通信制高校にも指定校推薦枠はある。
でも本当に見るべきは枠の中身
(元教員が解説します)

「通信制高校に転校したら指定校推薦はどうなるんだろう」
全日制高校で不登校となったお子さんの進路を考えるとき、まっさきに思い浮かぶのが通信制高校への転学です。その際、この疑問にぶつかる保護者の方は多いと思います。
結論から言います。指定校推薦の枠は通信制高校にもあります。
いくつかの広域通信制高校が強調しているような「400校以上の大学・短大・専門学校から指定校枠がある」といった紹介も嘘ではありません。
ただ、急いで補足させてください。実をいうと、その質問の立て方そのものが少しズレているのです。
指定校推薦は、枠があるかないかだけで判断しようとすると進路選択を見誤ります。本当に見るべきなのはその枠の中身だからです。
私は元高校教員で長らく進路指導をしてきました。指定校推薦で生徒を送り出した経験も豊富にあります。さらに現在は、全日制高校の教員を退職し、通信制高校を運営しているわけでも、通信制高校を紹介して資料請求をうながす立場でもありません。
だからこそ、通信制高校への転学をすすめる側にも止める側にも寄らず、指定校推薦という制度の実際のところを正直に書けます。
この記事では、指定校推薦の構造(余る枠と奪い合われる枠の違い)を解説したうえで、通信制高校への転校で本当に失うものの正体を、できるだけ正確にお伝えします。
■そもそも指定校推薦とはどういう制度か
通信制高校の話に入る前に、指定校推薦という制度そのものをご説明します。ここを押さえないと、枠があるかないかという議論が空回りするからです。
ほぼ私立大学だけの制度
制度の仕組みから言うと、指定校推薦はほぼ私立大学だけの制度です。国公立大学には基本的に存在しません(ごく一部の公立大に例外はあります)。これは通信制か全日制かに関係なく、もともとそういうものです。
つまり指定校推薦を考えるということは、最初から私立大学への進学を考えるということになります。国公立大学が第一志望なら、このルートはそもそも選択肢にほとんど入りません。
全体としては余っている
もう一つ、世間のイメージと大きくズレている事実があります。指定校推薦の枠は、全体としては余っているのです。
多くの人が思い浮かべるのは、一つの枠を複数の生徒が奪い合い、評定の高い生徒が勝ち取るという光景でしょう。たしかにそういう奪い合いは存在します。
ただしそれは難関大学の枠に限った特殊な話で、指定校枠の大半は毎年使われないまま余っています。大学が高校に枠を配っても、その大学を志望する生徒がいなければ、枠はそのまま消えていきます。ほとんどの枠はそうやって使われずに消えている状態です。
つまり指定校推薦は、ほとんどの枠が余っている中に、ごく一部だけ激しく奪い合われる枠が混じっている制度です。枠の有無で議論することがズレている、と述べた理由がこれです。枠の有無よりも激しく奪い合われる枠(難関大学)があるかないかを見る必要があるからです。
次の章では、その奪い合いがどこで起きているのかを見ていきます。

