通信制高校から理系の大学受験は無理?
元数学教員が本気で答えます

要約:通信制高校から理系の大学受験のポイント

通信制高校から一般選抜で大学の理系学部を目指すのは、文系ルートと比べて明らかにハードルが高い
理系科目はどれも積み重ねが必要で、ゼロからの独学はかなり厳しい
参考書ルートで合格という話は元々の下地がある人のケースで、再現性は低い
最低限必要なのは日中の時間をしっかり勉強に使うこと
理系の学位は卒業後の進路で有利になりやすい
私大文系3科型への切り替えも合理的な選択肢(地域と家庭状況による)
地方国立文系志望なら共テ数学は半分取れなくても合格ラインに届くケースが多い

■ はじめに

通信制高校から大学の理系学部に、一般選抜で本気で進みたい。そう思っている受験生に向けて、元数学科教員の立場から真剣に答えてみたいと思います。

結論をいえば、もちろん、不可能ではありません。

ただし文系ルートと比べて現実的なハードルは明らかに高いです。世の中には「通信制からでも難関大に受かります」「参考書ルートを回せば早慶も東大も狙えます」といった威勢のいい話が出回っていますが、これをそのまま信じて走ると、多くの場合は途中で折れます。

この記事では、次の3つを順番に書きます。

  • なぜ通信制高校生にとって理系の一般選抜が難しいのか
  • それでも挑むなら何が必要なのか
  • どうしても無理そうなときの現実的な他の選択肢

夢を諦めさせる記事ではありません。現実を踏まえて自分に合った戦い方を選ぶための記事です。

■ 日本の大学って文系と理系どっちが多い?

大学受験の話に入る前に、日本の大学の構造を先に押さえておきたいです。ここを知っているのと知らないのとで、後の話の見え方が変わります。

ざっくり言うと、文系と理系は対等ではなく、日本の大学は文系のほうが多いです。特に私立大学は文系が中心で、理系学部を持たない大学も珍しくありません。国立大学になると文系と理系の学生数は半々に近くなりますが、全体として見れば、私立の文系定員が大きいことになります。

多い分だけ、学力で並べたときに文系のほうが低めに分布する傾向があります。つまり、理系の学部は少数精鋭に近く、全体として入学のハードルが高めです。ボーダーフリーに近い理系私立大学がまったく存在しないわけではありませんが、文系と比べるとその数はずっと少なくなります

通信制高校からの大学進学の話につなげると、ここが1つ目の残酷な事実になります。

通信制高校の生徒の多くが文系の大学に進むのは、単に文系希望者が多いからというよりも、現在の日本の大学入試では、文系のほうが学力が低くても入れるような選択肢が広いからです。理系の学部は「誰でも行ける」大学がそもそも少ない、というところから話が始まります。

■ 通信制高校から大学に進む人ってどこに入れる?

通信制高校から大学に進学する生徒は一定数います。ただし、ルートには大きな偏りがあります。

  • 大半は文系
  • ほとんどの受験方式は学校推薦型選抜か総合型選抜(ともに筆記試験が中心ではない方式)
  • 一般選抜で進む生徒も一定数いるが、そこでも大半が文系

ところが、理系での進学を希望する場合、「学校推薦型や総合型で行きたい大学や学部がない」というケースが少なくありません。そうなると一般選抜にまわることになるのですが、ご覧の通り少数派なのです。

したがって、この記事が想定している「通信制から一般選抜で大学の理系学部を受験する」というコースは、通信制高校からの大学受験生の中では圧倒的にマイノリティになります。

大手塾のサイトや大手通信制高校のパンフレットには、この層(理系進学志望)に向けた実務的な情報はほとんど載っていません。それもそのはずで、市場として小さすぎるからです。

この記事はそうした少数派の方々に向けて書かれています。

■ この記事が役に立つのはどんな人?

