので、以下の内容は小中学生にはあてはまりません。
二つ目、高校には全日制・定時制・通信制があり、今回扱うのは「全日制高校」に在籍している生徒が不登校になった場合です。
つまり、小中学校や通信制高校で不登校の状態は、今回の記事にはあてはまりませんので、ご注意ください。
全日制高校の進級と留年はどう決まる?
まず多くの人が気にする「高校はどうやって進級・留年するのか」という土台から説明します。しかし、これは皆さんが思うほど簡単ではありません。
例えば、履修と修得の違い、欠席と欠課の違いなど、教職に就かなければ知る由もないであろう多くの前提知識を学ぶ必要があります。順に説明してまいります。
その前に、まずは誤解されがちな「学年制」と「単位制」の違いから解説します。
これをまっさきに解説したい理由は、時折、「学年制だと留年があって危ないけど単位制なら安心だ」といった誤った理解を目にするからです。結論からいえば、学年制も単位制も大差なく、全日制高校で欠席を続けると進級・卒業できなくなります。
全日制高校には、「学年制」と「単位制」という二つの方針があります。
学年制は、1年・2年・3年と在籍期間を区切り、その学年で決まったカリキュラムの学習が進んでいなければ進級させず、同じ学年にとどまってもらうスタイルです(この「同じ学年にとどめること」は、いわゆる留年ですが、正式には原級留置と言います)。学年制であっても、高校である以上、卒業までに多くの単位の修得が必要なことは変わりません。
一方の単位制は、学年にとらわれず単位を積み上げる仕組みだと説明されます。ところが、ここに一つ目の誤解しがちなポイントがあります。
現実にある「単位制高校」の多くは、学年制のような運用をしている単位制高校なのです。(定時制の単位制高校は少し違った方針のところもあります。)
全日制の単位制高校は、学年の区分やクラス、時間割を残したまま運用している学校が多く、実際の進級・留年の感覚は学年制に近くなります。さらに、高校の科目には履修の順序があり、たとえば数学Ⅰを履修しないまま数学Ⅱから始めることは想定されていません。1年次に数学Ⅰを履修できていなければ、数学Ⅱを学ぶ2年次には上がれないという構造は単位制でも変わりません。
時折目にする「単位制高校なら留年はない」というのは、原則的には正しい表現ですが、実態としては間違っています。単位制高校も学年制のように運用されているところがほとんどだからです。
結局のところ、学年制と単位制という区別はありますが、全日制である限り、どちらであっても毎年3月末に進級の判定がある(つまり事実上の学年制である)と考えてよいでしょう。
そして、進級できないとは、多くの科目が未履修または未修得になる状態(いわゆる単位を落とす状態)を指します。不登校で欠席が続くと、必然的にこの状態に陥り、進級できなくなります。年度末に一度、この判定が行われる形になります。
ただし、進級できないからといって辞めさせられるわけではありません。同じ学年にもう一度とどまり、3年ではなくそれ以上の年数をかけて卒業を目指すか、別の道を考えるかという選択肢があります。
ここは中学校との決定的な違いです。義務教育である中学校は年齢主義で原則として留年がありませんが、高校は出席と成績次第で留年があります。このことは常識かもしれませんが、最初にあらためて強調しておきます。
ここでのまとめです。
- 全日制高校は中学校と違って欠席が続くと留年になる
- それは学年制であっても単位制であっても違いはない
- 進級や卒業の判定は年度末に一度だけ行われる
- 中学校までは留年という考え方そのものがない

「履修」と「修得」の違いをまず押さえよう
進級・留年を理解するうえで、最初に押さえておくべき言葉があります。「履修」と「修得」です。ここを混同すると、何が危険なのかを見誤ります。
「履修」とは、その科目の授業を受けたという事実を指します。成績の良し悪しは関係ありません。あまりに休みが続くとその科目の授業を受けたという事実自体がなくなるのですが、それを未履修といいます。
一方で「修得」とは、まずは履修していることが前提で、その上で学習成果が伴って単位が認められることを指します。5段階評価で評定1がついてしまう状態が、未修得です。
ここで大事なのは、両者はずれることがあるという点です。よく「単位を落とす」と言いますが、その表現では未履修と未修得がごっちゃになっていて、そこには2つのバリエーションがあるのです。