■奪い合いが起きるのはごく一部の高校だけ
では、その奪い合いはどこで起きているのか。
難関大の枠は進学実績のある高校に偏る
難関私大は、指定校の枠を誰にでも配るわけではありません。
過去に合格者や入学者を出してきた高校に対して配る傾向があります。だから難関大の枠は、いわゆる進学校に偏ります。実績の積み重ねがそのまま枠になる仕組みなので、これは仕方のないことです。
ところが面白いことに、トップの超進学校(地域ではなく県で1番か2番の学校)ではその難関大の枠すら余りがちです。そういう学校の生徒は指定校推薦を使わず、一般選抜でさらに上の大学を狙うからです。
結果として、指定校の奪い合いが実際に発生するのは中堅の進学校に限られます。
高校入試の偏差値でいえば、だいたい50〜65あたりの学校です(ここでの偏差値は高校入試のもので、大学の偏差値でいえば40~55といった辺りです)。この層の生徒にとっては、評定を高く保ってGMARCHや関関同立といった難関私大の指定校を取りにいくことが、現実的で有利な戦略になります。
これより偏差値帯が下の高校でも指定校推薦での進学が大半ですが、その場合は難関大学の枠が最初からないことがほとんどです。ですから、奪い合いというほどのことは起こりません。難関大学はないものの、指定校の枠自体は余っているため、たくさんある中から自分に合うものを探すだけというイメージです。
(これより少し下の学力帯、例えば高校入試の偏差値で45~55の高校でも、成績トップ層が日東駒専や産近甲龍の指定校推薦枠を取り合うといった事態は起きていますが、ここでは詳述しません。)
地域差も大きい(奪い合いは都市圏に限られる)
さらに踏み込むと、この奪い合いは地理的にもかなり偏っています。
指定校枠の中心になる難関私大が、東京周辺と京都・大阪を中心とした関西圏に集中しているからです。
つまり指定校の獲得競争は、首都圏と関西圏の中堅進学校というごく限られた場所で起きているローカルな出来事です。枠そのものは都道府県をまたぐこともあります(例えば同志社大学の指定校枠を大阪府の中堅進学校が取り合う、といった形です)が、それでも本質的には大都市圏の話です。
その前提をふまえた上でいうなら、「指定校だとラクに難関大学に行けるか」と言われれば、その通りです。
正直に言えば、都市圏の偏差値50〜65くらいの全日制高校でそこそこの成績を取り続けること。これがGMARCH以上の私大に入る一番ラクな方法ではあります。
ただし全国で見れば、その選択ができる受験生はそれほど多くありません。
多くの高校生にとって、指定校推薦での難関大進学は最初から縁遠い制度なのです。

■通信制高校の指定校推薦はどうか
ここまでの話を踏まえると、通信制高校の指定校推薦がどういうものか、はっきり見えてきます。
最初の質問、つまり「通信制に転校したら指定校推薦はどうなるのか」にようやく正面から答えられます。
枠はある、ただし難関大はほぼない
通信制高校にも指定校推薦の枠はあります。これは事実で、比較サイトが紹介している数字も嘘ではありません。ただし、その枠の中身が問題です。
通信制高校に配られている指定校枠は、先ほど説明した余る側の枠、つまり難関ではない私立大学の枠が中心になります。比較サイトが数の多さを強調するとき、そこで数えられているのは、ほぼこの種類の枠です。
一方で、中堅進学校が奪い合うような難関私大の枠は、通信制高校にはほとんどありません。
理由は単純で、指定校枠は過去の合格・入学実績に応じて配られるからです。難関私大への進学実績が積み上がっている通信制高校は、ほとんどありません。これは通信制を責める話ではなく、制度の仕組み上どうしてもそうなる、という話です。
なお、この点には先回りして触れておきます。
大規模な広域通信制高校は在籍者が非常に多いため、指定校の数そのものは多く見えます。数だけ並べれば全日制を上回ることもあります。その中には多少ならば難関大の枠もあるでしょう。
ただ繰り返しになりますが、大事なのは数ではなく中身です。並んでいる大学のレベルが、都市圏の中堅進学校の持つ枠とは別物なのです。数が多いことと、難関私大に指定校で行けることはまったく違います。
仮に難関大の枠があったとしても、多くの希望者のうちのほんの一握りしか手に入らないという、およそ現実的ではない高倍率の獲得競争に勝たねばなりません。したがって、通信制高校にも指定校枠はあるが、難関大には行きづらいというのが現状です。
そもそも大学に入るだけなら指定校枠は要らない
ここで、よくある不安にひとつ答えておきます。通信制への転校を考えるとき、多くの方が「大学に行けなくなるのではないか」と心配します。ですがそれは杞憂です。
いまは私立大学の半数以上が定員割れの時代です(2025年度・私学事業団調査)。

