不登校からの高校入試ガイド
【茨城 編】
公立・私立の選択肢と制度を完全解説

要約:茨城県の不登校からの高校入試ポイント

【公立】静茨城県の公立入試には、共通選抜のB群選抜に「学力検査重視選抜」という枠が用意されており、県内の多くの全日制公立が学力検査重視に大きく振った比率を採用している。当日のテストで点を取れる学力さえあれば、現実的に合格できる公立は数多く存在する
【公立】公立高校では中堅校から下位校にかけて定員割れが進んでおり、令和8年度入試では全日制公立の約6割にあたる59校で第2次募集が実施されている。偏差値50前後で倍率1.0前後、偏差値45未満では定員割れの学校も多く、合格へのハードルは低い
【公立】調査書評定の対象は中1から中3までの3年間で、中1・中2に長期欠席があった場合、その学年の評定はそのまま入試の内申点に組み込まれる
【定時制】不登校経験者向けに設計された「フレックススクール」が県内に4校あり、多部制・単位制で3年卒業も可能
【私立】茨城県の私立高校は推薦入試で欠席日数の上限を出願基準として設けている学校が多く、不登校生に厳しい。一般入試なら出願自体に欠席日数の制限を設けていない学校もあり、当日点で勝負できる
~ 目次 ~
  1. ■ 茨城県の公立高校入試の仕組みはどうなっている?
  2. ■ 茨城県の公立入試で使う「内申点」はどう決まる?
  3. ■ 内申点が低くても、当日のテストで逆転できる?
  4. ■ 不登校の「欠席日数」や「自己申告書」はどう扱われる?
  5. ■ 結局、不登校でも茨城県の公立高校に受かるのか?
  6. ■ 全日制以外に不登校から通いやすい公立高校はある?
  7. ■ 不登校から茨城県の私立高校に合格するには?
  8. ■ まとめ:不登校から茨城県の高校受験を成功させるには?
  9. ■ 不登校からの高校入試(茨城編)よくある質問
  10. ■ 高校入試をがんばる不登校生、募集中

(※以下は2026年5月時点で調査した情報を基にしています)

中学校をずっと休んでいる。通知表に「1」が並んでいる。高校受験の話題が出るたびに気持ちが沈む。

そのような状況で茨城県の高校入試について調べている方に、最初にお伝えしておきたいことがあります。

茨城県は、不登校の生徒にとって「特別に厳しい県」ではありません。私立高校入試についてはそうでもありませんが、公立高校入試については、内申点が低くても当日のテストで勝負できる枠が、制度として確保されているからです。

公立入試の「B群選抜」と呼ばれる2段階目の判定の中に、「学力検査の結果を重視した選抜」と「調査書の記録を重視した選抜」の2つの選抜方式が用意されてしており、その合格人数の比率を各高校が選ぶ仕組みになっています。そして、実際に多くの高校が「学力検査重視」に大きく振った比率を採用しているため、当日のテストで点を取れる学力さえあれば、現実的に進める公立高校は数多く存在します

茨城県教育委員会も公式Q&Aで「不登校等及び障害があることにより、不利に扱われることはありません」と明言しており、欠席日数の多さだけで機械的に弾かれる構造ではない、と公式に書かれています。

(参照:[茨城県立高等学校入学者選抜に係るQ&A] Q24/茨城県教育委員会)

ただし、過度な期待を生まないよう、いくつか注意を促しておきたいことがあります。

茨城県には、不登校の生徒向けの独自の入試制度、例えば内申点を一切使わずに当日点だけで合否を決める選抜方式はありません。似たようなものとして、不登校生が利用できる「自己申告書」(様式第14号)という書類は用意されていますが、これは国の通知に沿って全国の公立高校入試で運用されているもので、茨城県独自の救済策とはいえません。

また、「不利に扱われない」と書かれた合否判定の運用が、実際にどう配慮されているかは公表されておらず、外からは見えないブラックボックスの状態です。

本記事では、茨城県教育委員会が公開している令和8年度入試の一次資料(実施要項、実施細則、入試リーフレット、入学者選抜Q&A)と、県内の学習塾や私立高校の公表情報を基に、不登校の中学生が茨城県の高校受験で取りうる選択肢を公立、公立の定時制・通信制、私立の順でていねいに紹介していきます。


■ 茨城県の公立高校入試の仕組みはどうなっている?