「毎回授業に出ていて一度も休んでいないけれど、テストが0点で評定1がついた」という場合、これは履修はしたが修得はできていない状態です。履修自体は認められています。
「授業を休み過ぎて単位を落とした」という場合、これは履修ができていない状態です。単位が認定されないばかりか、通常は評定もつきません。
履修は出欠席にひもづいている一方で、修得は成績評価にひもづいている、そして修得は履修が前提になっているとお考えください。
なぜこの区別が重要かというと、未履修と未修得では意味がまったく違うからです。卒業に必須の科目を休みすぎて未履修になることと、テストの点が低くて未修得になることは、進級への響き方がまるで違います。この場合、未履修はどうにもなりませんが、未修得ならばどうにかなることもあります。
そのうえで知っておくべきなのが、必履修科目という用語です。これは国が定めた卒業までに「履修」が必須とされる科目のことです。学校独自の取り決めではありません。
日本の高等学校の教育課程では、必ず履修しなければならない科目が定められています。「現代の国語」、「数学Ⅰ」、「英語コミュニケーションⅠ」などがそれにあたります。
このような必履修科目は全教科にまんべんなくあります。ですから、少し意外に感じられるかもしれませんが、「保健」、「体育」、家庭科の科目、芸術科目(学校によって音楽Ⅰ・美術Ⅰ・書道Ⅰなど)、そして「情報Ⅰ」あたりも必履修科目となります。不登校生徒にとって落としがちな必履修科目はむしろこちらの方で、一番多いケースは「体育」でしょう。
受験で重要というイメージのある英語や数学は、必履修科目としては少なく、英語なら「英語コミュニケーションⅠ」、数学なら「数学Ⅰ」だけです。
進級にとって絶対に必要なのは、必履修科目を「履修」することです。「修得」することではありません。つまり、週に1~2度しかない科目(「保健」や「情報Ⅰ」など)をどれも取りこぼさないように、欠かさず出席することです。
必履修科目が未履修となってしまったら、それはもう、どうしようもない状態であり、事実上の学年制を敷いている学校ならば進級できないことになります。それが必履修科目じゃなければ問題のない可能性もありますし、未履修ではなく未修得なら問題ない場合もあります。
本記事の「どうにかなることもある」「可能性がある」「場合がある」といった迂遠な言い回しが引っかかる方もいるかもしれません。しかし、ここは致し方のない事情があります。
後でも触れるのですが、こうした進級にかかわるルールは全国統一の部分はごくわずかで、学校独自の裁量が多くあります。ですから確定的な言い方はできないのです。ただし、実態として、各学校がてんでバラバラにルールを定めているわけではなく、ほとんどの学校が横並びになって、似たような基準で運用しています。
とはいえ、似たような基準といっても、地域ごとや進学校かどうかで大きな差があり、学校によっては必履修科目に限らず、どの科目でも一つが未修得になれば進級できないこともあります。そのため「未修得であっても未履修でなければ大丈夫」などとは気軽に書けないのです。
ここでのまとめです。
- 履修と修得は異なり、出席が足りなくて起こるのは未履修
- 必履修科目が未履修になると進級できない
- 「未修得なら問題ないか」「必履修科目でない科目なら問題ないか」等は学校ごとに異なる

出席は「欠席」ではなく「欠課」で決まる
単位を履修するために必要なのは出席です。出席の仕組みを知るうえで大事なのは、「欠席」と「欠課」が別物だという点です。
欠席とは、1日単位で学校にいないことを指します。世間でいう「学校を休んだ」のイメージに近いのは欠席です。
欠課とは、授業のコマ単位で不在であることを言います。遅刻した場合は、欠席にはなりませんが欠課にはなります。そして、進級にとって重要なのは欠課のほうです。単位は科目ごとに判定されるため、それぞれの授業で欠課が積み上がっていくと危険になります。
判定の目安はおおむね全国で横並びです。各科目について、年間授業時数の3分の2以上の授業出席が必要です。逆にいえば、欠課が3分の1を超えると、その科目の単位は認められなくなります。これは国が定めた統一ルールではありませんが、ほとんどの学校が同じ水準で運用しています。
