不登校の中学生が定期テストだけ受けたら内申点はどうなる? 別室受験や追試験の扱いも元教員が解説

要約:不登校の中学生と定期テストのポイント

定期テストだけを受けても通知表の成績が大きく上がることはあまりない。平均点が60点のテストで80点を取ったとしても、3観点で評価するため評定はだいたい2か3になる
実技教科はさらに取り返しにくい。評価の材料が授業の時間の中でしか取れないため、筆記テストの点数が良くても良い成績はつきようがない
別室で受けたからといって採点で不利になることはなく、学校側が別室受験を嫌がることもない。前日や当日の朝の申し出でも間に合うことが多い
日時をずらして受けるのは追試験であって別室受験ではない。追試験が成績評価の材料に入るかどうかは学校ごとの運用によって分かれるため、直接確認する必要がある

「定期テストだけでも受けさせたい」と考えたとき

不登校の子どもの中には、教室で授業を受け続けるのは厳しいけれど、定期テストくらいなら受けられる。テストのときだけなら教室に入れる。教室は無理でも別室でなら受けられそう。そういう段階のお子さんも少なくありません。

小学生ならテストを受けるかどうかはそこまで深刻な問題ではありませんが、中学生になると高校受験が控えています。進路に関わるから「何とかテストだけでも受けたらどうか」という話に、家庭でも学校でもなりがちです。

ところが、そこで次の疑問が浮かびます。

「それは意味があるのか。テストだけ受けたら通知表の成績はどうなるのか。結果として内申点はどうなるのか」

私が調べた限りでは、インターネット上に、この疑問に正しく答えた記事は見当たりません。

先に答えを書いてしまうと、定期テストだけを受けても、通知表の成績が大きく上がることはあまりありません。

それでも受ける意味はあります。内申点とは別のところに、です。

私は長く教員をしていました。中学校や高校で教壇に立ち、成績評価を「つける側」だった人間です。高校入試を実施する側も経験しています。

この記事では、そうした経験を踏まえて、中学生がテストだけを受けた場合に成績がどうなるのか、別室で受けると何が変わるのか、時間や日をずらして受ける場合はどう扱われるのかといった事柄について、制度と実態から説明していきます。

なお、学校側の対応は全国で統一されているわけではありません。「絶対にこうなる」と言い切れない部分を多く含みます。特に対応がばらけそうな事柄についてはそのように書きます。

テストだけ受けても、通知表の成績はそこまで上がらない

まず関連用語を理解しておきましょう。

生徒本人や親(保護者)が知る成績とは、通知表に載っている学期ごとの数字のことです。数学が3、英語が4、といったあの数字です。

そして学年末の成績が、基本的に「指導要録」という学校の公式な記録に載ります。高校受験の際には、その指導要録をもとに「調査書」という書類が作られ、そこに各教科の評定が記載されます。この調査書の評定が、俗に内申点と呼ばれているものです。調査書のことを内申書と言う人もいます。

ざっくりいえば、通知表に並んでいる数字は、最終的に受験に影響する数字に引き継がれていきます。そのため、本人や親が通知表の成績を気にするのは、的外れではありません。

そのうえで、定期試験がその数字に対してどれだけの力を持っているか。

教科によって違いますが、決定的な力はありません。

具体的に書きます。平均点が60点のテストで、不登校の中学生が定期テストだけ受けて80点を取ったとします。それでも、つく評定はだいたい2か3になってしまいます。

平均を20点も上回っているのに2か3。ここに納得がいかない方は多いと思います。

なぜそうなるのか。次の章で説明します。

なぜ上がらないのか——中学の成績は3つの観点でつけている

中学校の成績のつけ方は、国が統一して定めています。教員が好きな基準で数字を割り振っているわけではありません。

各教科の学習状況を3つの観点に分けて評価し、それぞれA・B・Cの3段階をつける。そのうえで、それらを総括して1から5までの5段階の評定を出す。この手順が決まっています。

3つの観点は次のとおりです。

  • 知識・技能
  • 思考・判断・表現
  • 主体的に学習に取り組む態度

定期テストが関係してくるのはおおむね最初の2つだけです。

しかも、その2つがテストだけで決まるわけでもありません。授業中の様子、提出物、小テストのようなもの。これら2つの観点さえ、そうした複数の材料を合わせて判断しています。体育や音楽といった実技教科は言うに及ばず、数学や国語といったいわゆる座学の教科でも同様です。