茨城県の公立高校入試は、毎年2月下旬に行われる一発勝負で合否が決まります。

令和8年度入試の場合、2月26日に国語・社会・数学・理科・英語の5教科の学力検査(各100点×5=500点満点)が実施され、3月11日に合格発表という日程です。原則として「1校1課程1学科」までしか志願できず、複数の公立高校を併願することはできません。

2月の入試で進学先が決まらなかった場合に備えて、3月中旬には第2次募集も用意されています。令和8年度の場合、3月16日(月)に学力検査、3月18日(水)に合格発表という日程です。

第2次募集は、一度目の入試で募集定員に届かなかった学科のみで実施される仕組みです。後述しますが、現在は定員割れの高校も増えているため、2次募集での公立高校入試もかなり豊富な高校から選べる状態です。

A群とB群の二段階判定

公立高校の選抜方式について説明します。すべての公立高校で実施される共通選抜では、すでに軽く触れた通り、A群とB群の2段階に分けて合格者を絞っていく仕組みになっています。

  • A群(原則合格):学力検査の得点合計の順位が共通選抜の定員の80%以内に入り、かつ、調査書の評定合計の順位も同じ定員の数以内に入っている受検者
  • B群:A群以外の受検者。残りの合格者は、B群の中で「学力検査の結果を重視した選抜」と「調査書の記録を重視した選抜」の2系統を並行して行い、それぞれの合格者数の比率を各高校が事前に決定する仕組み

A群に入る(=第1段階で合格する)ためには、学力検査と調査書(内申点)の両方で一定以上の順位を確保する必要があります。そのため、内申点が低い不登校の中学生にとって、A群入りを狙うのは現実的ではなく、勝負は後述するB群での選抜になります。

特に重要になってくるのは、B群選抜の二つの方法のうちの「学力検査の結果を重視した選抜」になります。

(令和8年度入学者選抜リーフレット/茨城県教育委員会 一部抜粋)

■ 茨城県の公立入試で使う「内申点」はどう決まる?

いずれの選抜でも、茨城県の公立入試では、内申点(調査書の評定合計)が合否判定の重要な要素になります。

定員の大半を占めるA群入り(=第1段階での合格)を果たすには、学力検査の得点と並んで内申点の順位も問われますし、B群選抜の中でも「調査書の記録を重視した選抜」の枠では、内申点が直接の判断材料になります。

そして、この内申点の計算方法が、不登校で長期欠席のある生徒にとって、茨城県の公立入試で最も大きな構造的ハンデを生んでいます。

中1から中3まで3年間の評定がすべて加算される

茨城県教育委員会のリーフレットには共通選抜で使う調査書評定の対象期間が「3年間」と明記されています。これは、中学校1年生から3年生まで、すべての学年の評定が点数化されるという意味です。

各学年の点数の内訳までは公式資料には書かれていませんが、個別指導Axisなどの学習塾系サイトの解説によれば、各学年 9教科 × 5段階評定 = 45点満点で、3年間の合計135点満点で計算されるのが一般的な理解とされています。

中1で45点、中2で45点、中3で45点、合計135点という具合です。これは全国的に見てもさほど珍しいものではありません。

(参考:個別指導Axis|茨城県 高校入試情報

中1・中2の不登校は後から取り戻せない

ここが、不登校で長期欠席歴のある生徒にとって厳しいポイントです。

中1や中2の段階で学校に通えず、評定の大部分が「1」や斜線(評価不能)になっていた場合、その学年の評定はそのまま135点満点の中に組み込まれます。中3になって体調や生活が立て直り、登校できるようになって良い成績を取れるようになったとしても、中1・中2のぶんの評定は固定されたまま動きません。

