高卒認定試験の新科目「情報」は対策しすぎ注意|元教員が第1回の過去問を全問解いてみた

「情報」が仲間入りした高卒認定試験、その難易度は?
今年度(令和8年度)より、高卒認定試験に新科目「情報」が加わりました。この大きな変更について、受験生に向けて、詳しく説明していきます。
まずは大前提として、高卒認定試験(高等学校卒業程度認定試験、高認)について。
こちらの試験は、高校を卒業していなくても、合格すれば大学を受験する資格が手に入るというものです。試験は年に2回(8月と11月)あり、複数の科目を受けて、それぞれ合格していくスタイルです。
一度合格した科目は次回以降に持ち越せるので、何回かに分けて少しずつ合格科目を増やしていくことも可能です。
すべての科目に合格すれば、晴れて「高卒認定」を取得、大学受験のスタートラインに立てます。(あとは大学受験を受けて合格するだけですね、そっちが大変ですけど。)
そんな高卒認定試験ですが、令和8年度から新しい科目が1つ追加されました。それが「情報」です。
2026年8月の第1回で初めて実施された科目なので、これから受験する方の中には、不安を感じている方も多いと思います。
ただし、どんな問題が出るかまったく予測不可能というわけではありません。
今回の科目追加に際して、文部科学省はサンプル問題を公表しています。

そして2026年8月7日には、第1回の本試験が実施されました。つまり、実際に出題された問題がすでに1回分あるということです。
私は元の高校数学科教員で、現在は高校年代向けのオンラインフリースクール「シン・ガッコウ Schorbit」を運営しています。これまで高卒認定試験の数学や科学と人間生活の解説動画も制作してきました。
「情報」の専門教員ではないものの、隣接領域である高校の「数学」を長く教えてきた立場から、この科目の難易度と対策をできるだけ客観的に分析してみたいと思います。サンプル問題21問と第1回の本試験21問、あわせて42問すべてを自力で解いた上でこの記事を書いています。
そして、結論からいうと……
「情報」、そんなに難しくないです。
- 大問の多くが他教科や常識で解ける
- 大問4のプログラミングだけは少し注意
- 対策は最小限でいい、人によってはまったく不要
といったような特徴があり、率直な感想としては、高卒認定試験の中でも屈指の易しい科目です。詳しい理由はこの後解説していきます。
なお、この記事の一部は、SchorbitのYouTubeアカウントで公開されている動画解説シリーズと連動しています。各章の流れで動画も貼っていきますので、より詳しく見たい方はそちらもご覧ください。
また、本ウェブサイトでは他にも多数の高卒認定関連記事をご用意しております。そちらも合わせてお読みください。
なぜいま「情報」が試験科目に?
背景を簡単に触れておきます。
2025年度より、大学入学共通テストに「情報」という科目が登場しました。すべての大学受験で必須というわけではありませんが、国公立大学では多くが「情報」を課しています(英語や数学より配点は少ないですが)。
ちなみに高校で「情報」が必修になったのは2003年度ですから、20年間くらいは「情報」が受験科目ではなかったわけですね。ここ数年で大きく位置づけが変わったのです。
こうした流れの中で、高卒認定試験にも「情報」が加わったというのが大まかな経緯です。
「情報」って全員が受けるもの?
基本的には、これから高卒認定試験を受ける方は全員が受験対象です。年齢は関係ありません。
ただし、過去にすでに高卒認定試験に合格している方は、「情報」を改めて受け直す必要はありません。合格資格はそのまま有効です。
また、高校で「情報Ⅰ」の単位をすでに取っている方は、「情報」の科目が免除されます。
ということは、単純に科目数が増えた分、受験生にとって負担感が増したのは間違いないところです。問題は、どれくらい増したのかですよね。
「情報」はどのくらい勉強すればいい?