ご存じの通り、大学受験で一般選抜合格するには一定以上の学力が必要となります。勉強に自信がない人々は一般選抜を受けないので、元々勉強に自信がある人々との競争になります。

では、どれくらいの学力があれば一般選抜に進んでも問題ないのでしょうか。

ズバリ言います。一般選抜で大学の理系学部を受けるかどうかの分かれ目となり、一番悩むのは、次の学力帯にいる生徒です。

  • 公立中学ではそれなりに勉強ができた層。高校受験の偏差値で言えば60前後の高校に進む力があったか、実際に進んだけれど途中で不登校などで通信制に移ったケース
  • 中高一貫校から人間関係の疲弊などで通信制に移ってきた層。中1からまったく勉強していないというレベルでなければ、中高とサボっていても中受の蓄積により学力の土台があるケース

ここで1つ、多くの人が見落としがちな事実を書いておきます。

高校受験の偏差値で60ぐらいだった人というのは、実は大学受験の偏差値でいえば50未満、ようやく一般選抜で戦えるかどうかギリギリのラインです。高校受験で偏差値50前後だった層は、今の時代ほとんどが一般選抜で大学を受けません。指定校推薦などを使うのが主流になっています。

つまり、高校受験の段階で偏差値60ぐらいあった層が、頑張って一般選抜で大学に行けるかどうか、そしてその多くは文系で、その中から理系学部に進む人が2~3割いるというレベル感です。

通信制に移る前のあなたがそのあたりの位置にいたなら、ポテンシャルとしては十分に届く可能性があります。逆にいうと、そうでない場合はそれなりに厳しいと考えてください。

■ 例外(通信制高校から難関大学に受かる人)は参考にしてはいけない

どこかで次のような事例を耳にしたかもしれません。

「通信制高校から東大に入った人がいる」
「通信制から現役で理系の難関大に進学した」

たしかに、通信制高校から一般選抜で大学の理系学部、それも難関大学に合格する生徒は、実際に一定数います。東大や早慶に通信制から合格する事例もゼロではありません。

ただし、こうしたケースの多くは次のような特殊な背景を持っています。

  • 進学校で一定の学力を積み上げた後、途中で通信制に転学してきた
  • 中学受験で上位校に入り、中高一貫で基礎学力が完成していた

この層は、もうすでに受験で戦える基礎が出来上がっているので、通信制に移っても学力を維持・向上させられます。特別な支援なしでも独力で大学受験を突破することができます。なんなら、進学校での管理型教育に嫌気がさして、独力で大学受験に向かいたいというニーズから通信制に転学したケースも少なくないくらいです。

問題は、こういう合格体験談がそのまま「通信制からでも難関大に受かります」という宣伝文句として使われやすいことです。

元の基礎学力がまったく違う人たちの話なので、ゼロから学び直しに近い状態にある生徒が参考にしても、まったく再現できません。こうした事例を見かけたら、自分の状況と同じカテゴリなのかを先に確認してください。違うカテゴリの人の成功体験は、残念ながら参考になりません。

■ 基礎(小中学校の内容)が抜けていても理系で大丈夫?

その上で、残酷な事実をお伝えします。

率直にいえば、小中でほとんど勉強してこなかった、いわゆる「学び直し」が必要な状態から、一般選抜で大学の理系学部を目指すのは至難の業です。不可能とは言いませんが、1年や2年でどうにかなる話ではありません。

理由は次の章以降で詳しく書きますが、理系科目(特に数学・物理・化学)はどれも積み重ねが前提の教科だからです。中学数学の段階で抜けがあると、高校の授業を受けても頭に入ってきません。物理も化学も同様です。

文系科目も積み重ねであることは同様ですが、例えば日本史ならば「小学校社会→中学校社会→歴史総合→日本史探究」という積み重ねの中で内容が詳しくなっていくという話ですから、いきなり詳しい日本史探究から学ぶことが可能です。

ところが、数学で同じことはできません。1次関数を知らない人が三角関数を学んでも、そもそも記号の意味や数式の意味が理解できないため、まったく勉強になりません。

ただし、これは「諦めろ」という意味ではありません。時間をかければできます。問題は、一般的な大学受験生と同じスケジュール(例えば高2の夏休みから1年半で仕上げる)では間に合わない、という話です。

裏を返すと、文系3科目に絞るなら話はかなり違ってきます。

  • 英語だけは積み重ね教科なのでやや厳しい
  • 日本史や世界史は、何も知らない状態からでも1年でそれなりの水準まで持っていける
  • 国語は受験する大学によるが、短期間で戦える形を作れる

学び直しの状態から1年で大学受験までたどり着くのが絶対に不可能、とまでは言い切れません。

大変ですが、理系科目のような絶望的な時間差は生まれにくいのが文系3科目です。学び直しが必要な状態なら、最初から文系を検討するほうが合理的なケースも多いです。もし、あなたに理系学問への強いこだわりがないのなら、文系学部を目指すのが最適な選択かもしれません。

■ 大学の理系学部を受験するにはどの科目が必要?

