通信制高校から総合型選抜は受かりやすい?
元教員が本当に簡単かを正直に解説

通信制高校から大学に進学しようとする方の多くは、総合型選抜という入試方式を利用します。

この記事では、その総合型選抜について、制度の仕組みと実態をできるだけ丁寧に説明してまいります(連載記事の一本目にあたります)。

さて、総合型選抜というと、世間ではいろいろなことが言われています。

「ボランティア活動や生徒会活動をしていると有利らしい」
「英検などの資格をもっていると有利らしい」
「小論文や面接に向けて特殊な対策が必要らしい」
といった具合です。

そうしたものがないと合格は難しいという発言もよく見かけます。

ところが、正直に申し上げますと、こうしたウェブサイト上で見かける説明の多くは実態に基づいていません

どこがずれているのでしょうか。

それは、総合型選抜という受験方式そのものを語るより一つ手前の段階、つまり「いまの大学入試がどういう状況にあるのか」という前提を語っていないところにあります。もっと端的にいえば、いまは定員割れをしている大学がかなり多いから、大学に入学することそのものはさして難しくないという大切な前提を踏まえていないのが問題なのです。

ここを知らないまま総合型選抜の話だけを読んでも、制度や実態を正しく理解することはできません。本記事では、まずはその前提から始めてまいります。

なお、本題に入る前に軽く自己紹介をさせてください。

私はもともと高校教員であったため、総合型選抜の実態をいわば内側から見てきました。最近は総合型選抜に特化した学習塾なども出てきていますが、私はそうしたところに勤めているわけでもありません。また、「通信制高校からも総合型選抜で大学に行けるよ」という宣伝をする立場でもありません。

総合型選抜の難しさを説いて対策を売る立場でもなく、総合型選抜の易しさを説いておススメする立場でもないからこそ、どちらにも肩入れせず、フラットな立場で書くことができます。あまり他所で語られることのない真実の姿をお伝えしてまいります。

■前提:いまは「大学に入りやすい」時代です

総合型選抜の話に入る前に、土台となる事実をひとつお伝えします。

いまは、私立大学の半数以上が定員割れをしている時代です。2025年度(令和7年度)の私学事業団の調査によると、入学定員充足率が100%に満たない私立大学は594校のうち316校、全体の53.2%にのぼります。

つまり、定員を埋めきれていない大学のほうが多数派なのです。ここ数十年、少子化が進んだ一方で大学や学部は増えていきましたから、自然な流れで変化してきました。

その結果、大学に入ること自体は、もうそれほど難しいことではなくなっています。「どの大学のどの学部でなければ嫌だ」という強いこだわりがなければ、選ばなければ入れる時代です。

これは通信制高校から進学する場合でも変わりません。

この大切な前提を頭の片隅に置いていただくと、これからお話しする総合型選抜の姿がずいぶん見えやすくなるはずです。

■そもそも総合型選抜とは何か

それでは、総合型選抜という制度について見ていきましょう。

総合型選抜は、かつて「AO入試」と呼ばれていた入試方式です。2021年度の入試から「総合型選抜」という名称に改められました。少し前の世代の方にとっては、AO入試と言ったほうがなじみがあるかもしれません。

AO入試は、もともとは1990年に慶應義塾大学が始めたものが最初です。1999年に、女優の広末涼子さんが早稲田大学にAO入試で進学したことも話題になりましたね。

早稲田や慶應のように、総合型の出発点は難関私立大学の入試形式でした。ところが、それがさまざまな大学に広がっていく過程で、どちらかといえば難関ではない大学においてハードルの低い入試へと姿を変えていったというのが実際のところです。

入試の性格としては、「自己推薦」と言うとわかりやすいかと思います。

同じ推薦でも、学校推薦型選抜は高校が生徒を推薦して送り出す形ですが、総合型選抜は受験生本人が自分の意思で出願します(高校が発行する調査書は必要です)。そこが大きな違いです。

そもそも、大学入試には大きく分けて三つの方式があります。学校推薦型選抜、総合型選抜、そして一般選抜です。

  • 学校推薦型選抜は、高校が生徒を推薦する形の入試で、よく耳にする「指定校推薦」はこの一種です。
  • 総合型選抜は、先ほど述べたとおり、受験生本人が出願する自己推薦型の入試です。
  • 一般選抜は、筆記試験で得点を取って合格を目指す、伝統的な大学受験です。

それぞれ、出願や試験の解禁日が決められています。総合型選抜は9月、学校推薦型選抜は11月、一般選抜は2月(共通テストは1月)です。

総合型と学校推薦型はどちらも年内に行われるため、まとめて「年内入試」と呼ばれることがあります。ちなみにこの「年内入試」という言葉は、もともと受験業界やメディアが広めた呼び名で、学校の現場ではそれほど定着していません。

この年内入試での大学入学者は、近年その割合が5割を超えたことで話題になりました(総合型と学校推薦型を合わせて、2024年度入試でおよそ52.9%、私立大学ではおよそ53.3%とされています)。

