【学校×親 往復書簡】不登校をめぐるすれ違い③:中高一貫校での進路相談

【学校×親 往復書簡 ③】
-この記事について-
前回に引き続き、不登校のお子さんの子育てについてブログで発信されているgrey-boyさんとご縁があり、コラボ記事としてこの企画をご一緒させていただきます。
テーマは、「不登校の子どもをめぐって、学校と保護者の間で起きるすれ違い」。grey-boyさんに、ご自身の体験と感じていらしたことを先に書いていただき、それを受けて私が元教員として返信を書く、という往復書簡の形式です。
前回、Schorbitが書いた記事はコチラになります(この中に前回のgrey-boyさんの記事へのリンクもあります)。
続編となる今回のテーマは「中高一貫校での進路相談」。不登校の状態で内部進学は可能なのか、外部を受験するか、それはいつごろ話し合うべきなのかといった話題が中心となります。
では、まずはgrey-boyさんの記事を先にお読みください。
【不登校の親✕元教員 往復書簡その2】中高一貫不登校の進学問題と学校の対応
お読みいただいた上で、”学校側からの返答”にあたる以下の記事を読んでいただければと思います。
■ 返信:中高一貫校での進路相談
grey-boyさん、記事の続編を執筆していただき、ありがとうございました。
今回の記事は、お子さんが中学2年生に進級して、担任の方が変わったところから現在に至るまでのお話ですね。
中1の時に不登校になり、そのまま中2へ進級。新しい担任の方は学年の不登校担当なのか、家庭訪問にも来てくれる方。それなのに、肝心の進路の話にはあまり踏み込んでくれない。
grey-boyさんの感じている「もうちょっと強引に話をしてくれてもいいのでは」という気持ちと、「拒否られては元も子もない」と教員を尊重する複雑な気持ちが伝わってきました。
今回の返信では、この「進路をめぐる保護者と担任のすれ違い」を中心に、教員側から見えていた景色をお話しします。
■ なぜ担任は進路の話に踏み込まない?
まずgrey-boyさんが感じている疑問。
「家庭訪問にまで来てくれるのに、なぜ進路の話に踏み込んでくれないのか」
これに対して、教員側の事情を推測してお答えします。
教員と生徒の信頼関係というのは、どうしたって、毎日顔を合わせていくなかで生まれるものです。たとえ「担任」という肩書きを持っていても、それだけで生徒がこちらの話を聞いてくれるわけではありません。
中2から、不登校の生徒の担任を引き継ぐ。これは教員側からするとかなり難しい状況です。いくら家庭訪問をしたところで、本人にとっては、たまに家にくる大人にすぎないわけです。
そんな人の言うことを参考にして、自分の人生を決められるでしょうか。
なかなか難しいだろうなと思います。
中2からの担任の方が「いきなり進路の話に踏み込まない」という選択をしているのは、おそらくそういう意図です。本人との関係を壊さないために、まずはゲームの話でも何でもいいから、顔と顔を合わせて話す時間を作る。そこから少しずつ信頼を積み上げる、という姿勢。
「拒否られては元も子もない」というgrey-boyさんの読みは、おそらく正しいです。担任の方も、たぶんそう考えていらっしゃると思います。
■ 家庭訪問以外にアプローチはないの?