ただし学校によっては、4分の1や5分の1の欠課で単位を認めない、より厳しい基準のところもあります。
さきほどの必履修科目の話をふまえると、学校には登校できていても欠課が増えて進級できなくなるという事例が起こりうるので、注意が必要です。
具体例を挙げます。
起立性調節障害などで、3時間目からは登校できるという生徒は少なくありません。その生徒は毎日登校し、3時間目以降の授業には毎日出ています。ところが時間割の都合で1・2時間目だけに配置されている授業、たとえば必履修科目の「保健」があったとすると、その授業はほぼ毎回欠課になります。
そのため、他科目は欠課が5分の1程度におさまっているのに、「保健」だけは半分以上休んでいるという事態が起こるのです。この場合、「保健」は欠課が3分の1を超えているので単位を落とします。そして保健は未履修となり、必履修科目でもあるため、柔軟なカリキュラム運用が可能な高校(≒本物の単位制高校)以外では進級できなくなります。本人は毎日学校に来ているのに、です。
特に注意すべきは高校1年です。多くの高校は1年次が必履修科目だらけになっています。ですから高1で特定の時間、遅刻しがちになると、ほとんど進級できなくなるというのが一般的な姿です。
なお、時折、こうした出欠席の記録をどのように残すのかという内容の記事をみかけます。あまり重要ではないと思うのですが、ついでに触れておきます。
出欠席や成績について正式に記録した書類は、通知表ではなく指導要録というものです。そもそも、通知表というのは公式の文書ではありません。
進学・転学・卒業のときには、この指導要録をもとにした書類が相手先の学校に渡ります。進学なら調査書、転学なら転学照会や成績証明書・単位修得証明書といった書類です。ただしこれらは事務的な話ですので、学校に問い合わせれば必ず作成してもらえます(指導要録は見せてもらえません)。
ここでのまとめです。
- 欠課と欠席は異なる
- 授業単位の欠課が単位認定に影響する
- 授業時数の1/3以上が欠課になると未履修になることが多い
- 学校に毎日きていても特定の科目を休み続ければ留年することもあるので注意

赤点での留年は怯えすぎ――進学校と難関大学付属は別
高校で留年ときくと、成績不振、いわゆる赤点を取り続けて留年するのではないかと恐れる生徒は多いのですが、ここは少し怯えすぎかもしれません。
テストの点が低く未修得になっただけで留年するというケースは、実際の高校ではそれほど多くありません。
仮に学則や教務内規で「未修得科目がある場合は進級できない」となっていたとしても、追試験や補習、あるいはレポートなどの課題で、評定1を2に引き上げて進級させる方針の学校が多いからです。(もちろんそのチャンスさえも逃したら未修得になってしまいますので注意しましょう。)
不登校で欠席が増え過ぎて進級できないケースはたくさんありますが、成績不振だけで進級できないケースは、一般的な高校では珍しいです。
ただし、これには例外があります。進学校、とくに難関大学の付属校です。
これらの学校では、学習成果が確認できない(例えばテストの得点が低い)というだけで未修得とし、留年させることがしばしばあります。必履修科目に限らず、どの科目であれ一つでも落とせば卒業させないという方針の学校も少なくありません。
とはいえ、このように成績不振生徒に対して留年という厳しい対応をしている高校は、そう多くはありません。
ここで、高校の卒業要件を押さえておきます。
国が定める高等学校の卒業の要件は、74単位以上の修得と3年以上の在籍です。ここに加えて、学校独自の卒業要件が加わります。特に74単位という数字については、ある程度上乗せされていることが多いです。
とくに進学校では、独自に90〜100単位程度を取れるようなカリキュラムになっていて、そのうち1つでも落とせば卒業させないという厳しい運用をしている場合があります。つまり、国のライン(74単位)を超えていても、学校独自のラインに届かずに卒業できないということが起こり得ます。
そのため、国のラインだけを見て安心はできないのです。
ここでのまとめです。
- 成績不振での留年は多くの高校でそこまで多くない
- 進学校、とくに難関大学の付属校だと厳しいこともある
- 国の卒業要件と学校独自の卒業要件は別にあり、学校独自要件でより厳しくなる

補習や追試で留年は防げる?
