【学校×親 往復書簡】不登校をめぐるすれ違い①:学校行事への参加

今回のコラボ相手

Koguma

このコラボ記事は、不登校のお子さんの子育てについて発信しているブロガー、Kogumaさんとの往復書簡です。お子さんの不登校に向き合う日々の中で感じたことを、率直で温かい筆致で綴っていらっしゃる方です。

-この記事について-

このたび、不登校のお子さんの子育てについてブログで発信されているKogumaさんとご縁があり、コラボ記事としてこの企画をご一緒させていただくことになりました。

テーマは、「不登校の子どもをめぐって、学校と保護者の間で起きるすれ違い」。Kogumaさんに、ご自身の体験と感じていらしたことを先に書いていただき、それを受けて私が元教員として返信を書く、という往復書簡の形式です。

今回の第1回のテーマは「学校行事への参加」。不登校のお子さんと学校行事というのは、多くのご家庭が悩まれているテーマではないかと思います。

まずはKogumaさんの記事を先にお読みください。

【不登校親×元教員】~「無理しなくていい」のにしんどいのはなぜ?

お読みいただいた上で、”学校側からの返答”にあたる以下の記事を読んでいただければと思います。


返信:「行事に来てね」の裏で、教員は何を考えていたのか

Kogumaさんの記事を読ませていただいて、返信を書くために、私自身が教員だった頃のことをずいぶんと思い出しました。

早朝5時の子ども部屋、ぽつんと置かれたボストンバッグ。あの情景の向こう側で、当時の担任もまた、どこかで胸を痛めていたのではないかと思います。

今回は、Kogumaさんの記事への返信として、学校側から見えていた景色をお話しします。

完全な正解を提示するつもりはありません。ただ、反対側の景色を共有することで、すれ違いの構造が少しでも見えやすくなればと思っています。

教員は行事に「来てほしい」と思っているのか

まず、おそらく保護者の方が一番気になるであろう問いから始めます。

教員は、不登校のお子さんに行事に来てほしいと思っているのか。

おおむねその通りですが、その度合いは教員によって本当にさまざまで、一概には言えません。

クラス全員が揃うことに心から喜びを感じる先生もいます。例えば、クラス全員が揃った行事の集合写真をデスクトップの壁紙にしている教員などですね。そういう方にとっては、一人でも欠けた状態はやはり寂しいし、揃ってほしいという気持ちは嘘偽りなく本物です。

一方で、私個人の感覚を正直に言うと、業務として冷静に考えた時に、不登校のお子さんが行事に参加するかしないかで、教員に直接的な損得はほとんどありません。不登校生徒の行事対応は大変ではあるのですが、同時に、すべての生徒に平等に教育機会が与えられるべきだという意識を根底にもっています。単にそれだけで、どちらが嬉しいとも嬉しくないともいえません。

教員の「ぜひ来てね」という言葉の背景には、純粋な感情と、業務上の倫理観や計算と、その両方が同時に存在しているということになりますね。

そのどちらが前面に出るかは、教員によっても状況によっても違います。だから保護者の方からは、教員が何を考えているのかが読み取りにくいのでしょう。

ここに、すれ違いの一つ目の原因があるのだと思います。

修学旅行から再登校できた子のこと

学校が参加を促す原因について、もう少し詳しくご説明します。

もう10年以上前になりますが、私自身、修学旅行(それも海外)をきっかけに登校できるようになった不登校の生徒の担任をしたことがあります

学校としては、いきなり修学旅行に参加してもらうのは、正直なところ、かなり怖い判断でした。事前学習をしていないという安全面のこともあります。遠方に連れて行った先で「やっぱり帰りたい」と言われたらどうするのか、という不安は本当にありました。

それでも、本人が「行きたい」と言ったので家庭や管理職と話し合いをした結果、連れて行くことにしました。そして無事に旅行を終えた後、その子は学校に登校できるようになりました。

うれしかったです。あの時の選択は間違っていなかったと、今でも思います。

こういう経験を持っている教員は、たぶん少なくありません。だから不登校のお子さんにも「参加したらどうでしょうか」と声をかける。この子にとっても、再登校のきっかけになるかもしれないから、という気持ちで。これは純粋な善意です。

それだけでなく、教員には、在籍している生徒はみんな平等に扱いたい、全員に意識を向けたいという思いがあります。不登校だからといって「君はこの行事に来る権利はないよ」なんて思っていません。むしろ、その逆をやろうとして「全然気兼ねなく来てね」「友達も待ってるよ」と声をかける。

