不登校の高校生はいつ転校すべき?
タイミングや手続きを元高校教員が解説

全日制高校に在学している途中で不登校になってしまった場合、どうすればよいのでしょうか。
前回の記事では、すべての基礎ともいえる全日制高校の進級・卒業について根本的な仕組みを解説しました。
この問題は単位を「履修する」「修得する」という言葉の意味や「欠席」と「欠課」の違いがわからないままだと、自身の置かれた状況や選択肢が正しく理解できません。その辺りをご存じない方は、先に前回の記事からご覧いただくことをおすすめします。
その上で今回は、「それでも学校に通えない状態が続いたとき」の対応、転校するか、そのまま残るか(留年するか)、いっそのこと退学してしまうかといった選択について解説をします。
実際のところ、不登校が続いた高校生の多くは、留年ではなく転学(または退学)を選びます。私の経験では、不登校の生徒が10人いたら9人は転学か退学(多くは転学)を選び、同じ学校に留年してとどまる生徒はごく少数です。そのこともあり、今回は全日制高校からの転校、正確には転入学(転学)を中心としてお話ししていきます。
筆者はもともと全日制高校の教員として、実際に生徒の転学に数多く対応してきました。現在は、不登校の高校生や通信制高校生、高校中退者が大学入試を目指すためのオンラインフリースクールを運営しています。特定の通信制高校やサポート校を勧める立場ではないため、どの立場にも学校にも肩入れせず、教員として見てきた実務に基づいて公平に書いてまいります。
実際、こうしたトピックについての正しい情報は世間にほとんど出回っていません。
例えば「高校 転校 不登校」といったキーワードで検索すると、出てくるのは通信制高校やサポート校が運営するサイトの記事ばかりです。そして、そうした記事の多くは「転校しましょう」という結論ありきで書かれています。それも当然で、運営している学校自身が転入してくる生徒を必要としてため、集客目的で書かれたものだからです。
ですが実際には、事情によっては今の高校に残ったほうが得なケースもあれば、転校したほうが得なケースもあり、そこは時期や単位の状況次第で変わります。そこのバランス感覚が正しい状態で、しかも複雑な制度を紐解いていくような記事はほとんど存在しないのです。
本記事はそのような問題意識から書かれています。
そのため、本記事では、全日制高校で不登校になった状況について、転校すべきとも残り続けるべきともいいません。どちらかに決めつけることなく、進級・単位・費用といった学校の制度を一つずつ具体的に解説しながら、状況ごとにどちらが得なのかを冷静に判断できるように書いていきます。
そうした知識が皆さんの選択でお役に立てば幸いです。なお、典型的な質問に答えていくQ&A形式で進めていきます。
転入学と編入学は何が違う?
まずは用語からです。ただし、ここはそこまで専門的に理解しておく必要はありません。転入学(転校)も編入学も大差はなく、どちらも「学校を移ること」です。
違いは一つだけです。転入学は、前の学校と次の学校の間に空白期間が1日もない状態で移ることを言います。世間で「転校」と呼ばれているのは、この転入学のことです。
一方の編入学は、一度学校を辞めてから、新たに入学し直すことです。間に空白期間があっても構いません。
なお、転入学ができるのは日本の一条校(学校教育法第一条に定められた正規の学校)の間だけです。ですから、たとえば海外の学校に留学していて日本の高校に入り直す場合は、編入学にあたることが多くなります。
ところで、「編入だと空白期間ができて、就職などで不利になるのでは」と心配される方もいらっしゃることでしょう。
確かに履歴書上で、「転学」と「退学・入学」という文字列では多少印象が違うかもしれません。しかし、より重要なのは高校を卒業することです。
折しも、日本社会は至るところで人手不足が発生している最中(売り手市場)です。業界にもよりますが、空白期間の有無を厳しく問うような風潮は今の日本にはあまりありません。私見になりますが、あまり気にしすぎる必要はないと思います。
- 転入学は空白期間なしで学校を移ること(いわゆる転校)
- 編入学は一度辞めてから入り直すこと
- 空白期間が就職等で決定的に不利になるとは考えにくい

在籍中の高校に「転校を考えている」と伝えてもいい?
