通信制高校から総合型選抜は受かりやすい? 実態と合格までの準備を元教員が解説します

通信制高校から大学に進学する方の多くが、総合型選抜という入試方式を選びます。そして、その総合型選抜について、よく聞かれることがあります。
「総合型選抜は受かりやすいのですか」という質問です。
先に結論をお伝えします。多くの場合、受かりやすいです。世間で言われているほど、特別な対策が必要なわけではありません。
ただ、この「受かりやすい」という話を正しく理解するには、昨今の大学受験市場の知識が必要です。それは、いってみれば、総合型選抜には性質のまったく違う「二つの顔」があるということです。この記事では、その込み入った事情をできるだけわかりやすくお伝えしていきます。
なお、この記事は総合型選抜を解説する連載の二本目です。制度の仕組みそのもの(AO入試からの経緯や、選抜方法など)は一本目で詳しく書いていますので、そちらもあわせてご覧ください。
なお、私はもともと高校で教員をしていたため、総合型選抜の実態をいわば内側から見てきました。現在は利害関係のない状態、つまり総合型選抜の難しさを説いて対策を売る立場でもなく、総合型選抜の易しさを説いておススメする立場でもないからこそ、どちらにも肩入れせず、フラットな立場で書くことができます。
以下では、あまり語られることのない真実の姿をお伝えしてまいります。
同じ総合型選抜でも「二つの顔」がある
ひとくちに総合型選抜といっても、その中身は二つに分かれています。
ひとつは、難関大学の総合型選抜です。こちらを突破するには、本当に入念な準備が必要で、決して楽ではありません。
世間で「特別な経験や実績がないと受からない」「探究活動や資格が要る」「いやそれらがあっても大学のアドミッションポリシーと一致していないと落ちる」と語られているのは、主にこちらの話です。
週刊誌などのメディアや大手予備校が大々的に取り上げるのも、こちらの話ですから、インターネット上で検索して辿り着くのもこちらがほとんどとなってしまいます。
もうひとつは、難関ではない大学の総合型選抜です。その実態は、定員割れに悩む大学が、学生を確保するために出願や選抜のハードルをぎりぎりまで下げた入試形式です。こちらは、率直に言ってかなり受かりやすい入試です。
こちらはあまりメディアで報じられることがないので、実態をご存じの方は少ないと思います。インターネット上にもほとんど情報が出回っていません。口コミでしか広まっていないように感じます。
ところが、人数で見れば、圧倒的に多いのは後者のほうです。ありていにいえば、通信制高校や不登校から総合型選抜を受ける場合、受験先のほとんどはこちらにあたりますので、参照すべきはこちらです。
受験情報でよく目にする「総合型選抜は特別な対策が必要だ」という話は、難関大学という一部の世界を基準にしたものなので、あまり参考にならないのです。多くの人にとっての総合型選抜は、もっと現実的で、もっと受かりやすいものだと考えていただいて差し支えありません。

なぜ総合型選抜はこれほど広まったのか
ではなぜ、難関大学ではない大学において、総合型選抜がこれほどまでに広まったのでしょうか。
背景にあるのは少子化です。日本ではここ数十年に渡り、子どもの数が減っていく一方で、大学や学部の数はむしろ増えてきました。
その結果、いまや私立大学の半数以上が定員割れをしています(この点は一本目の記事でも詳しく触れていますので、興味のある方はご参照ください)。なんとかして経営破綻をまぬがれようと、必死になって学生をかき集めている大学がたくさんあります。
そうした大学からすれば、なんとかして早めに学生を確保したいわけです。そこで、年明けの一般選抜を待つのではなく、秋のうちに行える総合型選抜や学校推薦型選抜に力を入れるようになりました。
一方で、その方針は受験生にとっても好都合でした。
実をいうと、高校生の多くはそれほど勉強を得意としているわけではありません。学力にあまり自信がないが大学には行きたい、できれば早く合格を決めて安心したいと考えている受験生は、想像以上に多くいます。
というか、高校生の過半数はそうです。今や高校生の6割は大学に進学する時代ですが、塾や予備校に通って過去問を解いたりして大学に進学しようと考えている高校生は少数派です。
高校生(受験生)側のニーズとしては、主に2つです。学力勝負の筆記試験はできれば受けたくない、高3の卒業間際まで勉強を続けるのは耐えられない(早く合格したい)。
この「早く学生を確保したい大学」と「早く合格して安心したい受験生」、双方の事情がぴたりと合致したところに、総合型選抜が広まった理由があります。総合型選抜は、受験生も大学も、双方がラクになる入試として受け入れられていったのです。
この経緯を知っているか否かが、総合型選抜の正しい姿を見抜くうえで極めて重要になります。そのことを、1つのニュースを例にとって考えてみましょう。
近年、総合型選抜と学校推薦型選抜を合わせた「年内入試」での入学者が、5割を超えたことが大きく報じられました(2024年度入試で、合わせておよそ52.9%、私立大学ではおよそ53.3%とされています)。
マスメディアには、この数字を参照しつつ、「これからは筆記試験ではなく推薦の時代だ」「座学よりも探究活動や体験が大事になったのだ」と語る人が大勢あらわれました。
ですが、この読み方は数字の意味を取り違えています。
5割を超えたことに強く影響しているのは、難関大学ではありません。定員の確保に苦労している、多くの難関ではない大学です。そのことは世の大半は難関大学でないという事実(数の割合)を考えれば明らかです。
したがって、この数字が示しているのは、「難関ではない大学にとっては一般選抜ではなく推薦や総合型で学生を集めるのが大半になった」という事実です。難関大学が一般選抜から総合型選抜等の年内入試に軸足を移したからだというのは、分析として誤っています。
この例からもわかるように、ひとくちに総合型選抜といっても、難関大学とそうでない大学の事情を一緒くたにして理解すると、実態からどんどん離れていってしまいます。
そして、残念なことですが、このような誤った解釈がマスメディアを通じて語られることで、受験生や保護者の間で誤った理解が浸透してしまっています。この記事はそこを正して、真実の姿をお伝えしようとしています。