※例えば令和7年度の資料を参照すれば、入学定員充足率が100%未満の私立大学は316校で、全体の53.2%であることがわかります。
大学に入ること自体はもう難しいことではありません。どの大学かどの学部かに強いこだわりがなければ、選ばなければ入れるというのが現実です。通信制であってもそれは変わりません。
そして、そういう進路を考えるならそもそも真っ先に指定校推薦を選ぶ必要すらありません。指定校はあくまで数ある入り口の一つです。一般選抜は選びづらいにしても、総合型選抜や学校推薦型の公募制推薦もあります。
「指定校枠がないと大学に行けない」というのはただの思い込みなのです。
そして、ある意味追い打ちをかけるような言い方になってしまいますが、通信制高校に多くの指定校枠があることはラッキーなようにみえて、さして役には立っていません。仮にそれが無かったとしても、いずれにしても大学には進学できるからです。
指定校という言葉自体、世間で過大評価されてしまっているようですが、冷静に考えてみるとこのような役割としか言えません。
くり返しになりますが、指定校推薦が本当にラッキーな制度といえるのは、結局あの難関私大の細い道、それも都市圏の中堅進学校に在籍していた人だけが持っていた道に限られます。逆に言えば、そこを狙うのでなければ、指定校の有無で進路がふさがれることはありません。
問題は、入れるかどうかではなくどこにどうやって入るかです。

■結論:通信制への転校で失うのは指定校ではない
最後に、ここまでの話をまとめます。
指定校推薦の枠は通信制高校にもあります。けれど、その大半は余る側の枠です。
中堅進学校で奪い合われる難関私大の細い道は、通信制にはほとんどありません。そしてその細い道は、もともと都市圏の中堅進学校に在籍していた人だけが持っていた、かなり限られたものでした。
だから、通信制への転校で失うものを正確に言うと、こうなります。
失うのは、指定校で大学に行く道ではありません。失うのは、難関私大に指定校で行く細い道です。しかもそれは、最初から多くの人の手元にあったわけではありません。
どこかの通信制を選べば美味しい思いができるということはありません。難関私大の指定校という細い道は、どの通信制を選んでもほぼ手に入らないからです。けれど、それを正確に知ってしまえば、やるべきことはむしろはっきりします。
大学進学の意欲を持ったまま全日制高校から通信制高校への転学を考えるとき、本当に検討すべきは指定校推薦枠があるかないかではありません。どの入試方式で大学に向かうかです。
学力にあまり自信がない場合、今の主流は総合型選抜を使うことです。
総合型選抜は、一般選抜のように学力で勝負する入試とは性質が違います。課されるのはせいぜい小論文くらいで、学習体制というほどの準備が必要なわけではありません。
定員割れしているような大学であれば、合格すること自体はそれほど難しくありません。ある程度の期間きちんと準備すれば、おそらく問題なく合格できるという程度のものです。
総合型選抜の実態については、Schorbitが分析した動画があります。あわせて見てみてください。
もちろん、しっかり学習を進めて、一般選抜で合格を目指すという手段ももちろんあります。
ただ、通信制からの一般選抜は、学校に頼りきりではなかなか進められないところが多く、苦労している受験生が多いのが実情です。ですが、難関大を目指すなら第一に考えるべきは依然として一般選抜です。
この点を分析した記事はこちらです。
さらに、理系から大学受験を目指す場合には、特に気をつけたいことをまとめた記事もあります。理系進学を考えている場合はご一読ください。
最後にお伝えしたいことがあります。
指定校推薦をあてにして大学進学を考えること自体は、悪いことではありません。ただ、いまは大学に進学すること自体が、そんなに難しい時代ではありません。
だから、どうか過剰に恐れないでください。通信制であっても進学の道はちゃんと開けています。
そして、あわせてお伝えしたいことがあります。
残念ながら、難関大学に進学したい場合はその限りではありません。難関大を狙うのであれば、しっかり勉強して、合格を勝ち取ってください。
応援しています。

■ 大学入試を戦う通信制高校生、募集中
ここまで読んでくださった方は、もうお気づきだと思います。通信制からの大学受験で本当に必要なのは、指定校の枠ではなく、自分で受験に向かっていける学習と進路の体制です。
Schorbitは、通信制高校生・不登校の高校生・高校中退者が大学入試を目指すための、オンラインのフリースクールです。決まった時間に全員で授業を受ける形ではありません。一人ひとりとの面談を中心に、何をどれくらい学習するかを一緒に決めながら、理解度を都度確認し、受験までの道のりに伴走します。
総合型選抜で現実的に合格をつかむのか、一般選抜でしっかり学力をつけて挑むのか。
どちらを選ぶにしても、通信制という自由な時間をちゃんと前に進む時間に変えていく。それをひとりにせず一緒に考えるのがSchorbitの役割です。
進路に迷っているなら、まずは気軽にのぞいてみてください。

不登校でも大学からはがんばりたい。
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