進級が危うくなったとき、補習や追試で救済してもらえるのか、というのは誰もが気になるところです。
まず補習や追試は必ずしもやらなければならないものではありません。学校が救済措置として実施している場合もあれば、そうでない場合もあります。ましてや補習や追試はペナルティではありません、完全にその逆です。無料の場合もあれば有料の場合もあります。
多くの高校において、補習や追試・追考査の本来の位置づけは、未修得になりそうな生徒(例えば赤点をとっている生徒)へのサポートです。テストの点が取れず修得が認められそうにない生徒に、もう一度チャンスを与えるためのものです。
したがって、未履修に対するサポートではありません。つまり、授業への出席が足りない生徒に向けて授業回数を増やすという発想ではありません。レポートを出せば認めるという運用も、基本は未修得への救済です。(定期テストでは学習成果が確認できなかったが、後日レポート課題で学習成果が確認できたため修得と見なす、ということです。)
一方で、授業を休みすぎて欠課が増え、未履修になりそうな場合のサポートは何かあるのでしょうか。
結論からいえば、ほとんどありません。
出席不足を補う補習・補講を設けている学校もありますが、これは学校の裁量であり、すべての学校が行うわけではありません。むしろ行っている方が稀です。そして、不登校で継続的に欠課が積み上がっているケースを、その生徒のための個別の補習だけで埋められることはそれほど多くありません。(ギリギリ1回だけ足りない状態であれば、本当に特別に実施しているというくらいでしょう。)
整理すると、テストで赤点を取った場合(未修得)は救済の余地が比較的あり、授業を休みすぎた場合(未履修)は救済が効きにくいというふうに、端的にまとめることができます。
なお、不登校になる時期によっても見通しは変わります。冬に不登校になった場合は、その時点で年間の3分の2以上の出席をすでに確保できている可能性が高く、そのまま欠課が増え続けても、進級できる可能性が高いです。
秋から不登校になった場合で、欠課がギリギリ3分の1を超えそうかどうかというときは、なんとか踏ん張って少しでも出席して単位認定を目指すのもひとつの手です。
また、次回の記事で詳しく述べますが、冬に不登校になると、そこから通信制に転学してもその年度で単位をほとんど修得できないため、実際、なんとか年度末まで全日制高校に在籍してから新年度に転学した方がベターな選択肢となります。
ここでのまとめです。
- 補習や追試は基本的に未修得のための対応
- 欠課が多い場合(未履修になりそうな場合)はそうした対応がないことが多い
- 対応をするかどうかは学校独自の裁量
- 年度末の時点で欠課が3分の1を超えるかどうかで状況がまったく異なる

別室登校やオンライン授業は「出席扱い」になる?
出席が足りないけれど特別な事情がある、何とか出席扱いにできないか――こういったご要望も多くあります。
実際、国(文部科学省)は、教室にいなくても学べる仕組みづくりに着手しています。ただし内容は大きく二つに分かれ、ここを混同すると話がかみ合わなくなります。
一つは、在籍校が配信する同時双方向型の遠隔授業を自宅などで受ける形です。
令和6年4月から、全日制・定時制の不登校生徒についても、校長が認めれば自宅からのオンライン受講を授業として扱い、単位として認められるようになりました。
上限は74単位のうち36単位までで、病気療養中などの場合はこの上限を超えても差し支えないとされています。これは出席日数だけでなく単位にもなる、本格的な仕組みです。

ただし「認めてよい」というのは、その学校がやっていなければ使えないという意味です。そして執筆している2026年時点で、実際にはやっていない学校がほとんどです。配信には相応のコストがかかるため、やろうとしてもできないという事情を抱えた学校が多いようです。
そのため、制度の文面ほど現場は柔軟ではなく、国が現場の対応力を超えて緩和しているというのが実態に近い理解です。
もう一つは、教室の外での活動を「出席扱い」にする形です。
文部科学省が平成21年に出した通知によれば、学校外の施設での相談・指導が、校長の判断で出席扱いになることがあります。ただし、ここで決定的に重要なのは、この出席扱いは多くの場合、欠課ではなく欠席を減らすという話であることです。