保護者の方からよくいただくのが、「今通っている学校に転校を考え始めていると言い出すのは失礼ではないか」という質問です。
結論から言えば、正直に伝えてしまって問題ありません。
在籍校を出ていくことの不義理よりも、学校に通えていない状態がずっと続くことのほうが教育上よくありません。本人の成長のためにより良い場所を考えていること自体は、何も後ろめたいことではないのです。担任の教員に率直に伝えてください。
全日制高校在学中に通信制高校のキャンパスを見学に行くことも、まったく問題ありません。学校がある平日の時間帯に見学へ行ったとしても、事情が事情ですから、無断欠席でなければ学校が怒るようなことはまずないでしょう。
ただし、ここからが重要です。
中学から高校を受験するときや高校から大学を受験するときと違って、「高校に在籍しながら別の高校を受験する」のはかなり特殊な行為です。多くの場合、その手続きを取る人は今の学校から出ていくことが前提になります。
つまり、別の学校を受けますとなった瞬間に、落ちたとしても今の高校に戻れなくなる可能性が高いのです。転学希望を正式に届け出た時点でそういう扱いになる学校が多くあります。「もっといい高校が見つかったから受けてみて、ダメなら今のままでいい」という気軽な併願はできません。
- 転校の検討は在籍校に正直に伝えてよい(見学も問題ない)
- ただし転学の手続きは「出ていくこと」が前提になる
- 落ちたら戻る、という併願的な受け方は認められないことが多い
転校先は通信制高校しかないの?
「高校の転校=通信制高校に移ること」だと思っている方が多いのですが、それは勘違いです。
実際には、全日制から全日制への転入学もありますし、全日制から定時制への転入学もあります。通信制についても、テレビCMをしているような私立の広域通信制ばかりではなく、公立の通信制もあれば、地域に根ざした私立の狭域通信制もあります。
つまり、選択肢はたくさんあります。その中からどれを選ぶかを考えてよいのですが、しかし、そもそも選択肢のうちのいくつかは条件がついています。事情により、選びたくても選べない場合があるのです。
以下、順に見ていきます。
全日制高校から全日制高校へ転校できる?
おそらく本記事でもっとも注目されるのがこの質問です。多くの人がこれを望むのですが、結構厳しいです。
「他の全日制に行きたいです」と言っても、簡単には受けることさえできません。
ただし、認められる条件もあります。代表的なものを挙げます。
一つは、一家転住です。
引っ越しで別の都道府県などに移ってしまうケースです。この場合は本人の事情ではなくご家庭の事情ですから仕方がないということで、新しく暮らす都道府県で受け入れ可能な高校を受験して移ることができます。(寮生活していた高校を辞めて地元の高校に戻るときなどは、これとまったく同じではないのですが、これに近い理由で受け入れてくれる高校もあります。)
もう一つは、いじめなどによる緊急避難です。
ただしこれは本人が「いじめだ」と言えば転学できるということではありません。学校側がいじめ重大事態として認定しているなど、「この生徒がこのまま在籍し続けるのは苦しい、別の環境のほうが安全だ」と学校が判断し、いわば学校のすすめのもとで転学を検討する場合です。こういったケースでは全日制への転学が認められることがあります。
とはいえ、いずれの場合も好きな高校を選べるわけではありません。物理的に定員が埋まっていて教室の座席に空きがなければどうにもなりません。