大学の理系学部を一般選抜で受験する場合、必要になる科目は決まっています。

私立大学の場合:

  • 英語
  • 数学
  • 理科1科目(理工系なら物理か化学)

の3科目が基本です。早稲田や慶應の理工学部などを除けば、理科は1科目で足ります。理科は物理・化学・生物・地学に分かれるのですが、それは志望する学部学科によってある程度は制限されます(例えば工学部なら物理か化学など)。

国立大学の場合:

  • 共通テストは6教科すべて必要(情報は後回しで構いません)
  • 二次試験では英語・数学・理科2科目がスタンダード
  • 理工学部の場合、理科は物理と化学を組み合わせるケースが多い

どちらを目指すにしても、英語と数学はほぼ確実に必要で、そこにさらに理科を1〜2科目積み上げることになります。

ここで押さえておきたいのは、理工系学部に進むために重要なのは「英語と理系科目」であって、理系科目だけではないということです。数学や理科をどれだけ仕上げても、英語が崩壊していれば合格にはたどり着けません。

通信制高校から理工系学部を目指すなら、英語と理系科目を両方鍛える必要がある、というのがスタート地点になります。

■ 数学・物理・化学はなぜ積み重ねが必要?

すでに述べた通り、理系科目の難しさを語るとき、外せない話が「積み重ね」です。数学・物理・化学のいずれも、前の段階で学んだ内容を土台にして次が積み上がっていきます。

どこかに穴が開いていると、その上に新しい単元を積もうとしてもうまく乗りません。中学数学の指数法則や1次関数が怪しい状態で高校の指数・対数関数をやっても、式変形などで詰まります。このことはけっして軽視されるべきではありません。

具体的に説明しましょう。高校数学では有名な参考書でチャート式(特に青チャート)というものがあります。網羅性が高く、解説に動画がついているタイプもあり、定番として評価されています。ただ、この青チャートをもってしても、ゼロからの独学は厳しいと思っています。

理由は、参考書というのは基本的に「授業で教科書を使って学んだ上で、さらに問題演習を積むためのもの」として作られているからです。青チャートに載っている解法を見ても、なぜこの解法が思いつくのか、なぜこの手順で解くのか、そもそもこの記号って何を意味しているのかという部分はわかりません。そこは授業で教員が解説する前提になっています。

授業を受けずに解法だけ見せられる状態は、かなりしんどいです。疑問が放置されたまま進むので、覚えても定着しません。脳死状態で機械的に解き続けるのが苦にならない人なら別ですが、多くの生徒にとっては意味のわからないまま作業する時間がつらくなります。

かつての受験生に比べれば、現代の受験生は恵まれています。参考書の種類も増えて、動画教材も充実してきました。独学での大学受験は十分に可能です。ですが、それは「積み重ねなくてもよくなった」という話ではないのです。

■ 英語も積み重ねですが、得意な人がいる

ちょっと不思議な話なのですが、現場で不登校の生徒や通信制高校の生徒に関わっていると、英語だけは結構頑張って勉強している人が多いようです。例えば以下のような事例を目にします。

  • 不登校のまま英語の勉強だけを続けている生徒はかなりいる
  • 通信制高校でも英検対策をしている学校は多い(大学受験向けの授業はなく英検対策だけがある)
  • 学校外で英語学習が習慣化している生徒も珍しくない

英語だって本来は積み重ね科目です。中学英語の文法が抜けていれば、高校英語の長文読解は読めません。構造としては数学と大差ないはずです。それなのに、英語はなぜか不登校生に熱心に取り組まれていて、数学のほうは放置されがちになります。