たとえば、中1・中2が完全な不登校で評定がオール1、中3で頑張って評定がオール3に持ち直したとしても、内申点は 9 + 9 + 27 = 45点にとどまります。135点満点中45点という水準は、共通選抜のA群入りに求められる「調査書の評定合計の順位が共通選抜の定員以内」の基準を、ほとんどすべての入試倍率が発生した全日制公立で下回る数字です。

つまり、中1や中2の段階で長期欠席があった場合、茨城県の公立入試では事実上A群入りの可能性が消えると考えてよく、勝負はB群選抜だけになります。

これは、「中3の1年分のみの評定」を参照する県などと比べると、思い切り不利な制度設計と言わざるを得ません。中1・中2に長期欠席があった生徒にとって、過去の評定を入試で挽回する手段は、制度上は基本的に用意されていないということになります。

それでも、後述するB群選抜の比率設定によって、当日点で勝負できる枠は確かに残されています。次の章で詳しく見ていきます。

■ 内申点が低くても、当日のテストで逆転できる?

不登校で内申点に大きなハンデのある生徒は、A群入りはほぼ不可能で勝負はB群選抜の中で決まることになります。そのB群選抜の中身を詳しく見ていきます。

結論からお伝えすると、B群選抜には、学力検査の得点を重く見て合格者を決める枠が制度として用意されています。そしてうれしいことに、この枠を大きく取っている高校が県内の公立高校のなかでかなり多くあります。

B群選抜の「学力検査重視」と「調査書重視」の二つの方法

B群選抜で合格者を決める方法は、「学力検査の結果を重視した選抜」と「調査書の記録を重視した選抜」の二つに分されています。それぞれの方法で合格させる人数の比率を、各高校が以下の7段階の中から選びます。

20:80、30:70、40:60、50:50、60:40、70:30、80:20

たとえば80:20の高校なら、B群合格者の8割を「学力検査重視の選抜」で決め、残り2割を「調査書重視の選抜」で決めるという意味です。

ここで一つ注意したいのは、この「8:2」が示しているのは合格者の人数の比率であって、学力検査と内申点を8:2の重みで足し合わせる加重平均の話ではないということです。学力検査の点数を重く見て合否を決める枠と、調査書の評定を重く見て合否を決める枠が、それぞれ別個に用意されているわけです。

茨城県教育委員会の実施細則の【例】には、共通選抜定員が100人、A群が70人、B群が30人で、比率が60:40だった場合の合格者の決め方として、「学力検査重視で18人、調査書重視で12人を合格とする」と明示されています。

(参照:令和8年度茨城県立高等学校入学者選抜実施細則 P.8/茨城県教育委員会)
※実施要項などもすべてこちらからPDFでダウンロードできます。

多くの公立高校が「学力検査重視」の比率を採用している

7段階のうち、県内の各高校がどの比率を採用しているかは実施細則の「別表1 高等学校別入学者選抜実施方法」ですぐに確認できます。

令和8年度の状況を集計してみると、おおむね次のような分布が見えてきます。

  • 80:20(学力検査重視の最大):進学校から中堅校・専門学科まで広く採用しており、全日制公立の過半数を占める
  • 70:30:定員割れの郡部校などで採用されているケースが多い
  • 50:50(中立):農業・水産系の専門学科を中心に分布
  • 30:70(調査書重視):石下紫峰、茨城東、竜ヶ崎南、筑波の地域キャリアビジネスコースなど、数えるほどしかない
  • 20:80(調査書重視の最大):玉造工業の工業に関する学科のみ

つまり、茨城県の公立全体が学力検査の点数を重く見る設計になっています。これは不登校生のために用意された仕組みではないものの、結果としては、当日点で勝負したい受験生にとって悪くない環境が整っていることになります。

「学力検査重視の選抜」で内申点はどこまで影響するか

もう一つ注意したい点があります。

「学力検査重視の選抜」と「調査書重視の選抜」のうち、後者の中身については実施細則に「評定以外の記載項目を1項目以上利用する」と明記されていますが、前者の中身については詳細が定められておらず、各高校の裁量に委ねられているものと思われます。