実は資格も実績も探究も要りません
難関大ではない大学の総合型選抜について、もう少し具体的にお話しします。
こうした大学の総合型選抜では、多くの場合、ボランティア経験も、生徒会の活動も、英検などの資格も、立派な研究計画も、特に必要ありません。もちろんあるに越したことはありませんが、そうしたものがなくても十分に合格できます。
実際、高校3年生の夏にオープンキャンパスに行くと、「面接ではこういうことを聞きますので、こう答えれば大丈夫ですよ」と、ほとんど答え方まで教えてくれるような大学もあります。あとは出願してアドバイス通りに受け答えするだけです。
先ほど述べた通り、多くの総合型選抜の実態は、大学が定員を確保するためにハードルをできるだけ下げた入試ですから、そこまで特殊な対策をする必要はないのです(もちろん通り一遍の面接対策は必要です)。
受かりやすい大学入試というと、指定校推薦を思い浮かべる方も多いと思います。指定校推薦は学校推薦型選抜のひとつで、高校と大学の信用に基づいているため、極めて受かりやすい(より正確にいえば大学側が不合格にしにくい)ことで知られています。
ですが、出願のハードルまで含めて冷静に比べてみると、実は総合型選抜のほうがハードルが低いとさえいえます。
指定校推薦を使うには、まず高校に推薦してもらう必要があり、そのためには一定の評定平均や生活態度が求められます。つまり、高校での生活や勉強をそれなりに頑張っていないと、そもそも選んでもらえません。
一方で、総合型選抜は、高校の許可がなくても、本人の意思だけで出願できます。評定平均が低くても、出願そのものは妨げられません。そして、大学によりますが、評定平均はほとんど参考としない場合もありますし、多少低くても問題なく合格する場合も多くあります。
ですから、出願までの条件を加味すると、一番ハードルが低いのは、実は総合型選抜なのです。
なお、指定校推薦の仕組みについては、別の記事で詳しく書いています。よろしければそちらもご参照ください。
多くの大学で総合型選抜はどう準備すればよいか
では、難関大学ではない大学の総合型選抜を受ける場合、実際にはどのくらいの準備が必要なのでしょうか。読者の方がいちばん知りたいのは、ここかもしれません。
結論から言えば、難関大学とはまったく別世界で、長い準備期間は必要ありません。
実のところ、夏休みにオープンキャンパスへ行き、9月の第一回の総合型選抜にそのまま出願し、10月に面接などの試験を受けて、11月に合格するというスケジュールも珍しくありません(総合型選抜は、制度上9月以降に出願し、11月以降に合格が発表されます)。
これだと、たった1~2か月しか準備をしていないことになりますが、少なくない受験生がそれだけで合格しているのが現状です。
では、その1~2か月で何を準備するのでしょうか。
簡単に言えば、出願書類をきちんと書き、その内容を自分で理解したうえで面接に臨む。やるべきことは、ほぼそれだけです。世間で語られるような、探究学習やボランティア活動や留学などの特別な体験は必要ありません。
出願書類で最も重要とされるのは、二種類の志望動機です。ひとつは「なぜその学問、その学部・学科を学びたいと思ったのか」。もうひとつは「なぜその大学で学びたいのか」。この二つを、自分の言葉で明確に書くこと(話すこと)が出発点になりますし、極論をいえば、ここさえ押さえておけば高校時代にがんばったエピソードなどは薄くても構いません。
そして、ここで大切なのは、むやみに立派な志望動機を書く必要はないということです。
たとえば普通の高校生が、日頃から制作金利や国債の利回りを気にして暮らしている、などということはほとんどありません。そんなことは大学側も百も承知です。ですから、仮に経済学部を総合型選抜で受けるのだとしても、無理に自分を経済マニアに見せる必要はありません。
「最近スーパーで買うものの値段が少しずつ上がっていて、なぜ物価は上がるのだろうと気になった。だから経済を学んでみたい」
この程度で十分なのです。
問題は、それを具体的なエピソードとして語れるか、メカニズムへの関心が語れるかの方です。面接の場ではフリーズしないことが重要ですし、背伸びをしない、自分の中から出てきた素直な言葉の方が好感をもたれるものです。
それにふまえて、これは私が生徒を指導してきたなかでも度々念を押してきた注意点をお話しします。
生成AIなどを使って、もっともらしく難しい言葉を並べたり、自分でも理解していない立派な文章を書いたりしないでください。そういう書類は、面接で必ずと言っていいほどぼろが出ます。志望理由書が得点化されるということで、ここで「はったりをかまそう」と考える受験生はよく見かけるのですが、それは危険です。
ですから、素朴な内容でもかまわないので、自分がきちんと理解し、自分の言葉で語れることを書く。
難関大学ではない大学の総合型選抜で大事なのは、突き詰めればそこに尽きます。