この通知にも、出席扱いと科目の履修認定は別であり、履修認定は在籍校の要件に照らして行うと明記されています。つまり、学校の出席扱いになっても、それがそのまま単位になるわけではありません。
つまりこの制度は、進学や就職時の調査書上の表記をよくすることには役立っても、進級や卒業の判定については役立たないことが多いのです。(ここで、進学や就職時の表記について深入りすると長くなってしまうので、別の記事に譲ります。)

では、外部機関での学びを単位として認定することはできないのでしょうか。
いえ、それも制度上は可能です。
外部の教育機関での学習成果を、校長の判断で高校の正規の科目の修得として単位認定することは、学校教育法の施行規則に基づいて古くからおこなわれてきました。例えば留学した生徒が戻ってきたときに、現地で学んだ単位を読み替えして、そのまま元の学年にできるように再度編入するなどの運用がそれです。
ところが、不登校生徒の対応として、この制度をそのように活用した事例はほとんどきいたことがありません。
学校ではない施設、いわゆるフリースクールのようなところで、在籍校のカリキュラム上の単位を、外部施設ですべて代替して長期間学んだという事例は極めて起きにくいのです。制度上は許されても実例としてはほとんど存在しないのではないでしょうか。(この辺り、詳しい方はぜひご教示ください。)
科目のレベルでいえば、英語学習だけ外部で学んできたというようなことはあるでしょうし、それなら英語関連の単位は特別に認定できます。ですが、その学年では他の単位も履修しているわけですから、外部での活動を優先させて内部での授業が欠課続きになり、それらの単位を軒並み落とすとなれば、最初に述べた学年制の問題によって進級できなくなってしまいます。
このように、外部施設での学習を在籍校の出席にするとか単位認定するといった仕組みは、高校段階ではほとんど整っていません。地方自治体(教育委員会)が運営している教育支援センターは、主に義務教育の小中学生を対象としており、高校生を受け入れる例は極めて稀です。フリースクールも高校生を受け入れていますが、単位認定にはつながっていません。
そのため、外部施設での学習で高校に登校しないまま進級を果たすということは事実上、ほぼ不可能だと考えてください。
中学までは外部施設での学習を出席扱いにすることが珍しくありませんが、高校は義務教育ではないため、この種の施設やルートがほぼないということです。より正確にいえば、制度の上ではあるのに実態としてはない、ということになります。
次に、学校内での教室外での学び、つまり別室・保健室登校についてみていきましょう。
こちらは学校内にいるわけですから、基本的に学校長の判断で柔軟に運用することができます。別室・保健室登校を出席扱いにする学校もあれば、教室にいなければ認めない学校もあります。学校の出席にはなる(欠席は増えない)が、授業の出席にはならない(欠課は増える)といったところが多数派だと思われます。
あるいは、事情によって個別に判断しているところもあります。例えば、いじめの相手がいて教室に入れないといった事情があれば、校長の判断で特別に認めるといったような運用です。
あるいは、別室でPCやタブレットなどを使い、教室で行われている授業をそのまま視聴する形であればその授業の出席として扱う(欠課ではなくなる)が、その授業を自宅で視聴した場合は、原則として欠席扱いになるなどのケースもあります。これはつまり、学校内にいるかどうかで授業出席を線引きしているわけです。
いずれにしても、学校出席・授業出席ともに制度や運用が様々あるため、在籍校ではどういう対応になるか個別に担任教員にたずねるのがよさそうです。
ここでのまとめです。
- 自宅で遠隔授業を受けたものを単位認定する制度は最近始まったが、設備面での制約もあり、あまり普及していない
- 制度の面では全日制高校でも外部施設で学校の出席や単位修得を認めることができるが、不登校についてはあまり機能していない
- 保健室や別室での登校は学校への出席になるが問題は授業出席であることは変わらない
- 保健室や別室での遠隔授業を授業出席とみなすかは学校ごとに判断がわかれる

病気やうつで通えないとき進級はどうなる?