ところが、この善意が結果的にプッシュしすぎてしまっているのです。

Kogumaさんの記事で娘さんが感じていた「先生もお母さんもみんな『行け』って言っているように感じる」というのは、まさにこの構造が生んだ結果だと思います。

いっそ、事務的に「この日に行事があります、1ヶ月前までに欠席連絡をいただければキャンセル料は発生しません」とだけ伝えれば済むのか。

仕事としてはそちらの方がよほど簡単です。でも、それはそれで「冷たい対応をされた」と受け取る保護者の方は必ずいらっしゃる。そうした経験も少なからずありますし。

つまり「ぜひ来てね」と「来なくていいですよ」のどちらに振っても、誰かを傷つける可能性がある。ここに、教員側の塩梅の難しさがあります。

「欠席します」の早期連絡が、実はありがたい理由

ここまで読むと、教員は基本的に善意や倫理観で参加を促すものだと思われるかもしれません。ですが、必ずしもそうとも言い切れません。

もう少し上のレイヤーから見るとまた別の景色があります。

行事責任者(学年行事なら学年主任など)の立場になると、行事の最大の目標はまず「全員を安全に連れて帰ってくること」になります。そうすると、不登校のお子さんが参加するかどうかという不確定要素は、運営側にとっては悩ましい変数になってきます。班分けが直前で変わるかもしれない等々。

事前学習にしても、行き先の歴史を学ぶといった内容だけではなく、新幹線に乗るときの注意事項、宿での過ごし方、集合時間や点呼の手順など、集団行動の練習も含まれています。

信じられないかもしれませんが、新幹線の乗車練習を実際にやっている学校もあるそうです。そこまでするのは、当日に乗車できない子が出たり、発車時刻に間に合わなかったりすると、鉄道会社に大きな迷惑をかける事態になりかねないからです。

不登校のお子さんは、こうした事前学習に参加できていないことが多いので、当日に何かトラブルが起きるのではないかという不安を、運営側は常に持っています。

そしてもう1つが、Kogumaさんの記事にも出てきたキャンセル料の問題です。

日帰りや一泊程度ならまだいいのですが、長期の宿泊行事や海外研修のようなものになると、キャンセル料は一気に高額になりますし、しかも1ヶ月前くらいから発生することが多い。

教員としては、もちろん全員に参加する権利があると思っていますし、できる限り参加するべきだとも思っています。ただ、運営上の負担という意味では、参加の可否がギリギリまで決まらないことの方が、正直なところ手間もリスクも大きいのです。

だからこそ、「うちの子は参加しません」という判断を早めに伝えていただけることは、運営側にとって非常にありがたいことです。

直前でキャンセルになると、宿泊費は半額だけ戻ってきた、新幹線の切符は全額かかった、といった複雑な処理が発生します。旅行代理店と尋常でない数のやり取りをすることになります。早い段階で欠席が確定していれば、こうした煩雑さがぐっと減りますし、班分けなどもシンプルに進みます。

つまり、「参加しません」と伝えることが学校に対して失礼かというと、まったくそんなことはありません。むしろ、学校の事情まで気遣ってくださったのかもしれないと思うくらいです。もし今迷っていらっしゃる保護者の方がいれば、安心していただきたいと思います。

正解はない。どの選択をしても、傷つく可能性は残る

Kogumaさんは記事の後半で、「今の私なら娘の気持ちを代弁して、事前に欠席を伝える」と書かれていました。これは1つの誠実な答えだと思います。

ただ、元教員として正直に申し上げると、この手のことに「正解」はないと思っています。行事への参加というのは、蓋を開けてみないとわからないところがあるからです。

参加できそうにないと思っても、当日元気に参加できたケースもあれば、前日夜まで楽しみと言っていたのに当日いきなり起きてこなくなったケースもあります。参加したことで子どもがすごくいい体験をすることもあれば、逆にすごく傷ついて帰ってくることもあります。

事前にどちらが起こるかは、誰にも予測できません。後から振り返ったら正解の選択肢はあるのですが、それを事前に知ることはできません。

そして、決断を本人にさせないのもよくない。あとから「あの時、自分に決めさせてくれなかった」と言われるかもしれない。

だからといって自己決定にゆだねるのが万能なのか。本人に決めさせる、でも本人も判断材料が足りないし、その結果で傷つくかもしれない。必ずしもそうとも言い切れない。

子育て全般に言えることかもしれませんが、何をやっても子どもを傷つける可能性は残ります。これが行事問題の本質なのだと思います。

温かい言葉より「事実の共有」がベター

ただ、Kogumaさんの記事を読んでいて、唯一「もう少し良くできるかもしれない」と感じたのは、学校側が最初から前提を正直に共有することかもしれません。

「学校としては、行事への参加は強制ではありません」
「参加が、このお子さんにとって良い経験になるか、逆に傷つく経験になるかは、正直なところ事前には誰にもわかりません」
「どちらの決断をしても、学校としては尊重します」