受験時に定員割れしている高校ならば大抵は入れますが、人気校はそうではありません。ですが、多くの高校では年度途中に1人2人と転学していく生徒がいて、ちょうど席が空いていることもあります。そこにうまく話がつながれば、入れる可能性はあります。
加えて、厄介な条件があります。教育課程(カリキュラム)が近くないといけないのです。
高1の最初のほうならまだよいのですが、たとえば1年から2年に上がるタイミングでの転入となると、1年次のカリキュラムがずれている場合、卒業までに必ず履修しなければならない科目(必履修科目)を取り切れなくなります。そうなると、転校できたところで卒業できません。
だから、カリキュラムが似ている学校でなければ受け入れられないという制約があるのです。
このように難しい条件が重なりますが、それでも全日制から全日制への転学は、現実に存在します。タイミングとしては4月が一番多く、あとは9月の夏休み明けも比較的メジャーです。
では、実際に全日制への転学をしたい場合はどう動けばよいか。
公立高校については、都道府県の教育委員会が転入学の受け入れ状況(欠員情報)を取りまとめて公表していることがあります。私立高校についても、各都道府県の私学協会(私立中学校高等学校協会)のような団体が空き状況を出していることがあります。そうした情報を手に入れた上で学校側にアプローチすることになります。
このアプローチについて、現場での経験をふまえて、いくつか補足させてください。
まず、在籍している高校へは事前に話を通しておいてください。本格的に話が進めば学校間のやり取りが必ず発生しますので、在籍校に知られずに転学の準備を進めることはできません。
また、連絡は本人ではなく保護者の方からお願いします。そして、「この高校に転学可能かどうか問い合わせをしたい」という段階で構いません。場合によっては、高校から高校で、学校同士でアプローチする形をとっても構いません。
- 全日制から全日制への転学は簡単ではない
- 一家転住や学校が認めるいじめ等の緊急避難では認められることがある
- 欠員があること、教育課程が近いことが条件になる
- 公立は教育委員会、私立は私学協会などが欠員情報を出していることがある
- 在籍校には必ず話を通してから動き出す

公立の定時制・通信制には転校できる?
全日制から全日制への転学は特にハードルが高く、それに比べると定時制・通信制への転入学はハードルが下がります。ただし、定時制や通信制であっても公立の場合は入学のタイミングが限られています。
つまり、6月に学校へ行けなくなったとして、「7月からそちらに通いたい」と相談しても、すぐ翌日から通えるわけではなく、転入試験や受け入れ日の日程に合わせて入学することになります。。こうした転入学試験は年に何回か決まった日程が決まっていることが多く、たとえば7月に試験があって9月から入学するといったタイミングが何回か用意されています。
そこに合わせて受験し、合格したら転入学できます。年度が切り替わる4月入学に向けた転入学試験は基本的にほとんどの自治体であります。それ以外では9月入学のタイミングが多くあります。
一方、私立の通信制は基本的に随時入学に近い運用がほとんどです。
学校に相談や見学に行き、そこで話がまとまれば「では来週試験を受けましょうか」という流れになり、合格すれば翌週から通えるといった形です。もちろん月初めからの在籍という形で区切っているところも多くあります。日程が決まっているところもあれば、一人の生徒のために個別に入学試験を行ってくれるところもあります。
- 公立の定時制・通信制は入学時期が年に数回に限られる(4月入学はほぼある)
- 私立の通信制はほぼ随時受け入れで、動きが早い
単位はどこまで引き継げる?