つまり、「学力検査重視の選抜」が、純粋に学力検査の得点順だけで合否を決めるのか、それとも調査書の評定や記載項目を一定程度参考にするのかは何とも言えませんし、高校によって違う可能性もあります。

学力検査重視の「重視」が何を意味するのか、どこまで「重視」してくれるのか。一次資料からは「内申点が完全に無視される!」とまで断言することはできないのです。

それでも「学力検査の結果を重視する」と公的に明記された選抜枠が存在することは確かです。

内申点が低い不登校の中学生でも、当日の学力検査で点を取れる学力さえあれば、合格圏に入る現実的なルートが用意されていると考えてよさそうです。

■ 不登校の「欠席日数」や「自己申告書」はどう扱われる?

不登校の子どもを支えるご家庭がよく抱くのは、「調査書に書かれる欠席日数の多さで、そもそも公立を受けられないのではないか」という不安です。

受けられないということはけっしてありませんが、ではどんな不利があるのか。茨城県の場合、「不利がない」という教育委員会の公式見解はあるものの、実情は非常にわかりにくくなっています。

教育委員会の公式見解とその運用の見えにくさ

茨城県教育委員会は、ウェブサイトで公開している入学者選抜向けのQ&Aの中で、不登校で長期欠席のある受検者の扱いについて、次のようにはっきり答えています。

「不登校等及び障害があることにより、不利に扱われることはありません」
(参照:茨城県立高等学校入学者選抜に係るQ&A Q24/茨城県教育委員会)

つまり、欠席日数の多さだけで機械的に不合格になることはない、というのが県の公式な見解です。

ただ、この「不利に扱われない」が、合否判定の中で具体的にどう運用されているのかについては、外から確認することはできません。各高校が合否判定をする際に、自己申告書(次節で説明)や調査書の備考欄をどう読み取り、どこまで斟酌しているかは公表されていないからです。

すなわち、不利に扱わないと言ってもらえた事実はある、ただし実際の運用はブラックボックスの中というのが現状です。好材料のひとつにはなりますが、これがあるから大丈夫と信じきってしまうのも危ういといえるでしょう。

自己申告書(様式第14号)の役割と限界

不登校等で長期欠席のある受検者については、出願時に「自己申告書」(様式第14号)を提出することができます。本人が事情を出願先の校長に直接伝えるための書類で、欠席に至った経緯、その間に取り組んできたこと、高校でどう学びたいかといった内容を記載する形になっています。

一つお伝えしておきたいのは、この自己申告書という制度自体は、茨城県だけの特別な取り組みではないということです。

文部科学省が「不登校児童生徒への支援の在り方について」という通知の中で、不登校経験のある生徒が高校入学者選抜で不利に扱われないよう、自己申告書のような書類の活用を都道府県教育委員会に求めています。

(「不登校児童生徒への支援の在り方について(通知)」令和元年10月25日:文部科学省)

この書類は、それを受けて多くの都道府県の公立高校入試で運用されている制度です。悪くいえば、トップダウンでやれといわれたからやっているだけともいえます。

さらにこの書類自体は、合否判定でどれだけの重みを持つかが公表されていないため、ここでも過度な期待は禁物です。「これを書けば内申点の不足が帳消しになる」という類のものではないと思われます。

とはいえ提出しておく意義はあります。本人の状況や前向きな意欲を本人の言葉で伝えておけば、プラスの評価をされるのだと推測されます。

教育支援センターやフリースクールへの通所が「出席扱い」になる場合

もう一点、これも茨城県独自の話ではありませんが、調査書の欠席日数欄そのものに関わる話を整理しておきます。

不登校の生徒が教育支援センター(適応指導教室)や一部のフリースクールなどに通って学んでいる場合、在籍中学校の校長判断で、その通所日数を「出席扱い」にできることがあります。これも全国共通の制度で、文部科学省が指導要録上の取扱いについて通知を出しており、茨城県でも各中学校の判断で運用されています。