原因は断定できませんが、英語は日常に溶け込ませやすいこと、学校の外に目標や成果が見えやすいことにあると思います。

社会全体で英検やTOEFLといった民間資格が広く普及しているため、学校に行かなくても受験できますし、合格するたびに級が上がっていく仕組みもあるので、進んだ感覚を得やすいです。一方で、高校生以外で数検を受けている生徒はほとんど見かけません。数学の力を外で測る文化が、英語ほど広がっていないわけです。

また、英語ならパソコンで英語の動画をみるだけでも、英語のゲームをするだけでも学習できるため、家で気軽に始められ、習慣化もしやすいです。家で数学の授業動画をみるのに比べればハードルが低く感じられるのでしょう。

この差がそのまま、通信制から一般選抜で大学の理系学部を目指すときの難しさにつながります。英語はなんとかなっていても、数学・物理・化学で大きな穴が残っているケースを、本当に多く見かけます。

■ 「参考書ルートで〇ヶ月で合格」は本当か?

ここは特に書いておきたい話です。

世の中の大学受験情報には、「この参考書を〇周回せば偏差値が〇上がる」「〇〇時間かければMARCHに届く」といったフレーズがたくさん出回っています。自習支援・管理型の塾が好んで使うようです。

こうした表現には、統計的に正しくないというか、分析として雑な部分があります。

たしかに、かけた時間に応じて学力が伸びるということ自体は事実です。ただし、その「かけた時間」の数え方に大きな抜けがあります。多くの合格体験記は「本腰を入れて受験勉強を始めてから」の時間しかカウントしていません。その前段階、つまり中学受験の準備や日常の授業で積み上げてきた数千時間の下地は、勉強時間として数えられていないのです。

例えば、中学受験を経て中高一貫校に通っていた生徒が、高2の夏から本腰を入れて東大や早慶に合格したとします。こうした合格体験談には、たいてい「本腰を入れてから」どれくらい勉強に費やしたかの時間の話題が出てきます。しかし実際には、小4から中3まで塾や学校で積み上げてきた数千時間の下地があるわけです。

通信制高校の生徒の中には、その下地を一度途切れさせている人が多くいます。小中で不登校だった期間があれば、下地自体が薄くなっています。その状態で「〇ヶ月で合格」という表現を真に受けると、自分がなぜ伸びないのかわからなくなります。

参考書ルートという言葉も同じ話です。このルートで参考書を順番にやれば合格できる、という宣伝を見かけます。

ただ、基礎知識がまったくないところから参考書だけで学力を積み上げて理系で合格したという事例は、実はほとんど表に出てきません。出てくるのは「もともと授業で習っていた内容を参考書で復習・強化して合格した」という例であり、これは性質がまったく違います。

したがって、参考書ルートで理系学部にゼロベースから合格できるという話を私は信じていません。復習の手段としては有効でも、ゼロから積み上げる手段としてはかなり厳しいというのが現場で見てきた実感です。

なお、通信制高校から難関大を目指すこと全般については本サイトの別記事「通信制高校から難関大は可能?」でも触れていますので、あわせてご覧ください。

■ 通信制から理系で合格する人って?

ここまで難しさの話ばかり続けましたが、通信制高校から一般選抜で大学の理系学部に合格している人も、少数ですが実際にいます。

では、その人たちは何をしていたのでしょうか。

共通項の1つとして、日中の時間をしっかり勉強に使っていたと思われます。

  • 朝から夕方までの、本来なら学校にいる時間帯
  • この時間に机に向かって、教科書・授業・問題演習を進めている
  • 最低でも週に5日、似たようなリズムで繰り返している

当たり前と言えば当たり前なのですが、この「当たり前」を通信制高校の生徒が維持するのはとても簡単ではありません。学校という外圧がなくなった状態で、自分だけの意思でこの時間を作り続けるのはかなりの難易度です。

よく伴走支援という言葉で解決策が語られます。方向性としては間違っていません。ただ、日中の時間マネジメントにどこまで介入できているかで大きく役割が変わってきます。日中の時間を決めるのが本当の大学受験の伴走であって、そうでなければただの相談相手になってしまいます。

そしてこの仕事は、多くの場合、アルバイトの大学生チューターでは難しいでしょう。理由は、学校に通っていない生徒について想像できないからです。自分自身は順調に学校に通うなかで、基礎学力の取得は学校に依存しつつ、残された時間を受験勉強に充てて大学に入ってきた人たちなので、「授業を受けていない状態」がどれくらい大変かを実感として知りません。

結局のところ、日中の長い時間を丁寧に見続けることでしか、この層のサポートは成立しません。Schorbitが日中の時間をマネジメントするモデルにこだわっているのも、ここに理由があります。

■ それでも理系を目指す価値とは?