前回の記事で説明したとおり、単位は年度末に一度だけ認定されるものです。ですから、年度途中で転入学すると、その年度の分は引き継げません。
これが何を意味するか、よく考えてみましょう。
たとえば秋まで一生懸命通ってテストも受けてきたのに、秋から不登校になってしまった。そこで、秋から冬にかけてのタイミングで新しい高校に転学すると、そこまでの半年以上の頑張りがすべて無駄になってしまうのです。
ですから、基本的には年度途中の転学よりも、年度が切り替わるタイミングでの転学の方が無駄がありません。また、その年度の単位がとれそうな場合に転学するのはあまり得策ではありません。すでに不登校でまったく通っていなかったとしても、その年度は今の学校に在籍したままにして、単位をもらってから転学したほうが得なことが多いです。
もう一つ、知っておくと気持ちがラクになる話をします。
全日制高校は、国の定めた卒業要件である74単位よりもはるかに多く履修させるところが多いです。90〜100単位程度を取るカリキュラムが普通にあります。
ですから、たとえば高2まで全日制に在籍していると、すでに66〜67単位程度を修得していたりします。つまり、最後の1年で通信制に移ったとしたら、残り7〜8単位ほどで卒業ラインに届くということが普通にありえます。
通信制高校は74単位以上ならば卒業させているところが多いので、全日制から移った生徒にとっては卒業のハードルがぐっと低くなったように感じるはずです。
- 単位は年度末にしか認定されないため、年度途中の転学ではその年度分は引き継げない
- 修得済みの単位は引き継げるので、年度の区切りで移るのが最も無駄がない
- 全日制は74単位より多く履修させるため、通信制に移ると卒業までの修得単位が残り少ないことがある

就学支援金は転校しても続く?
就学支援金というのは、いわゆる「授業料無償化」の制度です。国が、高校に通う生徒の授業料分を給付してくれる仕組みです。令和8年度からは私立も含めて実質無償のレベルまで拡充されています。
全日制と通信制でシステムは多少違いますが、授業料の分がほぼ無料になるという方針は同じです。実質無償になるのは授業料だけで、入学金や施設費などはかかりますが、授業料分は公立でも私立でも支給されます。
なお、通信制サポート校は学校ではないため、就学支援金の対象外です。この場合の学校とは、学校教育法の第一条に定める学校のことです。サポート校とは通信制高校とセットで入学することのある学校のような組織ですが、名前でいえば、「○○高等学校」ではなく「○○高等学院」となっているものが多いです。
さて、本題の「転学したら就学支援金は引き継がれるのか」ですが、基本的に引き継がれます。月単位できちんと通算されます。
ただし、支給には期間の上限があります。標準修業年限といって、全日制なら3年(36か月)、定時制・通信制なら4年(48か月)までしか支給されません。ですから、全日制に3年間在籍してから通信制に転学して卒業を目指す場合、最後の1年はもう支給されません。
一方、全日制に1年間だけ在籍して通信制に移った場合はどうでしょうか。
この場合、通信制の上限48か月から、全日制在籍分を換算した月数が差し引かれます。全日制の12か月は3分の4倍して16か月分として数え直されるので、48−16=32か月分が残ります。つまり残り3年弱は支給が続くので、3年間で卒業するつもりであれば最後まで受け取れる計算です。
計算式まで細かく理解する必要はありません。就学支援金は転学しても引き継がれる、通信制でも支給される、という点を押さえておけば十分です。もし自分の場合は残り何か月受け取れるのか詳しく知りたいという場合は、以下の文部科学省のホームページ等でご確認ください。

- 就学支援金は転学後も月単位で引き継がれる
- 支給上限は全日制3年・定時制/通信制4年(在籍分は換算して差し引き)
- サポート校は学校ではないため対象外
通信制は全日制より学費が安い?