病気で通えない場合にどうなるかは、学校ごとの慣例や、個別の事情によって大きく分かれます。
まず制度の面では、病気療養中などの生徒に対して、前章で触れたように遠隔授業や通信教育を単位数の制限なく行える仕組みがあります。くり返しになりますが、これは文科省が「そうしてもいいよ」と定めた制度であって、実際にすべての学校で運用されているわけではありません。
また、これが効力を発揮するのは主に身体的な療養です。
実際、骨折や入院など身体的な事情で通えなくなった場合は、こうした配慮も含めて、何らかの対応がとられることがほとんどです。つまり、退院後に抜けていた分のレポート課題を提出すれば、その期間も出席していたことを認めるなどといった対応です。
ただし、すべての学校が同じように動くわけではなく、ここを強く期待しすぎるのは禁物です。
難しいのは、起立性調節障害であったり、うつなど精神面の不調であったりする場合です。
これは特に学校によって対応が分かれます。診断書を提出すれば考慮してくれる学校もあれば、そうでない学校もあります。診断書は、学校が必ず従う絶対的な書類ではないため、特に効力を発揮しないこともあるのです。
基本的には、そうした事情を鑑みて、特別措置がとられることは稀だと考えてください。
ただし、文部科学省が身体的な病気と精神的な不調とで、進級の扱いに明確な線を引いているわけではありません。「骨折で登校できないのは進級させろ、鬱で登校していないのは進級させるな」などと言っているわけではないのです。
現実にそこで差が生まれているのだとすれば、それはもう、学校の慣例としかいいようがありません。
文部科学省の決めた大枠にしたがいつつも、進級や単位の認定は、最終的に在籍校の学則や教務内規にもとづく校長の判断になります。その中で慣例的に、身体的な療養と精神的な療養で扱いが異なる場合がある、ということです。
また、うつ等の場合は、特別な配慮をして進級させることがその生徒にとっての正解とは限らない点にも注意が必要です。
空白期間が授業についていけな状況を生みがちですし、「好きなだけ休ませる」「学校から離れる」「もう1年かける」といった様々な選択肢から、本人にとって最適な道を考えるのが妥当です。
ここでのまとめです。
- 骨折による入院などの場合は特別な対応で進級や卒業ができるケースが多い
- うつ等の精神的な不調の場合はそのような対応がないケースも多い

担任と何を確認し交渉すべき?
ここまで読んでいただければお分かりの通り、不登校の高校生の対応は制度も複雑なため、学校に直接確認しなければどうにもなりません。担任の教員と、「こういう場合はどうなるのか」を細かく確認し、打ち合わせをすべきです。
ここでは、不登校生徒の保護者が担任教員に電話で問い合わせするシーンを想定し、何を確認すべきか、どんな交渉をすべきかを解説します。
最も大事なのは、その学校のルールを正確に知ることです。
進級・卒業の基準は文部科学省の基準とは違い、学校ごとに学則や教務内規で定められています。生徒手帳に載っている場合もありますが、載っていない学校も多くありますし、教務内規はたいてい載っていません。これは教員から直接確認してください。
なお、学校によっては、こうした基準を生徒や保護者に詳しくは教えない方針のところもあります。意地悪ではなく、内規は開示しないという運用をしているためです。その場合でも、自分のケースではどうなるのかという形で具体的に尋ねるとよいでしょう。例えば「今度のテストを当日受けられないと進級は厳しいです」といった形で説明を受けることができます。
次に、動くタイミングです。
不登校支援の世界では「まず休ませましょう」という言葉が広がっています。それはそれでよいのですが、この手の通説は休み続けても自動的に卒業となる小中学生向けの言葉だといっても過言ではないので、高校生にそのままあてはめるのは危険です。
高校生は休み続けると進級も卒業もできません。いつごろ動き出すか、タイムリミットから逆算しておく必要があります。
多くの学校では、欠課が年間授業時数の3分の1を超えればその科目は未履修となり、ほぼ自動的に留年が決まります。そうなる前、たとえば欠課が4分の1あたりに達した時点で、今の高校で頑張り切るのか、別の学校(主に通信制高校)に移るのか、それとも今年は諦めて来年あらためて進級するのかを、感情をいったん脇に置いて冷静に考える必要があります。
そのうえで、学校にどんな対応を求めるのかを、目的を分けて確認してください。
一つ目は、欠課を増やさず単位につなげるための対応です。「オンライン配信や別室受講、レポートでの代替」などが、正規の授業の出席・単位として認められるのかどうか。前章のとおり、学校の登校(出席扱い)と単位の履修認定は別物なので、ここははっきり詰めておく必要があります。