よく誤解されている方がいますが、「テストの点数が良ければ知識・技能が自動的にAになる」というほど簡単な話ではないのです。

そして厄介なのが3つ目の観点、「主体的に学習に取り組む態度」です。

この観点はテストの点数とはだいたい関係がありません。だから不登校で特に評価する材料がなければ、Cがつきます。

したがって、不登校の中学生がテストだけ受けた場合は以下のような評価になります。

テストの点数が良くても、それだけで取れるのは3つの観点のうち一部で、大抵はB・B・Cといったところです。A・A・Cのような極端な形にはなかなかなりませんし、仮になったとしても、そこから5がつくことはほとんどありません。

授業に出ていないというだけで、学力が高くても4や5はほぼつかない。これが現行の成績評価の仕組みです。

だからテストだけ受けても内申点は簡単に上がりません。

念のため書き添えますが、これは子どもの努力を否定する話ではありません。ただの制度の話です。教員が冷たいわけでも努力を見ていないわけでもありません。国が定めた手順で数字を出すと、材料に抜けがある以上こうなるというだけのことです。

不登校で通知表にオール1が並ぶ仕組みそのものについては、別の記事で詳しく書いています。

では内申点を上げたいならどうするか

内申点を上げる方法も書いておきます。

これに関しては、ごく一般的な方法になってしまいます。授業に出席して、授業中の課題をこなす。提出物を出す。例えば理科なら実験に参加し、その後にレポートを出す。そのうえで定期テストで高得点をとる。

これらの材料が全部そろって、はじめて4や5に届きます。定期テストはそのうちの1つでしかないのです。

実技教科はテストで取り返せる部分がさらに少ない

座学である5教科と実技教科では事情がかなり違います。内申点には実技教科の成績も含まれますので、こちらも見ていきましょう。

体育、音楽、美術、技術・家庭といった実技系の教科は、そもそも筆記テストがないことも少なくありません。あったとしても、評価全体に占める比重はそこまで大きくありません。

これらの教科で評価の材料になるのは、授業の時間の中でしか取れないものだからです。

マット運動で指定された技をやる。リコーダーで指定された曲を吹く。ミシンでエプロンを縫い上げる。

こうした材料が集まっていない限り、筆記テストの点数が良くても良い成績はつきようがありません。

つまり、定期テストを受けて多少なりとも取り返せるのは、5教科の側です。実技4教科はテストを受けても埋まりにくい。

厄介なことに、高校受験の内申点の計算では、むしろ実技4教科に重みをかける都道府県があります。何倍にするかは県ごとに違うのでここでは書きません。しかし、実技教科の成績はそれなりに重要であることを知っておいてください。

なお、都道府県ごとの仕組みについては、記事の後半で案内します。

別室で受けても採点で不利になることはない

ここまで読むと、絶望的な気持ちになった方もいるかもしれません。テストで良い点をとったところでそこまで内申点が上がらないのか、と。

ただ、ここまでの話はあくまで「内申点は上がりにくい」というだけのことです。定期テストを受ける意味はあります(これについても後述します)。無意味だからと受けずに済ませてしまわず、ぜひ受けてください。

そのうえで受け方の話をします。例えば、教室で受けるか別室で受けるかという点についてですが、この辺りもどうやら誤解が多いようなので詳しく説明していきます。

別室受験は珍しい受け方ではない

多くの学校では、正規の教室に入れなくても、別室でテストを受けることができます。相談室、空いている教室などです。体調不良の生徒と一緒に養護教諭監督のもと、保健室で受験するという学校もあります。

これは特に法令に定めがあるものではなく、学校ごとの運用です。だから必ずそのような対応があるわけではありません。人手が不足していれば実施できません。

とはいえ、別室受験そのものは珍しい受け方ではありません。教員はそうした対応のことも頭にありますし、不登校だけどテストは受けられそうな生徒がいたとしたら、こちらから切り出すまでもなく、学校側から別室受験を勧めてくることも多いでしょう。

ですから、別室のほうが良さそうだと思うなら遠慮せずにそう伝えてください。学校側にとってはまったく迷惑ではありません。

別室受験は「一人で受けられる」という意味ではない

ここも誤解している方がいらっしゃるかもしれません。

別室受験というのは、一般に、「通常の教室で受けられない生徒を別の部屋に集めて受けさせる」という運用を指します。一人ずつ個室で受けるという意味ではありません。

考えてみればすぐわかることで、別室受験の希望者が10人出たときに、10部屋を用意して監督を10人つけるようなことは通常の学校の人員では不可能です。

そのため、実態としては「別室受験の部屋」という枠が1つあるというイメージになります。その部屋の中では、生徒によって受ける科目が違うこともあるので、別々に問題を配付するといった対応をしていることが多いです。