おわりに(恐れすぎないこと)
ここまで、定員割れをしている私立大学の総合型選抜の現状を中心に、総合型選抜対策の正しい姿について、かなり率直に書いてきました。記事を終える前に、ひとつだけお伝えしておきたいことがあります。
難関大学とそうでない大学では、総合型選抜の難易度に著しい差があるのは事実です。ですが、難関でない大学を「入学する価値がない」と見下すつもりはまったくありません。学歴がすべてだという考えもありません。
どの大学であっても、入って学び、卒業し、社会に出て働いていく。それは立派なことです。総合型選抜により大学に入学し、そのようなルートを辿ることを否定する気持ちはありませんし、むしろ全力で応援しています。
本記事を参考にして、総合型選抜を用いて大学に入学し、その後も大いに学んでいただければ幸いです。
途中でも少し述べましたが、私が気になっているのは、昨今、総合型選抜を新しく華やかな入試のように持ち上げて、学校の勉強を地道に続けている生徒をまるで時代遅れであるかのように語る風潮があることです。
例えば高校の関係者が、総合型選抜での大学進学者が多いことを自慢げに語る光景を何度もみてきました。
ところが、本記事で散々語ってきたように、総合型選抜には二つの顔があり、世の中の多くを占めているのは、受かりやすいほうの総合型選抜です。世間で語られる「特別な対策が必要だ」という話は、難関大学という一部の世界の話にすぎません。総合型選抜そのものは、むしろ最も受かりやすい入試方式だとさえいえます。
とするならば、受かりやすい方式でたくさん進学しているという事実は、あまり自慢になりません。これが自慢として成立するのは、世間が難関大学の総合型選抜を意識し過ぎているからであり、同時に、そうではない大学の総合型選抜について無知であるからです。
こうした風潮にのまれて、受験生や保護者が総合型選抜を過度に恐れるようになることがもったいないと思うのです。特に受験情報に触れる機会の少ない通信制高校生やその保護者になると、なおさらです。
通信制高校や不登校から総合型選抜を受けようとしている方は、どうか過度に身構えないでください。特別な対策も経験がなくても、十分に合格できる大学はあります。大金を払って専門塾に通う必要もありません。
そうした励ましをすることが、この記事を書いた目的です。
もちろん、大学受験の世界は複雑です。
今回は触れませんでしたが、総合型選抜にはもうひとつの顔もあります。難関大学の総合型選抜を本気で目指すのであれば、話は別です。そちらは本当に大変で、しっかりとした準備が必要です。
その世界については、次回の記事で詳しくお話しします。

~大学入試を戦う通信制高校生、募集中~
通信制高校からの大学受験で本当に必要なのは、どのような受験制度を利用するかなどの戦略と、それに向けた最低限の努力です。特に難関大学を目指す場合、その努力は日々続ける必要があります。
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決まった時間に全員で授業を受ける形ではありません。一人ひとりとの面談を中心に、何をどれくらい学習するかを一緒に決めながら、理解度を都度確認し、受験までの道のりに伴走します。
総合型選抜で現実的に合格をつかむのか、一般選抜でしっかり学力をつけて挑むのか。
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