ここは多くの方が気になるところだと思います。
正直に言うと、サンプル問題と第1回の本試験を見る限り、特別な対策はほとんどいらない印象でした。情報Ⅰの問題集を1冊やり込むようなことは、少なくとも現時点では必要ないと感じます。
理由は主に3つです。
- 選択問題で、不正解の選択肢の作り方が比較的やさしいので、消去法が効きやすい
- 国語の読解力と一般常識で答えにたどり着ける問題が多い
- 他科目(数学・公民など)の知識がそのまま流用できる
特に2026年度(令和8年度)に限っていうと、新しい科目が追加された場合、初回は問題の難易度が穏やかに作られがちです。今後の年度では難化していく可能性もありますが、初年度に当たる2026年の試験については、構えすぎなくても合格圏には届くだろうと予想されます。
実際、第1回の問題を見る限り、この予想は大きくは外れていません。第1回の本試験を全問解いた結果は後ほど詳しく書きますが、満点を狙うのは簡単ではないものの、合格点なら十分に届く難易度でした。
もちろん何の準備もしない、というのは少し不安だと思いますので、できる対策としては次のような程度で十分です。
- サンプル問題を一度自分で解いてみる
- 必要なら情報Ⅰの教科書を一通り眺める(中古でメルカリなどで安く買えます)
- 普段からインターネットやパソコンに馴染んでおく
特に最後の項目が重要で、日常的にネットで買い物をしたり、SNSや動画サイトに触れていたりする方は、それだけで多くの問題に対応できます。
一般的に、高卒認定試験の合格点は40点~50点と見込まれます。情報は他科目より易しい印象なので、合格ラインを高めに見積もったとしても、十分に届くはずです。
問題の中で唯一、大問4のプログラミングだけは少し注意が必要です。ここは後ほど詳しく扱います。
シリーズ第1弾の動画では、全体像と対策の話を口頭で詳しく解説しています。記事と合わせてどうぞ。
令和8年度第1回の本試験を全問解いてみた
ここからは、2026年8月7日に実施された第1回の本試験を、大問ごとに見ていきます。
全体の構成は、大問5つ・小問21問・100点満点。配点は大問1のみ各4点(合計20点)で、大問2から大問5は各5点(合計80点)です。
先に総評を書いておきます。
満点を取るのは簡単ではありませんが、合格点なら十分に届きます。
- 用語を知らないと解けない問題は、全21問のうち6問程度
- 大問2・3・5は、一般常識と国語の読解とグラフの読み取りでほぼ対応できる
- 大問4のプログラミングは、コードが読みやすく素直な作り
- つまずくとしたら、大問1で問われる用語と、大問4で使う数学の不等号
逆に言うと、残りの15問前後は、情報の勉強をしていなくても解けるということです。国語が読めて、普段からネットやスマホに触れていれば、そのまま点になります。
「情報」は対策しすぎなくていいという見立ては、本試験を解いたあとも変わりありません。
なお、事前に公表されていたサンプル問題と読み比べると、大問の構成も出題の傾向もほぼ同じでした。サンプル問題を解いた経験は、そのまま通用します。(サンプル問題の解説はこの記事の後半にあります)
第1回では出題ミスが2件あった
大問ごとの話に入る前に、これに触れておく必要があります。
文部科学省は2026年8月31日に、第1回の「情報」で問題文の誤りと、正答が2つある問題があったと発表し、受験者に対して謝罪しています。訂正は2件で、いずれも「情報」です。
- 大問4の問4……プログラム内の等価比較の表記に誤りがあった。正答なしとし、全受験者を正答としたうえで加点(5点)
- 大問5の問1……選択肢の表現に誤りがあった。当初の正答に加えて、別の選択肢を選んだ受験者も正答としたうえで加点(5点)
それぞれの中身は、該当する大問のところで説明します。
なお、この訂正のお知らせには該当2問の問題文と図が抜粋で載っています。先ほど書いたとおり本試験の問題冊子は公開されていないので、この2問だけが公式に出ている唯一の本試験問題ということになります。
令和8年度第1回高等学校卒業程度認定試験「情報」の「問題文」及び「解答・配点表」の訂正について(文部科学省)
大問1:小問集合は5問中3問が知識問題
大問1は5問構成で、配点は各4点(合計20点)。形式はサンプル問題と同じです。