こういったことを、最初にすべて共有しておく。そうすれば、保護者の方も「先生に促されているから参加させなきゃ」というプレッシャーから少し解放されるかもしれません。

もちろん、この伝え方にも弱点があります。それは「ドライすぎる」という点です。

先述したように、「心が通っていない」「寄り添う姿勢が足りない」といった批判を受ける可能性があるんですよね。だから、多くの教員は「もっと気持ちに寄り添う形で伝えなければ」と考えて、「ぜひ来てね、友達も待ってるよ」という温かい言い方を選ぶのだと思います。

ただ、私自身の経験から言えば、この場面ではむしろドライに伝える方が、結果的には相手のためになるという感覚があります。温かい言葉が、結果的にプレッシャーになってしまうくらいなら、事実を淡々と共有した方が、みんながすれ違わずに済むのだと。

そんなふうに考えています。

余談:行事全員参加の限界と「体験格差」のジレンマ

最後に、少しだけ話は逸れますが、そこから少し踏み込んだ教育論を書かせてください。

現在、不登校の児童生徒は過去最多を更新し続けています。30人のクラスに2〜3人は不登校、という状況も珍しくありません。こういう状況で、基本全員参加の宿泊行事を、高額の費用をかけて維持し続けるということ自体が、冷静に考えてかなり無理が出てきているのではないかと、私は感じています。

これまでの学校は、多様な子どもを無理に同じ集団としてまとめようとして、そこに膨大なエネルギーを割いてきました。学校行事はその最たるもので、現代の状況にはだんだん合わなくなってきていると感じます。

維持しようとすればするほど、運営の負担が増していく。全員参加をやめる、あるいは行事ごと減らすという決断があってもいいのではないか、と個人的には思っています。(実際、私が立ち上げたこのフリースクールはそういう方針です。)

ところが、これは単純な話ではありません。

教育の世界では、「体験格差」という言葉が流行っています。子どもが置かれた環境によって、人生で体験できることの差が大きく生まれてしまっている――という問題意識です。

飛行機に乗ったことがない子、海を見たことがない子、博物館に行ったことがない子、サッカーをしたことがない子、生演奏を聴いたことがない子。経済的に恵まれた家庭の子は、家族旅行やキャンプや美術館めぐりで自然に経験を積むけれど、そうでない家庭の子は学校がそれを提供しなければ一生その機会がないかもしれない。

この視点から見ると、学校行事はむしろ削ってはいけない、全員に体験の機会を保証するために学校が担うべき役割だ、という結論になります。私の「行事を減らすべき」という意見とは、真逆の方向です。

ですので、教育業界全体で「行事を減らすべき」という方向に一枚岩になれるとは思えません。むしろ逆の立場の声もとても強い。

もっといえば、不登校の子どもたちも、自身が参加できない可能性が高いにもかかわらず、全員参加の行事を望んでいたりします。彼らは、漫画やアニメでみたような盛り上がる体育祭や文化祭を経験したいという強い渇望を抱いています。だからこそ、それが充足されなくて苦しんでいるのです。彼らは素朴に「青春」を求めていて、行事を無くすことなど望んでいなかったりします(人によりますが)。

結局のところ、行事参加において「誰も悪くないのに、それでもすれ違ってしまう」という構造は、個々の家庭と学校の間だけでなく、学校教育という営みの中にも個人の望みの中にも埋め込まれているのかもしれません。

だからこそ、私たち個々人にできるのは、お互いの立場から見えている景色を共有して、「ああ、そういうことだったのか」と少しでも理解し合うことなのだろうと思います。

ということで長くなってしまいましたが、以上が学校行事の裏側でした。


■ 進路に悩む不登校の中高生、募集中

ということで、今回は実際に不登校のお子さまを育てた経験のある方からとの往復書簡をお送りしました。

行事参加は悩ましいテーマの1つですが、一方で、私は「行事より進路の方が大切」という意識をもっています。ありていにいえば、学校教育などしょせんはチュートリアルモードにすぎない、その後が大丈夫なら気にする必要はないという立場です。

そのような考えのもと、私たちSchorbitは、中学・高校それぞれの段階で自宅からの受験を支援しています。

中学生向け、高校受験対策のSchorbit REBOOT
高校年代向け、大学受験対策のSchorbit

この2つで、進路に悩む不登校の子どもを再び軌道にのせるためのサポートを行います。

詳しくは該当する画像をクリックしてください。皆様の参加を心よりお待ちしております。