全日制と通信制の違いについては、費用面の差を気にされる方もいると思います。就学支援金がどちらにも存在することは先ほどお伝えしましたが、費用の仕組みそのものは形式が違うことが多いです。
全日制は、あらかじめカリキュラムが決まっていて、それに応じた授業料が一律でかかります。一方の通信制は、どれだけの科目を履修するかを選ぶことができ、その履修単位数に応じて授業料がかかる形が多くなっています。とはいえ、最近の私立通信制はコース制を敷いている学校も多く、週に何日通うかで金額が変わったり、履修単位数にかかわらず施設費が別途かかったりと、学校ごとに仕組みが異なります。
ここで大事なポイントをお伝えします。
私立の広域通信制は、正直なところ学費が高いところが多いです。特に通学メインのコースに在籍するか、サポート校に二重に在籍する形を選ぶとかなりの金額になります。私立の全日制高校に通うのとあまり変わらない、下手をするとそれを超えることもあります。
就学支援金で相殺される金額を加味すると、「通信制なのに全日制より学費が高い」ということも、毎日通うコースを選んだ場合は十分起こり得ます。
一方、ほとんど通学せずに卒業を目指すコースの場合は、私立でも全日制より安く済むことが多くなります。
そして、公立の通信制であれば、費用はそれよりもさらに安くなります。これは公立の通信制高校は本当に格安で、お金をかけずに高校卒業を目指せしたい方にとっては最良の選択肢です。もちろん、その分だけ単位修得に向けたサービスは手薄になるため、相応の自己管理能力が求められます。
まとめると、「通信制だから全日制より学費が安い」とは一概には言えません。公立か私立かで大きく違い、私立の中でも通学日数や方針によってさらに大きく変わります。そして、特に私立で通学日数が多いパターンは通信制でも全日制とほぼ変わらない学費がかかります。
- 全日制は一律の授業料、通信制は履修単位数やコース(通学日数)に応じた費用体系が多い
- 私立の広域通信制、特に通学コースやサポート校併用は全日制並みかそれ以上の学費になることも
- 公立の通信制は学費がさらに安い
- 「通信制=安い」とは限らず公立/私立・通学方針で大きく変わる

転学に必要な書類は?
転入学試験を受けるには、願書はもちろんのこと、それ以外に在学証明書、成績証明書、単位修得証明書といった書類を出願時に求められることがほとんどです。
これらの書類は、いま在籍している全日制高校から発行してもらうことができます。「すぐ発行してもらえる」といっても、実際には1〜2週間ほどかかることが多いです。
学校の事務室などに申請すれば発行してもらえるので、手続き自体は難しいものではありません。願書とこれらの証明書をセットにして出願するという流れになります。
これらの書類がなぜ受験に必要なのでしょうか。
転入学は、学校から学校へ籍を移す形式ですから、「今この学校に在籍している」ということを証明できなければそもそも受験できません。在学証明書が必要なのはそのためです。また、今の学校でどれだけの単位を修得しているか、残りどれだけ履修すればよいかを見たうえで受け入れ可否を定めるわけですから、成績証明書・単位修得証明書は欠かせません。
ここから先は、正直なところ普通の方が知っておく必要はない話ですが、参考までにお伝えします。
転入学の場合、学校間で直接やり取りされる書類もあります。一つは転学照会と呼ばれるもので、これは人物確認のために用いられるものですが、それほど詳しい内容は記載されていません。
もっと重要なのは、指導要録の写しです。
これは転学が決まった段階で、前の学校から新しい学校へ郵送されます。これによって、成績や出席状況をはじめとした情報が、前の学校から新しい学校へ引き継がれていきます。日本の学校は、この指導要録(の写し)をリレーしていく仕組みになっています。たとえば中学から高校に進学するときも中学から高校へ指導要録が送られます。
転入学に際しての生徒情報の引継ぎは、在学証明書等以外にも、実は学校間でこのような書類を通じても行われています。
何にせよ、在学証明書などの必要書類申請は決して複雑なものではないので、そこまで身構える必要はありません。
- 出願時には在学証明書・成績証明書・単位修得証明書が必要になることが多い
- 在籍校での発行には1〜2週間ほどかかることがある
- 学校間では転学照会と指導要録の写しがやり取りされ、成績・出席等の情報が引き継がれる
高1で0単位でも同級生と同時に卒業できる?