小問集合とはいえ、勘だけで乗り切れる作りにはなっていません。出題は次のとおりです。
- 商標権(ロゴの扱い)
- メディアリテラシーとして適切なもの
- データを失わないための対策として適切でないもの
- IoTに当てはまる例
- シーザー暗号の方式
このうち、知識がなくても選択肢だけで切れるのは2問です。
メディアリテラシーの問題は、4択のうち3つが「怪しい情報は広めたほうがいい」という趣旨のことを言っています。まともなことを言っている選択肢が1つしかないので、間違えようがありません。
データを失わないための対策の問題も、「フォルダ名を控えておけば大丈夫」という選択肢が明らかにおかしい。フォルダ名が残っていても中身は戻りませんから、日本語が読めれば落としません。
残りの3問は知識が要ります。
商標権の問題は、意匠権と混ざります。肖像権は人に関する権利だと見当がつきますが、ロゴもデザインではあるので、意匠権と迷う人は少なくないはずです。
IoTの問題は、選択肢に「人感センサーで照明がつく」「専用リモコンでテレビを操作する」といった、インターネットを経由しないものが並びます。やっていること自体は似ているので、ネットを介しているかどうかを意識していないと引っかかります。正解は、外出先から自宅のエアコンを操作する例でした。
シーザー暗号の問題は完全な知識問題です。正解は共通鍵暗号方式。鍵が1つしかないので、やり方が相手にバレると全部解かれてしまう。そのリスクを避けるために公開鍵と秘密鍵を分ける方式が主流になった、という流れで教科書には載っているんでしょうか。有名なほうの公開鍵暗号方式を選ぶと外します。
大問1は、この試験の中で最も知識が問われる場所です。とはいえ第1回についていうなら、2問は知識がなくても確実に取れました。満点を狙う必要はありません。2問確実に取って、残りで1問拾えれば12点。大問1はそれで十分です。
知識が必要という意味では、ここが一番難しいのかも。
大問2:半分は常識で解ける
大問2は4問構成で、配点は各5点(合計20点)。
冒頭にリード文が置かれていますが、これは読まなくても解けます。各問は実質的に独立していて、リード文に戻らないと答えが出ない作りにはなっていません。時間の節約になるので覚えておいてください。
出題は次の4つです。
- デジタルデバイドの説明として適切なもの
- 表現メディア(文字・音声・静止画・動画)の説明として適切でないもの
- ユニバーサルデザインの事例として適切なもの
- セルフレジのメリットとして適切なもの
このうち2問目と4問目は、知識がなくても解けます。
表現メディアの違いを問う問題は、要するに国語の問題です。静止画は一目でわかるが前後の状況がつかみにくい、動画は正確に伝えられるが時間がかかる、といった選択肢が並びます。どれも日常的に接しているものなので、原理原則から考えれば判断できます。正解は「音声は感情や話者の意図を伝えることが難しい」という選択肢。音声はむしろ感情を伝えるのに向いているので、ここが誤りです。
セルフレジの問題は、情報の知識とはほぼ無関係です。なぜ会社がセルフレジを入れたがるのかと考えれば、人手不足への対応という答えが出ます。しかも他の選択肢が「ミスを完全になくすことができる」「誰でもスムーズに」「必ず利用できる」といった極端な書き方なので、削るのも簡単です。極端な表現が入っている選択肢はだいたい誤りという、試験一般の作法がそのまま通用します。
残る2問は用語を知っている必要があります。
デジタルデバイドは、ネットやスマホを使った上でのトラブルではなく、そもそも使えない・アクセスできないことによる格差を指します。正解は災害時にSNSで流れる避難情報を受け取れないという例でした。スマホがないと注文できない店、ネット販売しかしていない商品、そういう場面をイメージしておくと迷いません。
ユニバーサルデザインの問題は、選択肢がすべてセルフレジの話で揃えてあります。正解は「次の操作がわかりやすいように文字だけでなくアイコンを表示している」。