ここまで難しさの話を続けてきましたが、理系を目指すこと自体には十分な価値があると思っています。

そもそも理系の学問を学びたいなら、理系学問の知識を活かした仕事につきたいなら、理系学部に進むしかありません。そういう常識をさしおいて、一番わかりやすいメリットは、卒業後の進路が比較的安定しやすい点です。

  • 理工学部の多くは就職実績が安定している
  • 専門性を生かした職に進みやすい
  • 学部学科によるばらつきはあるが、文系ほど就職で苦労しにくい傾向がある

高校生は、大学とは名前のランクで決まると思いがちです。「東大なら年収○万円の仕事に、早慶なら年収○万円の仕事に」といったように。しかし、現実はそうなっていません。

この点でいえば理系は過小評価されています。あまり有名でない大学でも、理系(特に工学部)は就職に強いことがよく知られています。

実例を1つ挙げます。東洋経済オンラインが2024年末に発表した「有名企業への就職に強い大学ランキングTOP200」では、1位は2年連続で豊田工業大学でした。東大・早慶といった有名大学を抑えての首位で、さらにトップ10のうち6校が工科系大学で占められています

豊田工業大学は、トヨタ自動車が社会貢献の一環として設立した私立大学で、入試の偏差値で見れば早慶や東京理科大学ほどではありません。それでも有名企業への就職率では全国トップに立っているわけです。

理由はシンプルで、製造業を中心に理系人材の不足が続いており、工科系大学の卒業生にとって有利な採用市場が形成されているからです。文系では大学名のヒエラルキーが就職実績にそのまま反映されやすいのに対し、理系(特に工学系)では「専門を修めたかどうか」が大学名以上に評価される傾向があります。

これは通信制高校から大学受験を考えている人にとって重要な事実です。日本最難関クラスの大学に届くかどうかではなく、理系の学位そのものが市場で評価される構造があるということです。

(参考:「有名企業への就職に強い大学」ランキングTOP200 理系人材の不足で工科系大学が上位を席巻(東洋経済オンライン)

この事実をふまえると、多少強引な言い方ですが、不登校だったという過去は理系学部で学位を取得した後にはほとんど問題にならなくなります。理系の学位そのものに「この人はちゃんと理系の専門を修めた」という社会的な評価がついてくるからです。学位を取ったという事実が、過去のしんどかった時期を上書きしてくれるような側面があります。

一方で、いわゆるボーダーフリーに近い大学のほとんどは文系です。こうした大学を卒業した場合、それ自体では努力を評価できないため、不登校歴がその後もマイナスに作用し続けることがあります。社会の見方はそこまで優しくないのです。

ただし注意してほしいのは、この話を聞いて「一発逆転のために理系」という発想で進むのはおすすめしません。理系の勉強は本当に大変で、興味がない分野を4年間(多くは修士までの6年間)続けるのは苦痛です。基本は学問への興味で選ぶべきだと思います。そのうえで、理系を本気で目指すことにはその後の人生を楽にする効果もある、という順番で受け取ってもらえればと思います。

最近は「予後がいい」という言い方をすることもあります。個人的にはあまり好きな表現ではありませんが、理工系の卒業生は、この意味での予後がよくなりがちです。

ただし、理工系においては修士課程まで進学するのが主流になっています。そのため、6年間大学に通い続けるような学費が必要になります。

■ 文転して3科型にする場合の注意点は?