出席扱いを得られていれば、調査書の欠席日数欄に記載される数字はそのぶん減ることになり、合否判定の場でも見え方が変わってきます。ご家庭の状況によっては、現在お子さんが利用している学習支援の場が出席扱いの対象になり得るかどうか、在籍中学校に確認しておくのが第一歩になりそうです。

ただし、すべての通所先が認められるわけではありません。校長判断であるため、在籍中学校や利用している施設の活動内容によって扱いが変わるということになります。

公立高校入試については、不登校は「不利に扱われない」と明言されているため、欠席日数が公立高校入試に悪影響を及ぼすことはないのかもしれませんが、後述するように、私立高校は明確に影響するものと思われます。

■ 結局、不登校でも茨城県の公立高校に受かるのか?

ここまで茨城県の公立入試の制度、内申点の扱い、B群選抜、自己申告書と欠席日数の扱いについて解説してきました。これらを踏まえたうえで、本来の問い、つまり「不登校で内申点に大きなハンデのある生徒は茨城県の公立高校にどれくらい入れるのか」を、データから分析していきます。

偏差値帯ごとに見える、学力検査重視(80:20)校の倍率パターン

B群選抜で「学力検査重視の選抜」を多く設定している高校、特に80:20という最大の比率に設定している高校を取り上げてみます。同じ80:20採用校でも、その高校の偏差値帯と倍率の組み合わせ次第で、受かりやすさは大きく変わります。

令和8年度の志願状況と、みんなの高校情報に記載された偏差値ランキング(2026年度)を組み合わせると、80:20を採る全日制普通科の状況は、おおむね以下のように分かれます。

偏差値帯主な学校(80:20採用、普通科)全体倍率の傾向
60以上水戸第一(73)、土浦第一(72)、竜ヶ崎第一(68)、竹園(68)、緑岡(67)、土浦第二(66)、日立第一(65)、水戸第二(65)、牛久栄進(63)、下妻第一(62)、水海道第一(62)1.0倍超〜1.5倍程度。当日点で高得点が取れる学力がなければ突破は厳しい
55前後日立北(58)、太田第一(57)、土浦第三普通(57)、水戸第三普通(56)0.74〜1.38と幅広い。日立北・太田第一は定員割れ、水戸第三など伝統校は人気で高倍率
50前後佐和(49)、那珂、東海、麻生、牛久、伊奈、境、古河第三、下館第二、下妻第二1.0前後に集中(0.89〜1.08)。定員ぎりぎりか若干の定員割れ
45未満多賀、日立第二、太田西山、古河第一、結城第一、筑波(進学アドバンスト)大幅定員割れが目立つ(0.20〜0.87)
(参照:別表1 高等学校別入学者選抜実施方法/茨城県教育委員会、令和8年度志願状況/茨城県教育委員会、偏差値ランキング/みんなの高校情報)

偏差値60以上のゾーンは、80:20を採っていても倍率がしっかり付いており、内申点に頼れない不登校生が突破するには、相当な当日点が必要です。いわゆる進学校の壁というものがこの辺りにあるといえるでしょう。

これに対して、偏差値55前後から下のゾーンは様相が変わってきます。

偏差値50前後の80:20校は、令和8年度の倍率がほとんど1.0前後に集中しています。佐和1.04、那珂1.04、伊奈1.00、古河第三1.00、下妻第二1.07といった具合です。倍率1.04ということは、定員に対して志願者が4%多いだけということで、当日点で並みの得点が取れれば、その4%分を上回って合格圏に入る目算は十分立つレベルです。

偏差値45未満になるとさらに倍率低下に拍車がかかります。多賀(0.87)、日立第二(0.38)、太田西山(0.29)、古河第一(0.66)、結城第一(0.53)など、大幅な定員割れが目立ちます。志願者数自体が定員に届いていない状態なので、大きな不利益がない限り、合格圏内に入る可能性は高いと言えます。