この際、「いくつかの科目は可能だがいくつかはそうではない」という場合は、残りの科目を落としたとき(未履修となったとき)どうなるかも合わせて確認しましょう。たとえば、「体育」だけはその場所にいないと授業出席のカウントにならない(遠隔授業を認めない)といった事情が考えられます。そして「体育」は必履修科目なので、それにより他科目がすべて履修・修得済みであっても進級できなくなることも、十分ありえるのです。
基本的に、こうした問題についての個別対応はできないことの方が多いでしょうから、あまり期待し過ぎないようにしてください。
二つ目は、不登校で勉強から離れすぎないための、学習面のサポートです。これは進級や卒業のための単位とは別の話で、しばらく学校を休んだ後でまた教室に戻ったときに、学んだ内容に抜けがありすぎて困らないようにする、という趣旨のものです。
途中にも記載しましたが、不登校の生徒のために学校が補習授業をしてくれるというようなことは、基本的にはありません。ですので、手厚いサポートを当てにするのではなく、もしやってもらえることがあればそれはありがたく受けるという心構えがよいかと思います。
では、実際には何をお願いするのか。段階があります。
まずは「いま学校でどこまで進んでいるか」を教えてもらうことです。たとえば「教科書の何ページから何ページまで進みました」という範囲を一覧でもらえないか、授業中に配ったプリントをもらえないか、といったあたりです。これだけでも家庭で学習を進めるときの助けになります。このくらいならば大抵は対応してもらえます。
その次の段階として、休んでいる間に家で勉強した成果を見てもらえるかどうかを相談することです。例えばワークに書き込んで提出するといった形です。事情によっては、こういったものを提出すれば成績の面で多少考慮してもらえることもあります。特別課題というより、本来のノート提出などを、遅れて出させてもらうとか、オンラインで出させてもらうというイメージが妥当です。
こうした学習面でのサポートは、子どもが学校や勉強に対する興味関心を失わないようにするために役立つ一方で、学校が原因で疲弊している場合は精神的な負担にもなりえます。どちらが正しいかは状況をみて判断すべきです。
三つ目は、成績の面で単位を落としそうな場合(不登校とは別の話ですが連鎖して起こり得ます)、補習や追試がどうなっているかを聞いておくことです。とくに進学校では、すべての科目が履修済み(欠課が超過しない状態)であっても、一つの科目でも未修得になると進級・卒業できないことがあります。
高校の制度は複雑ですし、学校ごとに違うからこそ学校との交渉が極めて重要になります。その窓口は第一には担任でしょうから、欠課が増えすぎた場合にどうするかまで含めて、電話で細かく共有しておくことを強くおすすめします。
一度の電話ですべてを解決させるよりも、定期的に連絡する形の方がよいかと思います。
ここでのまとめです。
- 高校ごとに対応が違う以上、学校との対応確認は必須であり、担任教員への電話が最適
- 学校の教務内規にある進級や卒業の条件は詳しく教えてくれないこともある
- 休みが続く場合、いつ頃から進級・卒業が難しくなるかという時期を尋ねるべき
- 欠課を増やさないための対応として何かあるか、学習サポートが何かあるか、成績不振になった場合の対応(追試など)はどうなっているかも確認すべき

まとめ――全日制で不登校になったときの選択肢
全日制高校で不登校になったとき、進路としては大きく三つの道があります。今の高校でそのまま進級・卒業を目指す道、転学する道、そして退学する道です。
本記事は高校の制度解説ですので、どちらかといえば、そのまま進級・卒業するための手段に近いところを細かく解説してきました。そして次回(第2弾)では、今の高校での進級・卒業を諦めて転学する場合に、どう動けばよいかを解説します。
残る道、退学についても一点だけ補足します。
退学したからといって、高校を卒業して大学へ進むルートが消えるわけではありません。高等学校卒業程度認定試験(高認)を経て大学を目指す道があります。どれを選ぶべきかをこの記事で決めることはできませんが、選択肢が一つではないことは知っておいてください。(高卒認定試験についての記事も豊富にございます、例えば以下をご確認ください。)
最終的にどういう道を選ぶにせよ、まずは前提として「全日制高校がどういうところなのか」を知らなければなりません。本記事では、判断の前提となる全日制高校について解説しました。
くどいようですが、インターネット上の記事には誤った内容が少なくありません。義務教育である中学校までとそうでない高校とでは話がまったく違うという点も、ご存じない方が見受けられます。そうした現状を改善すべく、網羅的に書いたつもりです。
こうした情報が何かのお役に立てば幸いです。また、内容についてご不明点等ございましたら、公式LINEのチャット等でお寄せいただけますと幸いです。

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