もちろん学校によって事情は違うでしょうが、私が知る限り、一人ずつ別の部屋と監督を用意している学校は見たことがありません。

いつまでに頼めばよいか

早いほうが良いのは確かです。試験の運営を担当するのは教務と呼ばれる校務分掌で、そこに早めに話を通しておいた方がスムーズに進むからです。

ただし、前日に申し出があっても、多くの学校では間に合います。当日の朝でも、かなり大変ではありますが、間に合うことのほうが多いです。

理由は先ほど書いたとおりです。別室受験の部屋という枠がもともと用意されているので、そこに一人増えても運営は大きく変わらないからです。

「今から言っても遅いだろう」と考えて言わずに済ませてしまうのはもったいないので、直前であっても遠慮なく申し出てください。

採点で不利になることはない

こちらも多くの方が気にされているようですし、誤解が広まってもいけないので、はっきり書いておきます。

別室で受けたからという理由で、同じ点数なのに低く採点されるようなことはありません。教室で受けた答案とまったく同じように一律に評価しています。採点は答案をみて○×をつける作業であって、人の名前や試験教室をみて採点の仕方を変えることはありえません。

別室で受けて困ることがあるとすれば、英語のリスニングが聞き取りにくかったという程度のことでしょうか。それも、成績を左右するほどのものではありません。

学校が別室受験を嫌がることはない

先ほども書きましたが、別室受験について、学校側に「迷惑をかけるのではないか」と気にされる方もいます。しかし学校側が別室受験を嫌がっているということはありません。

実際のところ、手間がかかるのは最初の一人を受け入れるときだけです。そこから3人が4人になろうが5人になろうが、手間はほとんど変わりません。

ただし、担任から「受けられるなら教室で受けたほうがいいよ」と勧められることはあると思います。

これは別室受験を渋っているのではなく、教室で受けられたほうが再び通常登校できる状態に近いという考えを、多くの教員が持っているからです。

日時をずらして受けるのは「追試験」であって別室受験ではない

この記事でいう別室受験とは、同じ時間帯に別の部屋で受けることを指しています。時間や日をずらして受けるものは別室受験とは言いません。そうした試験は、追試験や追考査と言ったり、後日受験と言ったり、呼び方は学校によってさまざまです。

そして、時間や日をずらした受験が可能かどうかは、学校によります。ここではっきりした結論を書くことができません。

同じ時間帯での別室受験は大抵の学校がやっています。ずらして受ける追試験はそれとは事情が違います。

もともと追試験は、忌引きや学校感染症(インフルエンザなど)での出席停止で当日に来られなかった生徒のために、後日受けられるように用意されたものです。不登校の生徒もそこにのっかることが可能な場合があります。

成績に入るかどうかは学校ごとの運用による

追試験の答案を成績評価の材料に入れるかどうか。ここは学校によってかなりばらけます。

主な分かれ目は、試験問題を回収しているかどうかです。

試験が終わったら問題冊子をすべて回収する。そして答案が返却されるまで、どんな問題が出たかを口外しないよう生徒に念を押す。そこまでの体制が取れている学校であれば、ずらして受けた分も基本的に成績評価に入れています。

一方、試験問題を回収していない学校の場合はどうか。誰かから問題を入手して、答えを覚えてから受けることができてしまいます。そのため、ずらして受けた分は成績評価に入れないことが通常です。

ただ、これはあくまでおおまかな傾向を述べただけであり、最終的には学校ごとの運用次第です。

基本は「別室でもいいから同じ時間に受ける」

そのうえでお伝えしておきたいことがあります。

学校の側から見ると、ずらして受けるというのはかなり特殊な対応です。どちらかといえば、別室であってもいいから同じ時間に受けてもらうのが基本になります。

ですから、たとえば午前中に体を起こすのが難しいという事情があって、午後や別の日にしてほしいという相談になると、これは結構厳しくなってきます。可能かもしれませんが、成績に反映されなくなったとしても運用上仕方ありません。