ただしこの問題は、迷っても仕方がない選択肢が混ざっています。「背景と区別しやすくするため原色のみで表示している」というもので、色を工夫して見やすくしている、と読めてしまう。実際そう書いてあるわけですから。原色だけで構成すると一般には見づらい配色になるので誤りなのですが、コントラストを強くするという発想自体は間違っていません。曖昧な色使いのサイトなら原色にしたほうが見やすくなる場合もあります。これで外した人は気にしなくていいです。
まとめると、大問2は4問のうち半分は常識で解けます。残り半分も、デジタルデバイドとユニバーサルデザインという言葉を知っていれば取れる範囲です。
大問3:ここが一番簡単
大問3は4問構成で、配点は各5点(合計20点)。
ひとつのテーマに沿って4問が流れていく形式です。テーマは、昼休みに学食のメニューを確認する掲示板の前が混雑している、これをどう解決するか。問題解決の各段階に沿って問いが並びます。
先にぶっちゃけますが、ここが一番簡単です。事前の知識はいりません。何も勉強していなくても解けます。
- 混雑を観察して原因を考える活動は問題解決のどの段階か
- メニューを確認できるWebサイトを作る案が有効だと考えられる理由
- Webサイトのデータが保存されているコンピュータの名称
- 混雑が緩和できたかを検証する方法
1問目は「問題を発見し理解する段階」を選ぶだけです。他の選択肢が「解決策の実施を開始する段階」「解決策が成功したかどうか評価する段階」なので、まだ何もやっていない以上、選びようがありません。
2問目の正解は、時間や場所に縛られずにメニューを確認できるから、というもの。掲示板の前に立たなくていい、という当たり前の話です。他の選択肢は「Webサイトがあれば学食のメニューを毎日考えなくてよくなる」など、因果関係が意味不明なものが並びます。
ひとつだけ、細かく考えると悩む選択肢があります。「インターネットにつながらない場所でもメニューを確認できるから」というもの。Webサイトなのでネットにつながらなければ見られない、というのが誤りの理由です。ただ、あらかじめ読み込んでおけばオフラインでも見られるだろうと考え始めると面倒なことになります。
3問目はサーバという語を答えさせる問題に見えますが、用語を覚えていなくても解けます。他の選択肢でも、例えば「印刷を行うプリンタ」という形で書いてあるので、プリンタという言葉を知らなくても役割が書いてあるからわかります。言葉を知らなくても当たります。
4問目も同じで、実際に確認するという選択肢が正解です。他が「Webサイトがわかりやすいか教員に聞く」など、検証になっていないものばかりでした。
大問3は国語力だけで解けます。しかも国語としても易しすぎるので、逆に疑ってしまうくらいです。ここは全問正解を目指しましょう。
大問4:プログラムは読みやすいが数学の知識が要る
大問4も4問構成で、配点は各5点(合計20点)。ひとつのプログラムを段階的に改良していく形式です。題材は、おはじきを交互に取り合うゲーム。
先に触れたように、4問目は出題ミスがありました。プログラム中の等価比較の表記が「==」と「=」で混在していたため、文部科学省は正答なしとし、全受験者を正答として加点する措置を取っています。本番で何を選んでいても5点入ります。ここでは、誤りがなかった場合の想定で解説します。
そのうえで言うと、適切な問題だという印象です(後述しますが、サンプル問題の大問4はかなりわかりにくい問題設定でした、それよりは改善されています)。コードが読みやすく、変数名の付け方もわかりやすい。何をするプログラムなのかが最初の説明で素直に伝わってきます。プログラミングの経験がなくても、条件分岐を順に追えれば大丈夫です。
もちろん、数学の不等号とか条件の否定がわかっていないと解けない問題が含まれます。難しい話ではなく、大なり(>)と大なりイコール(≧)の違いがわかるかという程度です。
1問目は、おはじきが残っている間は繰り返す、という条件を式にするものです。「おはじきの数 > 0」を選びます。
2問目は、入力が1から3までの範囲でなければエラーを表示する、という条件です。「1から3である」の否定なので、1より小さい、または3より大きいが正解になります。最初の2つは純粋に数学の話です。
3問目は、取りすぎて残りがマイナスにならないようにする処理です。取る数がおはじきの数より大きい場合、取る数のほうをおはじきの数に合わせます。ここは代入の向きが問われます。数学のイコールとは違い、左辺に入るのは取る数のほうであって、逆ではありません。