制度としての救済以外にも人口減による「入りやすさ」がある

したがって、茨城県の公立高校入試で不登校生に残されている「逆転の余地」は、特別な救済制度として用意されているものばかりではありません。実態としては、次の二つが組み合わさることで、結果的に生まれているというのが正確なところです。

  • 多くの高校が学力検査重視(70:30以上)の比率を採用している
  • 中堅校から下位校にかけて、人口減少などによる定員割れが進んでいる

事実、令和8年度入試の結果を見ると、全日制公立の約6割にあたる59校で第2次募集が実施されています。一度目の出願で定員に届かなかった高校がそれだけ多いということで、なかには日立第二(普通)99人、大洗(普通)65人のように、第2次募集だけで相当の枠が残っているケースもあります。

つまり、制度設計の意図というよりは、人口減少という社会的な事情も加わって、結果として不登校生でも進める高校が幅広く生まれているということです。

結局のところ、茨城県の公立高校を狙う不登校の中学生にとって、本当のポイントは当日のテストで点を取れる学力をどこまで身につけられるか、その一点に集約されます。逆に、ここに力を集中して取り組めば、現実的に合格できる高校が多く存在するのが茨城県の本当の姿です。

■ 全日制以外に不登校から通いやすい公立高校はある?

全日制公立への進学が現実的でない場合や、自分のペースで学び直したい場合、茨城県にも定時制と通信制という選択肢があります。近年話題の私立通信制と比べて学費を大きく抑えられるという利点があるため、進路の選択肢として把握しておく価値はあります。

不登校経験者向けに設計された「フレックススクール」4校

茨城県には、フレックススクールと呼ばれる定時制の高校が4校あります。県立鹿島灘高校、県立結城第二高校、県立茎崎高校、県立高萩高校の4校で、いずれも県立です。

フレックススクールは不登校経験者や中途退学者など、さまざまな経歴をもつ生徒の受け入れを学校設立のねらいに掲げている定時制学校です。「不登校経験者を主な対象として明示している公立高校」という意味では、茨城県内で唯一の枠と言ってよいでしょう。

多部制と単位制を組み合わせた仕組みで、午前部・午後部・夜間部などから自分の体調や生活リズムに合わせた時間帯を選び、必履修科目を含む単位を順次取得していく形になっています。1日の授業時間(時限数)は全日制より少なめの設計ですが、複数の時間帯を組み合わせて履修することで、3年での卒業も可能です。

定員に対する志願者数は、いずれの学校もおおむね定員割れの傾向が続いており、当日の学力検査や面接で大きな問題がなければ入学できる状況です。

なお、フレックススクールという呼称は、茨城県だけでなく他のいくつかの県でも使われています。

県立水戸南高校(単位制定時制と公立広域通信制)

水戸南高校は、茨城県内で唯一、独立した定時制と通信制の課程を置く県立高校です。通信制課程はなんと広域で、公立の広域通信制は全国でもこの学校のみとなっています。

特徴をいくつか整理します。

  • 定時制も通信制もともに単位制
  • 通信制の入試は書類審査と面接のみで学力検査は実施されない
  • 定時制は単位制昼夜間で、自分の通学頻度や時間帯をある程度選べる
  • 通信制スクーリングは月2回程度(日曜コースまたは火曜コース)。水戸市に通学することが厳しい場合、「下妻コース」も設けられている

通信制は、入学後は自学自習で単位を取得していく必要があり、サポートが手厚い私立通信制と比べて卒業までの自己管理という負担が大きくなりやすい点には注意が必要です。

しかし、学費を大きく抑えられる公立通信制という選択肢は、私立通信制と比較検討するうえでの一つの基準として、必ず候補に入れておく価値があります。

■ 不登校から茨城県の私立高校に合格するには?