話を文理選択に戻します。理系へのこだわりが強くなければ、文転し、3科目での受験に切り替えるのも十分、検討する価値があります。

文系3科型というのは、だいたい次の組み合わせです。

  • 英語
  • 国語(古文を含むことが多い)
  • 地歴公民1科目(日本史・世界史・政治経済など)または数学1科目

この形で受験できる私立大学はたくさんあります。有名私立大学の多くがこの方式を採用しているので、選択肢が一気に広がります。通信制から一般選抜での大学受験・進学についてこちらの記事も参考にしてみてください。

ただ、ここには大きな条件があります。

文系3科型で有名私立大学を狙う戦略は、住んでいる場所によって大きくおススメ度合いが変わります。首都圏か関西圏に住んでいて、その有名私立大学群が通学圏にある場合はよいのですが、そうでないならば、学費に加えて一人暮らしの生活費を賄える家庭である場合に限定されてしまいます。

  • 首都圏:早慶上智・MARCH・日東駒専などの私立大学群が通学圏
  • 関西圏:関関同立・産近甲龍などの私立大学群が通学圏
  • それ以外の地方:有名私立大学に進学するには一人暮らしが必要で、学費+生活費の負担が大きい

地方在住で、私立大学の学費に加えて一人暮らしまでする生活費まで出せない家庭は少なくありません。こうした家庭にとっては「文系3科型で有名私立に」という選択肢そのものが成立しません。合格できるかどうか以前の問題になります。

住んでいる地域と家庭の経済状況で、選択肢の現実的な範囲が変わってくるので注意が必要です。

■ 地方国立大文系で共通テストだけ数学が必要な場合は?

首都圏・関西圏以外の地域に住んでいて、一人暮らしは難しい。でも一般選抜でそこそこ入学難易度の高い大学に行きたい。こうなると、地元国立大学の文系学部が現実的な選択肢として浮上します

国立大学を受けるなら、文系であっても共通テストで数学が必要になります。

ここで「数学が苦手だから国立は無理」と諦める必要は実はありません。共通テストの数ⅠA・数ⅡBは、平均点が以前より低い傾向にあり、数学の200点満点のうち20〜40点しか取れなかったとしても、他科目でカバーできるからです(実は、地方国立大の共テ得点率はかつての入試より大きく下がっています)。

数学が苦手でも、他の科目(英語・国語・地歴公民・理科基礎など)で稼げれば、地方国立大学への道は十分に残ります。数学で満点近くを狙う勝負ではなく、数学は最低限だけ拾って他で勝つという戦略です。

もちろん、いい点数を取れるならそれに越したことはありません。ただ、共通テスト数学で半分も取れないから国立は諦める、という判断は早すぎます。

地方国立の文系学部であれば、数学は「ほぼ捨てる」前提でも合格までたどり着くケースは普通にあります。この判断も選択肢の1つとして持っておいてほしいと思います。

■ 結局、通信制から理系の大学受験って?

最後に、ここまでの話をまとめます。

  • 通信制高校から一般選抜で大学の理系学部を目指すのは、文系ルートと比べて明らかにハードルが高い
  • 理系科目はどれも積み重ねが必要で、ゼロからの独学はかなり厳しい
  • 参考書ルートで合格という話は元々の下地がある人のケースで、再現性は低い
  • 最低限必要なのは日中の時間をしっかり勉強に使うこと
  • 理系(特に工学部)の学位は卒業後の進路で有利になりやすい
  • 難しそうなら私大文系3科型への切り替えも合理的な選択肢(地域と家庭状況による)
  • 地方国立文系志望なら共テ数学は半分取れなくても合格ラインに届くケースが多い

こうした現実を踏まえた上で、自分がどう動くかを決めてほしい、というのがこの記事で伝えたかったことになります。


■ 大学入試をがんばる通信制高校生、募集中

ということで、今回は通信制高校から大学入試で理系学部に合格する方法について考えてきました。

途中でも触れましたが、この困難な道を完遂できるのは毎日の学習時間確保が不可欠です。具体的にいえば、1日に10時間は勉強に充てるべきです。

私たちSchorbitは、自宅から大学受験に向けて勉強する高校生(高認生含む)の支援を行っています。

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不登校でも大学からはがんばりたい。
大学入試に向けて日中、家で勉強したい。
これまでの学習内容に抜けはあるけど何とか勉強して取り戻したい。

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