高校1年で不登校になり、まったく単位をとることができなかった、だけども残り2年で卒業したい。
こういうケースもよくあります。転学したところで同級生より遅れて卒業するくらいなら、いっそ高校を辞めたいといった声もたまに聞こえてきます。その際、通信制ならそれが可能なのかというと、実は極めて難しいです。
高校は3年間以上在籍しなければ卒業できませんから、あと2年は必ず在籍することになります。問題は、その2年間で国の定めた最低ラインである74単位を修得できるかどうかです。
結論からいえば、大抵の通信制高校では難しいです。
多くの通信制高校には、年間に履修できる単位数の上限があります。たとえば年間30〜36単位程度までとしている学校が多く、2年間すべての単位を履修・修得したとしても60〜72単位ほどにしかなりません。74単位に届かないことがあるのです。つまり、1年次が0単位だと、残り2年では卒業できない学校が結構多いのです。
このあたりは学則等で定めている学校が多いのですが、それは学校ごとに違いますので、検討している通信制高校に直接問い合わせてください。
- 卒業には在籍3年以上と74単位以上が必要
- 年間履修単位数の上限(30〜36単位程度)により、高1が0単位だと残り2年で間に合わない学校が多い
- 同時卒業が可能かは学校によるため直接確認する
いつ転校するのが一番損しない?
年度途中で不登校になった場合、転学すべきかどうかは時期によります。では、いつ頃までが「得」なのでしょうか。
まずは在籍高校で単位がとれそうかどうか(出席状況)はさておき、それぞれの時期において転校することの有利不利を検討していきます。
たとえば1月に不登校になった場合を考えます。
そこから慌てて通信制に移ってもその年度の単位はほとんど取れません。単位は年度ごとにしか履修も修得もできないからです。すると、もし転校してしまったら、1月までにやってきたことがすべて無駄になり、かつ残り2か月では新しい単位もほとんど取れる見込みがありません。つまり、冬に通信制へ移ることにはあまりメリットがないのです。
では、いつまでなら得するのか。おおざっぱにいえば、秋までです。
9~11月の転入学ならまだそこからでも、新しい通信制高校で単位が修得できるかもしれません。12月あたりからだんだん厳しくなり、1月ともなれば、このタイミングで転学の相談をしても「次年度の4月からどうぞ」という形になりがちです。
そしてもう一つ、ここに加味しなければいけない大事な観点があります。本人の出席状況です。もう少し正確にいうと、今の在籍校で今年度の単位が取れそうかどうかです。
前回の記事をご覧いただきたいのですが、未履修(欠課が3分の1を超えた状態)になると、その科目の単位は絶対に取れません。成績がどれだけ良くなろうともう取れないのです。
欠課時数が増えていく中で、未履修扱いとなる科目の数が増えていき、今年度0単位になることが確定したら、もう移っても問題ありません。その年度、その学校に残るメリットがほぼないからです。
一方で、未修得の科目、つまり成績が悪くて評定1がつきそうというケースであったり、事情によって2〜3科目だけ未履修になってしまうというケースであれば、残るメリットは大きいです。
どうしても出席できない科目があって、その科目だけ未履修になり留年が決まっている——そういう場合は、在籍を続けることがおススメです。他の科目は履修も修得もしてその年度の単位をきちんと取る。そして年度が替わるタイミング、3月末で転学するのがもっとも合理的です。
誤解をまねいてはいけないので、もう一度、判断の軸をはっきりと書きます。
通信制に転学する場合、転学先でその年度の単位がとれるかどうかは時期によります。秋なら多少はとれるが冬ならとれないといったところが多いようです。このあたりは学校にもよるのでいろいろな学校にあたってみて、相談してみてください。
そして、在籍校0単位になる未履修状態が確定した瞬間に、基本的には転学したほうが得になります。ところが、中途半端にでも単位が取れるのなら、在籍し続けるほうが(多くの場合は)得です。それは留年が確定している場合も同じです。在籍し続けてその年度の単位を取り、年度が切り替わるタイミングでの転学を考えましょう。
- 秋(9〜11月)までの転入は意味があるが、12月以降は厳しく、1月なら実質的に翌4月の転学になる
- 在籍校で今年度0単位が確定(未履修の拡大)したら早く移るほうが得
- 一部でも単位が取れるなら、留年確定でも年度末まで在籍して単位を取ってから移るのがおすすめ

通信制高校に移ると何を失う?