つづいて私立高校をみていきましょう。

茨城県の私立高校入試は、推薦入試(単願)が1月上旬、一般入試(単願・併願)が1月中旬以降という日程で行われます。つまり、公立高校入試の1ヵ月以上前に私立入試は終わる形になります。

最初にお断りしておきたいのは、私立高校の入試の仕組みは、学校ごとに大きく異なるため一般化はできないということです。出願基準、優遇制度、入試科目、いずれも各校が独自に設定していて、年度ごとに変更されることも珍しくありません。

本章は、あくまで茨城県内の大手私立高校をいくつか抜粋して募集要項を分析したうえでの、おおまかな傾向を紹介するものになります。実際の出願にあたっては、必ずその学校の最新の募集要項と、学校説明会の個別相談で確認するようにしてください。

そのうえで結論を先にお伝えすると、不登校の生徒にとって、茨城県の私立は公立よりも厳しいルートになります。これは茨城県に特有の話ではなく、首都圏の私立全日制高校全般に共通して見られる傾向です。

公立は学力検査の点数で勝負できる枠が制度として確保されていますが、私立はそうではありません。学校ごとに独自の出願基準が設けられていて、そのなかに欠席日数の壁が組み込まれている場合が多いためです。

推薦入試は「欠席日数の壁」で出願も厳しい

茨城県内の大手私立の推薦入試の募集要項を確認するかぎり、各校が出願基準として、欠席日数(および遅刻・早退)の上限を明示している場合がほとんどです。

具体的な数字は学校によって違いますが、「中学校3年間を通じて欠席が20日前後まで」「最終学年で集中的な欠席がないこと」あたりが、多くの私立で求められる水準のようです。さらに、欠席だけでなく遅刻・早退の合計も含めて20回以下というところもあります。

不登校の状態にある生徒の場合、この基準を満たすこと自体が難しく、推薦入試というルートは事実上閉ざされているケースが多いと考えられます。

ただし、要項の文末に「正当な理由がある場合はこの限りではない」「日数を超えている場合は問い合わせを」といった例外規定を明示している学校もあります。その期間、例えばフリースクールで学んでいたなどの事情がある場合は出願可能かもしれません。

このように、不登校の生徒にとっても扉が完全には閉ざされていないこともあるので、気になる学校があれば、その学校が開催している学校説明会・入試説明会の個別相談の場で相談してみるのがよいでしょう。

一般入試は、出願は開かれているものの「優遇」は厳しい

一般入試の場合、出願資格自体には欠席日数の制限を設けていない学校が多くなります。出願資格を「卒業見込みの者 または 既卒者」とだけ書いている学校もあり、その場合、不登校で長期欠席があった生徒でも出願は問題なく可能です。

つまり一般入試は、当日のテストで合格点を取れるかどうか、という学力勝負に近いといえます。

ただし、一般入試の中に「優遇」と呼ばれる仕組みが用意されている学校がある点には注意が必要です。これは、内申点や欠席日数などの基準を満たしている受験生について、合否判定で加点・優遇する仕組みで、いわば「ほぼ合格保証」に近いラインを設定するものです。

この優遇基準には欠席日数の縛りが設けられていることがほとんどです。具体的な数字は学校によりますが、たとえば「3年次の欠席日数が一桁日以内」「最終学年の評定合計が一定以上」といった条件を組み合わせている学校が見られます。

不登校で長期欠席のある生徒の場合、出願自体はできるが優遇は得られない、というのが基本になります。

優遇を得ずに一般入試で受験する場合、合否は当日のテストの点数次第になりますが、当然優遇ありの受験生のほうが有利な状況からスタートするため、不登校の受験生はより高い当日点を求められることになります。

また一般入試とはいえ、単純に当日点のみで合否が分かれるとも言い切れません。

欠席日数が多くて内申点が低い不登校の中学生は、合格者と同じ当日点でも不合格になることも考えられるため、より多くの得点をとることを目指さねばなりません。ではどのくらい多く取ればよいのか。この辺りの実態については、学校ごとに異なり、しかも明らかにされていません。

なお、評定や欠席の基準を満たさない場合でも、秋の入試説明会の個別面談で相談を受け付ける旨を要項に明記している学校もあります。

学校によっては、個別の事情を踏まえて優遇資格を獲得できる窓口を用意している場合があるので、気になる学校の説明会には早めに足を運んで、実際の事情を伝えて相談してみるのがよさそうです。