4問目は手番の入れ替えです。おはじきが0になったら勝者を表示する処理はすでに書かれているので、ここで作るのは番を交代させる部分。手番が1なら2にし、そうでなければ1にする。「そうでなければ」で2の場合をうまく省略している形です。
この4問目で、条件分岐の1行だけが「==」ではなく「=」で書かれていました。同じプログラムの少し上の行では「==」と正しく書かれているので、そこだけ表記が崩れていたことになります。
全体として、教科書を読み込むよりも、この程度のプログラムを実際にいくつか読んで慣れておくことのほうが効果があります。出題ミスがあったのは残念ですが、問題そのものはサンプル問題より良い出来でした。
大問5:数学Ⅰのデータの分析そのもの
大問5も4問構成で、配点は各5点(合計20点)。テーマは図やグラフの読み取りです。数学Ⅰの「データの分析」とほぼ同じだと思ってもらって構いません。
- エネルギー源ごとの割合の推移を示した帯グラフの読み取り
- 電力単価と原油価格の相関係数の表の読み取り
- 各国の電気料金とエネルギー自給率の読み取り
- 各国の発電方法の割合を示した帯グラフの読み取り
相関係数の問題を除けば、対策のしようがありませんし、簡単です。その場でグラフを読み取って解くだけだからです。ここはあえて順番を崩して説明していきます。
3問目は日本・アメリカ・イギリス・フランス・ドイツの電気料金を見比べる問題です。たとえば「エネルギー自給率が100%を超える国はない」という選択肢は、アメリカが103.5%なので消えます。正解は家庭用と産業用で料金の順位が一致しているという選択肢で、順に追うとイギリス・ドイツ・日本・フランス・アメリカで確かに揃っています。グラフを見ればわかる、としか言いようがない問題でした。
4問目は各国の発電方法の割合を比べるものです。誤りは「イギリスとドイツは再生可能エネルギーの割合が同程度だから、発電電力量もほぼ同じである」という選択肢。割合が同じことと、実際の量が同じことは別です。帯グラフはどの国も100%に揃えて並べたものなので、そこから量は読めません。日本とアメリカを比べれば、実際の発電量はアメリカのほうが多いはずですが、帯グラフの見た目には出てきません。ここがわかっていれば即座に切れます。
2問目だけは知識が要ります。相関係数の表に電力平均単価(家庭用・産業用)と原油CIF価格が並んでいて、原油が高いと電力も高い、という正の相関が数字で示されています。誤りの選択肢は相関係数が0.65なので「価格が65%の価格になる」といった、相関係数と何の関係もない文でした。相関係数が何を表す値なのかを知っていれば引っかかりません。
出題ミスのあった問題と「%」と「%ポイント」の違い
大問5の1問目が、文部科学省が訂正を出した問題です。「適切でないものを選べ」という形式で、本来は1つだけが正答となる想定でした。
本来の正答は「化石燃料の2022年度の割合は2010年度より低いが1973年度よりは高い」という選択肢です。実際は逆で、1973年度より低く2010年度より高い。グラフをていねいに読み取れば間違えません。
問題になったのは別の選択肢のほうです。「1973年度から2022年度にかけて、石油の割合は39.3%減少している」と書かれていましたが、正しくは「39.3パーセントポイント減少している」。この表記のせいでこちらも誤った記述になってしまい、適切でないものが2つある状態になりました。文部科学省はこの選択肢を選んだ受験者も正答として加点する措置を取っています。
ここは受験対策とは別に知っておく価値があります。少し余談になりますが解説します。
石油の割合は1973年度の75.5%から2022年度の36.2%に変わりました。引き算すると39.3。これが39.3パーセントポイントの減少です。
一方、39.3%減少と言った場合は、元の75.5%が39.3%分だけ目減りしたという意味になります。計算すると45.8%まで下がった、という話になってしまう。実際は36.2%なので合いません。割合として見れば、75.5がおよそ半分になっているので、正しくは約52%の減少です。