不登校であっても、別室受験はともかく、追試験は一般的ではありません。学校に確認するときは「日時をずらして受けた場合、成績の評価材料に入りますか」と直接確認してください。

用語の補足——「追試」と「再試験」は違う

本筋から少し外れますが、混乱している方が多いので書いておきます。

日常会話では「追試に引っかかった」といった言い方をよくします。ただ、そこで言われている追試は、厳密には高校以降の再試験を指していることがほとんどです。

追試験は受けられなかった人が後日受けるものです。再試験は、試験を受けたけれども点数が振るわず、このままでは評定に1がついてしまうという人が、それを避けるために受けるものです。

つまり、再試験は単位の認定に関わる高校の仕組みです。中学校ではほとんどの学校で実施されていません。

それでも定期テストを受ける意味はある

ここまで、テストと内申点の関係を書いてきました。ところが、定期テストは内申点のためだけにあるものではありません。

いつどこで受けるかに関係なく、試験を受けること自体には本来の意味があります。テストを受けてわからなかったことを復習し、学習の理解度を高めていくことです。

つまり、テストは集団に学力で序列をつけるための仕組みではなく、個々人が学習理解度を高めるための仕組みなのです。

3年間続けたら何が残るか

もし仮に、不登校の生徒が、テストをきっかけに学習理解度を高める行為を中学の3年間続けたとします。

通知表の成績は低いままでしょう。評価材料が足りないのですから仕方ありません。

ただ、授業には出られていなくても、定期テストのたびに範囲を勉強して、受けて、解き直す。それを繰り返したのなら、教室で授業を受けたのと遜色のない基礎学力が身についているはずです。

そうであれば、内申点が低くても高校には行けます。

それは定員割れしている不人気校の話ではありません。それなりに人気のある高校であっても、学力さえあれば、不登校でも行ける制度になっている都道府県が少なくないからです。内申点を見ずに判定するとか、内申点の不利が小さくなるようにする仕組みが各地で導入されています。

ですから、内申点を気にしすぎるあまり、それをネックに進路の希望そのものを捨ててしまう必要はありません。進学校に行きたいという目標を通知表のせいで諦める理由はないのです。

ただし、勉強しなければ諦めざるを得なくなります。学力がなければ本当に入れないからです。

重要なのは、教科書に載っている内容が正しく理解できているか否かです。成績評価ではありません。学力が通知表の数字に反映されていなくても、そこはそれほど気にしなくて構いません。

学力さえあれば受験でやり直せます。

とはいえ、こうした制度については都道府県によってまるで違います。お住まいの県がどうなっているのかは、以下のページからぜひ確認してみてください。

都道府県別の分析はこちらから

なお、休んだ日数が受験でどう扱われるかについては、こちらで詳しく書いています。

まとめ——テストは点数を競うためのものではない

授業に出ていないのにテストを受けて、点数が悪かったらどうしよう。そうした不安をお持ちの方も多くいることでしょう。

ただ、テストというのは、点数が良ければいい/悪ければダメというものではありません。自分がどれだけ理解できているかを自分で確認できるようにする機会のことです。

一般に、工業製品を作るときのテストは、壊れているところがないかを確認する作業のことです。学校のテストも同じで、本来学んでいるはずなのにまだ理解できていないところがないか、それをチェックするためのものです。

だから、わからなかったのは悪いことではないし、それはそれで仕方がありません。

大事なのは、わからなかったところに気づいて、そこを補っていこうとすることです。今は勉強の方法もいろいろあります。家から出られなくても動画などで学習は進められます。

その姿勢さえ続けられれば、不登校だからといって進路が閉ざされることはありません。そんなに心配はいりません。

~高校入試をがんばる不登校生、募集中~

ということで、今回は、不登校の中学生が定期テストだけを受けた場合に、成績や内申点がどうなるのかについて考えてきました。

ここまで読んでいただいた方にはご理解いただけたかと思うのですが、不登校の中学生が高校受験を突破するために必要なのは、無理して学校に通うことでも内申点を上げることでもありません

ひとえに、基礎学力を身につけること
特に五教科の中学内容をしっかり学ぶ(学び直す)ことに尽きます。

実は、私たちSchorbitは、高校入試に向けて自宅から勉強する中学3年生の支援プロジェクトを開始しました。

その名も、Schorbit REBOOT

不登校でも高校からはがんばりたい。
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詳しくはREBOOT | 中学3年間の学び直しプログラムをご覧ください。多くの中学生の参加お待ちしております。