公立よりも私立のほうが、不登校生にとって厳しい

ここまでで見たように、私立の入試の仕組みは、公立と比べて不登校生にとって壁が高くなりやすい設計になっています。

これは茨城県固有の話ではなく、首都圏の私立全日制高校全般に共通して見られる傾向です。Schorbitでは、公立と私立の高校入試制度を不登校生の視点で比較した解説動画をYouTubeに公開しています。

茨城県内の話ではありませんが、この記事で出てきた公立と私立の比較についてていねいに解説されていますので、よろしければご視聴ください。

YouTube player

まとめると、茨城県の私立高校は、首都圏でよく見られる「推薦は欠席日数で足切り、一般は当日点である程度の勝負できるが優遇枠は厳しい」というパターンとおおむね同じです。

私立高校を志望する場合は、各校の方針に幅があるため、気になる学校があれば、夏から秋にかけて開催される学校説明会・入試説明会の個別相談の機会を活用して、実際の事情を伝えて相談してみることを強くお勧めします。

■ まとめ:不登校から茨城県の高校受験を成功させるには?

ここまで茨城県の公立、定時制・通信制、私立を順に見てきました。

結論として、茨城県は不登校生にとって特別に厳しい県ではありません。制度を正しく知って、当日のテストに向けて学力を積み上げていけば、進める高校は数多く存在する県です。

公立高校については、共通選抜のB群選抜に「学力検査の結果を重視した選抜」が制度として用意されていて、県内の多くの高校がこの枠を大きく取っています。中堅校から下位校にかけて定員割れも進んでいるため、当日点で勝負できる学力さえあれば、現実的に合格できる選択肢は幅広く残されています。

全日制以外にも、フレックススクールや県立水戸南高校(定時制・通信制)といった、自分のペースで学める公立の選択肢もあります。

私立高校は公立に比べて壁が高くなりやすいものの、一般入試なら当日点中心で勝負できる学校もあり、説明会の個別相談で道が開けることもあります。

茨城県の高校入試で不登校生にとって最も大事なことは、次の2つです。

  1. 制度を正しく知る:A群とB群の判定の仕組み、B群選抜の比率設定、定時制・通信制の選び方、私立の出願基準と優遇基準の違い。これらを知っているかどうかで、どの高校を志望校に据えるか、どこに学習の力を注ぐかが大きく変わります。
  2. 当日のテストで点を取れる学力を身につける:内申点に頼れない以上、勝負は5教科の学力をどこまで伸ばせるかにかかっています。逆に言えば、ここに集中して取り組めば、内申点が低くても合格できる高校は確かに存在します。

過去の欠席日数や内申点は、いまから変えられません。しかし、適切な選択肢を探ることや学力を身につけることは、これからの行動次第でいくらでも変えていけます。

茨城県には、不登校で長期欠席のある生徒の頑張りを当日のテストで受け止めてくれる仕組みが、確かに用意されています。

皆さまに吉報が訪れることを願っています。


■ 不登校からの高校入試(茨城編)よくある質問


■ 高校入試をがんばる不登校生、募集中

ということで、今回は、不登校の中学生が茨城県の高校入試(主に全日制高校)を合格する方法について考えてきました。

ここまで読んでいただいた方にはご理解いただけたかと思うのですが、不登校の中学生が高校受験を突破するために必要なのは、無理して学校に通うことでも内申点を上げることでもありません

ひとえに、基礎学力を身につけること
特に五教科の中学内容をしっかり学ぶ(学び直す)ことに尽きます。

実は、私たちSchorbitは、高校入試に向けて自宅から勉強する中学3年生の支援プロジェクトを開始しました。

その名も、Schorbit REBOOT

不登校でも高校からはがんばりたい。
高校入試に向けて日中、家で勉強したい。
中学校の学習内容に抜けはあるけど何とか勉強して取り戻したい。

そんな中学3年生(中学2年生の途中から参加可能)を応援します。

詳しくはREBOOT | 中学3年間の学び直しプログラムをご覧ください。多くの中学生の参加お待ちしております。