帯グラフを2つ並べて「20%から10%に、10%分減っている」と言うのは日常ではよくあることです。日常会話としては問題ありません。ただ正確には、10パーセントポイントの減少であり、割合としては50%の減少です。
この区別は、逆向きに使われると厄介です。支持率が2%から3%に上がったとき、「50%増加」と書けば急伸したように読め、「1パーセントポイント上昇」と書けば誤差のように読めます。どちらも嘘ではありません。データの読み方として、覚えておいて損はないところです。
参考:サンプル問題の解説
ここからは、文部科学省が2025年7月に公表したサンプル問題の解説です。第1回の本試験が実施された今となっては参考資料の位置づけですが、実際に手に入る問題はこちらだけなので、練習用としてはまだ価値があります。
本試験と読み比べると、出題の傾向がどこまで一致しているかも見えてきます。
大問1:知識を問う……ふりをした常識テスト
まずはサンプル問題の大問1から見ていきましょう。
大問1は5問構成で、配点は各4点(合計20点)。一問一答に近い形式で、情報科目の基礎知識を問う体裁になっています。
出題内容を並べると次のとおりです。
- フローチャートとは何か
- 標本化周波数とデータ量の関係
- ネット情報に惑わされない方法
- 2進数が情報処理に使われる理由
- URL、IPアドレス、データの仕組み
専門用語が並んでいるので難しそうに見えますが、実際に解いてみるとそうでもありません。
たとえばフローチャートを問う問題は、選択肢に「ロゴマーク」「キャラクターデザイン」「ゲームタイトル」が並んでいて、明らかにジャンル違いです。フローチャートという言葉を知らなくても、消去法で答えにたどり着けます。
他の問題も似た構造で、不正解の選択肢が雑なケースが多い印象です。あやふやな知識でも、選択肢を絞り込んでいけば正解できる作りになっています。
このパートは正答率を高くキープしたいところです。ここで8割取れれば、残りの大問で多少落としても合格が見込めますから。
大問2:実質、国語と数学と道徳の問題ばかり
続いて大問2です。
大問2は4問構成で、配点は各5点(合計20点)。生徒3人の会話文を題材にして、ブレインストーミング、著作権、ベン図、生成AIの使い方などを問う形になっています。
問題のテーマを並べてみます。
- ブレインストーミングのルール
- 著作権・肖像権を侵害しない行動
- ベン図の使い方
- 生成AIの不適切な使い方
ここで気づくことが1つあります。「情報」の試験なのに、内容の半分以上は他の教科の領域です。
ブレインストーミングは、どちらかというと「公共」や「総合的な探究の時間」で扱われる話題です。著作権・肖像権は「公共」の領域(もちろん「情報」でも習いますが)。ベン図に至っては完全に「数学Ⅰ」「数学A」の集合の内容です。生成AIの使い方は、情報モラルというよりは「日常的に何を考えて生成AIと付き合うか」という常識の問題です。
つまり、大問2は「情報」というラベルを貼っているだけで、実態は国語・公民・数学・道徳の混合問題に近いです。情報の知識を蓄えなくても、これまでに学校で習った内容や、社会人としての一般常識で十分に対応できます。
会話文も長めですが、解くのに会話文の内容を細かく追う必要はありません。キーワードだけ拾えば正解できる問題が多いです。
大問3:題材は凝ってるが聞かれてるのは普通のこと
大問3に進みます。
大問3も4問構成で、配点は各5点(合計20点)。「高校生が高齢者向けにスマートフォン活用教室を開催する」というよくわからない設定を題材として進行します。
問題のテーマは次のとおりです。
- 文字化けの原因
- 画像の読み込み速度を上げる方法
- 高齢者向けポスターの作り方
- 手順書の選び方
題材の設定は凝っているのですが、実際に問われている内容は素直です。
文字化けは「文字コードが違うと表示が崩れる」という1点さえ知っていれば解けますし、画像の読み込み速度は「ファイルサイズを小さくすればいい」というシンプルな話です。
高齢者向けポスターの問題に至っては、「情報」とほぼ関係ありません。「スマートフォンが苦手な人にWebサイトで案内を出すのは本末転倒」という、常識で判断できる問題です。
手順書の選び方は、パワーポイントの資料を見やすく作るときの発想と同じで、文字だらけの選択肢を避ければ正解です。