「もはやガリガリ勉強して筆記試験を突破するのは少数派なのだ」というわけです。しかし、これもまた一面的な理解であって、危険な誤解を含んでいます。それを詳述すると長くなるため、さしあたり本記事では総合型選抜の制度を優先して説明してまいります。

■どうやって合格する? 学力は必要?(選抜方法と評定について)

総合型選抜に合格するには、どのような入試を突破すればいいのでしょうか。どのような努力をするべきなのでしょうか。

総合型選抜の選抜方法は、大学によってさまざまです。一般的には、面接やプレゼンテーション、小論文、それに活動実績や研究計画といった書類の提出などで合否が判断されます。

「これまで自分はこういうことに取り組んできた」
「この大学に入ったらこういうことを学びたい」
「将来はこういう研究や活動をしていきたい」

こうしたビジョンを語り、大学側が掲げる学生募集の方針(アドミッションポリシー)と合っていると判断されれば合格となります。

こう聞くと、なんだか難しそうに感じられるかもしれません。

ですが、ご安心ください。こうした負担は、難易度の高くない大学ではかなり軽くされています。面接で多少言葉が詰まっても、極端に的外れなことを言わなければ合格するケースが多くみられます。

大学や学部・学科・専攻の名称、学問分野の名称、建学の精神やアドミッションポリシー等の最低限の情報さえ頭に入っていれば、大学側もそれほど「面接でふるいにかける」ような試験をしていないということです(もちろん、入試難易度によります)。

高校での成績、いわゆる評定平均についても触れておきます。総合型選抜では、学校推薦型選抜ほど評定平均を重視しない大学も多くあります

とはいえ、出願条件として一定の評定を求めたり、書類審査の中で評定を見たりする大学も少なくありません。評定の扱いは大学によってさまざまだとお考えください。

また、受験学力がなくても受かるのかという点も気になるところだと思います。

基本的には、そのとおりです。総合型選抜の多くは筆記試験を課していません。ありていにいえば、学力が低くてもバレません。

ただ、ここで一つ補足させてください。少し受験業界寄りの細かい話になりますが、近年は筆記試験を課す総合型選抜も増えてきています

もともと関西の私立大学には、筆記試験のある総合型選抜などの年内入試が以前から存在していました。そして2025年度入試では、関東の私立大学である東洋大学がこうした動きを見せ、大学受験業界が少しざわつきました。

これについて文部科学省は、おおむね次のような対応をしています。

筆記試験だけで合否を決めるのであれば、それは実質的に一般選抜なので認められない。けれども、面接などの中に学力試験を組み込む形であれば、総合型選抜や学校推薦型選抜として行ってもかまわないというものです。つい先日のことですが、文科省は令和9年度(2027年度)の入試において、総合型選抜で面接を必須とするという方針を出しました。

(入学者選抜実施要項:文部科学省) ※毎年変わるので注意

ですので、事実上、一般選抜に近い形の総合型選抜もごく一部には存在しますですが、これは本記事で取り扱う総合型選抜とは別物だと考えてもらってかまいません。

こういうものもあるのだ、という程度に知っておいていただければ十分です。

■同じ総合型選抜でも大学のランクによって別物

ここまで制度の基礎をお話ししてきましたが、最後に一つ、大事な視点をお伝えしておきます。

ひとくちに総合型選抜といっても、その中身は、大学の入試難易度(大学ランク)によってまるで別物だということです。

難関大学の総合型選抜は、突破するのに本当に入念な準備が必要で、けっしてラクではありません。

その一方で、定員割れに悩む大学が、定員確保のためにハードルを下げて行う総合型選抜は、まったく性質が異なります。大きなミスがなければほとんどの人が合格します。

冒頭でお話しした「定員割れの大学が多い」という前提がここで効いてきます。つまり、総合型選抜での合格が可能かどうかという議論も、どの偏差値帯の大学を受験するかによってまったく変わってしまうのです。

本記事の核心になりますが、世間で見かける総合型選抜の説明の多くがずれてしまうのは、この入試難易度(大学ランク)の違いに触れないまま、難関大学の話だけを基準にして語ってしまうからなのです。

このような総合型選抜の実態については次回で詳しくお伝えします。

■おわりに

この記事では、総合型選抜という制度の仕組みを整理して紹介してきました。

通信制高校や不登校から進学を考えている方にとって、総合型選抜は身近で現実的な選択肢です。世間で言われているほど特別な準備が必要なわけではありませんので、どうか過度に身構えないでください

もちろん、難関大学に進学したい場合はその限りではありません。総合型選抜に限らず、大学の入学難易度は二極化してしまっているのが昨今の特徴です。難関大学に総合型選抜で入るならばそれ相応の準備が必要なことも事実です。

次回は、なぜ総合型選抜がこれほど広まったのか、その実態を詳しく見ていきます。

通信制高校からの大学進学率は近年上昇しています。ぜひ諦めることなく、入学への切符を手にするために日々の努力を続けてください。応援しています。


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総合型選抜で現実的に合格をつかむのか、一般選抜でしっかり学力をつけて挑むのか。

どちらを選ぶにしても、通信制という自由な時間をちゃんと前に進む時間に変えていく。それをひとりにせず一緒に考えるのがSchorbitの役割です。

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