最後に、多くの方が必ず悩むことについてお話しします。通信制に転学して失うものは何でしょうか。
高校生は繊細です。「私はもう普通の高校生活を送れないんだ」と布団の中で泣いたりすることも多くあります。これまで築いてきた友人関係などがすべてリセットされる、当たり前に経験できると思っていた青春が経験できなくなる。
そうした考えに陥って気持ちが落ち込むのです。こうした心理的な喪失感は深刻ではあるものの、本人の人生についてまわる現実的なメリット・デメリットとはまた別物です。ここでは現実に失うものの方を説明していきます。
まず、通信制高校に転校しても卒業できないのではないかという心配をされている方が多くいます。確かに全日制に比べれば通信制の方が卒業できない生徒は多いでしょう。ですが、通っている生徒の資質をふまえていうなら、昨今の通信制高校はかなり多くの生徒が卒業できています。
気持ちを切り替えることさえできれば、全日制高校にある時期まで通うことができた生徒ならば多くが卒業できるでしょう。
中退率という指標は実は簡単に出せるものではないのですが、とりあえず通信制高校を中退する生徒はそれなりにいます。しかし、「通信制に行ったところでどうせ卒業できない」というほどではありません。結構な割合の生徒がきちんと卒業し、高校卒業の資格を得ています。つまり、通信制高校に転学したところで高校卒業資格を失うわけではありません。
現実的に失うといえるのは、卒業後の進路です。
通信制高校は全日制高校よりも大学進学率が低いです。令和7年度の学校基本調査と呼ばれる最も文科省が実施している信頼度の高い調査をもとに作成したものがこちらです。

まず目につくのは大学進学率の差です。通信制と全日制・定時制高校の卒業生では、大学進学率が2倍近く異なります。
しかし、もっと重要なのは次のことです。通信制高校の卒業生は、大学にも専門学校にも進学せず、就職もしていない「その他」の割合が高いのです。
通信制はおよそ26%、全日制・定時制はおよそ5%です。卒業はしたけれど、その先が何も決まっていない状態の人たちが、通信制高校には全日制よりずっと多くいるということです。
通信制高校への転学で失うものは、ようするにこれです。
ところが、学校に通えない状態で苦しんでいる本人にこの話をしても、今はまだあまりピンとこないでしょう。本人が気にしているのは、友達がいなくなるんじゃないか、新しい友達ができないんじゃないか、体育祭や文化祭で青春したかったのに、といったことです。多くの事例をみてきたので、そうしたことは重々承知しています。
しかし、親が見なければいけないのはそこではありません。
保護者がデメリットとして直視すべきなのは進路の部分です。もちろん、大学への進学が不可能になるというほどのものではありません。ですが、大きな違いがあることも事実なのです。
まとめると、通信制に転学して失うのは高校卒業資格ではありません。高校卒業資格は同等です。問題は、卒業後の進路なのです。
- 通信制高校の卒業自体はそこまで難しくない(多くの生徒が卒業できている)
- 課題は卒業後の進路で、進学も就職もしない層の割合が全日制と大きく違う
- 保護者は本人が気にする学校生活の面だけでなく進路の面を見るべき
まとめ
全日制から転校するかどうかは極めて難しい問題です。本記事で述べてきたとおり、転校先は通信制だけではありませんし、本人の状況だけでなく、動く時期と単位の状況によって適切な選択はまったく変わります。
この複雑な問題について、できるだけ真摯に解説したつもりです。
前回の記事もそうですが、今回の記事にもまた、私が検索する限りではインターネット上に正解が載っていない問題が多く含まれています。他の記事は、通信制高校の関係者が書いた「全日制高校から通信制に移るべき」という結論ありきで書かれたものであったり、学校内部の事情を知らないで書かれたものであったりします。本記事はそうしたものとは一線を画し、現実の問題について網羅的に書いたつもりです。
それでもなお、疑問が残る方もいらっしゃることでしょう。
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皆様の進路が善きものになることを願っております。

~オンラインで勉強を続けたい高校生、募集中~
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