大問3も、HTMLや文字コードといった用語が並びますが、現代社会で普通にネットやスマホを使っている人なら、感覚的に正解にたどり着けるはずです。
ここまで見てきたように、大問1~3は知識・常識・読解力でほぼ対応できます。各問題のより詳しい解説は、シリーズ第2弾の動画で扱っています。
サンプル問題を見ながら一緒に解き進めたい方や、ここで触れた各問題の根拠を詳しく知りたい方は、こちらをご覧ください。
大問4:プログラミング問題だが、必要なのは読解力
大問4はサンプル問題の中で唯一、構えが必要な大問です。
4問構成で、配点は各5点(合計20点)。テーマはプログラミングで、年月日を入力すると曜日を返すプログラムを題材にしています。
ただ、難しさの根本はプログラミングそのものにはありません。実際にコードを書く必要はないですし、複雑な処理を読み解く問題でもないです。
この大問でつまずきやすいのは、別のところにあって、ようは「問題文で説明されている仕様の意図が読み取りづらい」ことです。具体的には、
- 1月を13月、2月を14月として扱うという独特の処理が出てくる
- 後半は旧暦の概念が前提になっている(旧暦って何か知らないと意味不明になる)
プログラミングというよりも、「言われていることをそのまま理解する読解力」が試されている、と言ったほうが近いです。題材が直感的に分かりにくいので、文章を読んでもピンとこない時間がしばらく続きます。
ただし、そこさえ乗り越えれば、解くこと自体はそれほど難しくありません。
落ち着いて条件分岐の構造を追えば、フローチャートを読むレベルの感覚で正解にたどり着けます。プログラミング経験がなくても、論理を順に追えれば大丈夫です。
この点は、第1回の本試験のほうが素直でした。おはじきのゲームという題材で、仕様の読み取りに苦労する箇所がありません。サンプル問題のこの大問でつまずいた方も、あまり気にしなくて大丈夫です。
時間をかけて取り組むなら、ここはぜひ動画と一緒に進めてみてください。動画は後ほど紹介します。
大問5:数学Ⅰ「データの分析」の簡易版
最後の大問5です。
4問構成で、配点は各5点(合計20点)。テーマはデータ分析で、都道府県別の交通事故発生件数や乗用車保有台数のデータを題材にしています。
問題のテーマを並べると次のとおりです。
- データ分析をする際の心構え
- ヒストグラムの読み取り
- 相関係数の解釈
- 散布図と回帰直線の読み取り
ここで気づく方も多いと思いますが、内容は数学Ⅰの「データの分析」とほぼ重なります。むしろ、数学Ⅰの問題よりも易しい印象です。
たとえば相関係数を問う問題は、計算する必要が一切ありません。すでに計算済みの表が与えられていて、その中から数値が一番大きいものを選ぶだけです。
1に近いほど相関が強い、という基礎さえ知っていれば解けますし、なんならその基礎も本文に載っています。
ヒストグラムや散布図の読み取りも、グラフを丁寧に見れば中学生レベルで対応できます。
数学Ⅰのデータの分析を一通り勉強している方は、この大問はほぼノー勉でも満点が狙えます。逆に数学Ⅰを未学習でも、グラフの見方さえ落ち着いて押さえれば、何問かは取れるはずです。
この構成は第1回の本試験でもそのまま引き継がれていました。題材こそ違いますが、グラフと相関係数を読み取るという中身は同じです。ここを練習しておく価値は高いといえます。
大問4と5については、文章だけで読むよりも動画で順を追って見るほうが理解しやすいです。プログラムの構造を画面で追いながら解説しているので、独学の補助としても役立つと思います。
シリーズ最終回、大問4と5の解説動画はこちらです。
「情報」の全体的な特徴まとめ
以上で問題の解説は終了となるわけですが、全体を通じてある事実が見えてきました。
「情報」というラベルが貼られていますが、中身は一般常識と他教科の寄せ集めに近いこと。サンプル問題における各大問の正体を整理すると、こうなります。
- 大問1:自動車免許の学科試験に似た常識・知識問題
- 大問2:国語の読解+公民+数学(ベン図)+道徳の混合
- 大問3:一般常識+わずかなIT用語
- 大問4:プログラミング(ただし難所は読解力)
- 大問5:数学Ⅰの「データの分析」の簡易版
そして第1回の本試験でも、この構図はほとんど変わりませんでした。
- 大問1:常識・知識問題(ただしサンプル問題より知識寄りに)
- 大問2:国語の読解+一般常識+わずかな用語
- 大問3:問題解決の流れをたどるだけの国語
- 大問4:プログラミング(難所は数学の不等号と代入の向き)
- 大問5:数学Ⅰの「データの分析」そのもの
情報科目として独自の専門知識を要求している箇所は、実はそれほど多くありません。
情報という名前を冠してはいるものの、実態は「現代を生きる人として知っておくべきこと」と「他教科で学んだことの簡易版」で構成されている、と言ったほうが近いです。
これは試験対策の方針にも関わる重要なポイントです。情報の試験のためだけに、専用の勉強時間を大きく確保する必要は薄いといえるでしょう。
他の科目との難易度比較、最適な学習方法とは
高卒認定試験には複数の科目があります。主観ではありますが、難易度で2分割するとこのようになります。
[下積みが必要な科目]
- 英語:基礎単語・文法の積み重ねが必要
- 数学:図形や関数で詰まる人が多い
英語と数学が最難関科目です。これらのみ下積みが必要だからです。
もちろん、下積みがある人にとっては簡単ですが、もし中学時代も含めてまったく勉強していないという状態であれば、年単位の準備期間が必要となります。
[一通りの学習が必要な科目]
- 科学と人間生活:理科にしては暗記中心
- 歴史・地理:暗記量が多い
これらは中学内容とのつながりはあるものの、仮にそれらが抜けていたとしても純粋にその科目だけを学ぶことが可能です。もちろん暗記量は少なくないので、それなりに勉強時間を充てる必要があります。
しかし、基礎の基礎から積み重ねないとどうにもならない英語や数学に比べれば、随分とラクになります。イメージとしては数ヵ月の準備期間が必要です。
さて、これらの科目と比べて、「情報」はどこに位置づけられるでしょうか。
実は、これらよりも遥かに易しいです。暗記の負担も少なく、計算もほぼ求められておらず、読解力と常識でかなりの問題に対応できます。なんならまったく勉強しないでいきなり受験しても合格する可能性が少なくありません。
イメージとしては数日の準備期間でなんとかなります。
したがって、「情報」は、高卒認定試験の各科目の中で合格までの労力が最も軽い科目になる可能性が高い、というのが私の見立てです。
となると、「情報」の試験対策として、最低限やっておきたいことは次のとおりです。
- サンプル問題を一度自分で解いてみる
- 大問4のプログラミングの構造に慣れておく
- 普段からインターネットやパソコンに触れる
これだけです。もし追加するとしたら、「情報Ⅰ」の教科書を流し読みすることくらいでしょうか。
第1回の傾向を踏まえるなら、もう1つ足せることがあります。商標権やデジタルデバイドのような、大問1と大問2で問われる用語をいくつか押さえておくことです。ここだけは知らないと落とします。とはいえ、教科書の太字を全部覚える必要はまったくありません。
逆に、やらなくていいことも書いておきます。
- 情報Ⅰの問題集を1冊やり込む
- 教科書の内容を片っ端から暗記する
他科目を後回しにして「情報」を対策する必要はありません。「情報」に時間を割くより、数学Ⅰや英語などもっと労力が必要な科目に時間を回したほうが、合格全体の戦略としては合理的です。
まとめ:新科目「情報」、構えなくて大丈夫
最後にこの記事の要点を整理します。
- 令和8年度から高卒認定試験に「情報」が追加された
- 第1回の本試験は、大問5つ・小問21問・100点満点
- 用語を知らないと解けないのは21問のうち6問程度
- 満点は簡単ではないが、合格点なら十分に取れる難易度だった
- 大問の多くが他教科や常識で解ける
- 唯一、大問4のプログラミングだけは少し注意
- 対策は最小限でいい、人によってはしなくてもいい
- 他の必須科目に時間を回したほうが合格戦略として合理的
新しい科目が増えると、それだけで不安が大きくなるものです。ただ、サンプル問題と第1回の本試験を実際に解いてみれば、そこまで身構える必要がないことが見えてきます。
この記事と動画シリーズで、不安を少しでも軽くしてもらえたら嬉しいです。
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