そのうえで私が思うのは、「家庭訪問だけで関係を作るのは厳しいのでは」ということです。
家庭訪問ってそんなに頻繁に行くわけにはいかないですよね。月に1回も来られれば多い方じゃないでしょうか。それでは関係を作るまでに時間がかかりすぎる。
私だったら、家庭訪問以外で本人と日々連絡を取れる手段を作るかなと思います。
例えば、電話に出てもらえるならそれが一番手軽です。ただし電話での会話を得意としている子どもは、不登校に限らずほとんどいません。
それが難しいなら、学校が組織として導入しているツールの活用という選択肢もあります。学校(公立の場合は自治体)ごとに異なりますが、Google WorkspaceやMicrosoft Teams、Slack、学習向けアプリのDM機能などのことですね。
ちなみに、教員と生徒が個人的にLINE等でつながるのは当然禁止です。ですが、学校が組織として導入しているものなら問題なくて、教員のアカウントで生徒とやりとりすることができます。(ただし勤務としてなので勤務時間外のやり取りは禁止になっているところが多いです。)
テキストのやり取りでもグッドボタンを押すとかでもいいんですが、「起きましたか」レベルの軽いやり取りでも、それが日々続いていれば関係は深まります。
もちろん、これは学校の事情と教員のスタンスにもよります。こうしたツールを導入していない学校も、家庭訪問を優先する教員もいるでしょう。一律にこうすべきとは言えません。
ただ、そういう選択肢があってもいいというのが私の感覚ですし、実際にそうしてきました。(今もやっています)
■ 本人との関係づくりは慎重でも、保護者なら……
それと、本人との関係づくりと進路の話は必ずしもセットで考えなくていいと思っています。
確かに、関係が十分にできていない段階で、本人にいきなり「中学卒業後はどうするの」と聞くのは慎重になるべきです。
下手をすると、「学校から出て行けと言われているように聞こえる」と受け取られかねません。というか実際に、不登校の保護者からそういったクレームを受けた事例もきいたことがあります。
grey-boyさんが「拒否られては元も子もない」と感じる気持ちもここに通じているのでしょう。
ただ、それでも保護者に対してならそこまで遠慮する必要はありません。
子どもが不登校になってしまったことで親まで病んでしまうことは珍しくありませんが、そういった状況を除けば、保護者とは家庭訪問の場でも電話でも、進路の話は普通にできます。
むしろ、一貫校に子どもを通わせている保護者は心配性な方が多いですから、早めに方向性を共有したいと思っているはずです。
中2の段階で内部進学できなかったときの選択肢を切り出すのは早計じゃないかと思っている可能性もありますが、中3になって通えるようになれば、そのまま内部進学すればいいだけです。そうじゃない可能性も含めて、「今後のことどうお考えですか」と保護者に伺うくらいは、中2の段階で担任から切り出していい部分だと思うんです。
その辺りは、今回の担任の方の方針と私の方針で明確に違う点かもしれません。
■ 中2の段階でするべき進路の話って?
では、進路の話を切り出すとして、実際にどんな話をするべきか。
中2の段階だとまだ残り1年あります。中3の夏ごろまでに進路の方針を決めて、それ以降の三者面談で伝えてもらうというのが一般的な流れです。
内部進学の基準は、一貫校とはいえ学校ごとに本当に違うので、一概には言えません。ただ、完全不登校の状態でそのまま内部進学できる、というのはかなり珍しいケースです。
そうなると、現実的な選択肢は外部受験。
全日制(公立・私立)、定時制、通信制(公立・私立)が候補になります。学校としては、特殊な事情がない限りどこかには進学してもらいたいと思っているので、どこかのタイミングで「希望進路を決めてくださいね」と伝えてくるでしょう。
珍しいことに、私自身が勤めていた一貫校は、内部進学は全員できる前提の学校(中等教育学校)でした。なので、不登校の生徒や保護者に「進路についての決断を迫る」という場面はほとんど経験してこなかったんですよね。
その場合、不登校の生徒や保護者にはこういう話をしていました。
「内部進学はできます。ただ、進学した先の高校は全日制になります。この現状と同じ生活(不登校)を続けたら、高校では単位が取れず、留年することになります」
これは脅しではなく、事実をフラットに伝えるということです。
そのうえで、「あまり改善の見込みがないから卒業できそうな高校に入りたい、ということでしたら、他の学校を探していただいても大丈夫ですよ」と添える。
内部進学や外部受験を、勧めも止めもしない。判断は保護者と本人に委ねるという立場ですね。
そして、いわずもがなですが、進路選択というのは「希望進路を決めて終わり」ではありません。
希望する高校が決まったら、次は「そこに進学できるようにどう手助けするか」という話が始まります。これは、本人が学校に来られない状態でも、学校としてやるべき仕事だと思っています。
例えば、外部の全日制高校(それなりに受験倍率が発生している学校)を受験することになった場合。本人は家にいる状態のまま、なんとかして受験勉強を進めなきゃいけないわけです。
学校としては、「じゃあこういう勉強の仕方はどうですか」「内申点についてはこうなっています」といったアドバイスや支援ができる。直接勉強を教えるのは無理にしても、何らかの形で関わることは可能です。
だからこそ、進路の方向性を早めに固めるのは「得」なんですよね。動き出してからの時間が増えるので。
「中3になってから考えればいい」ではもったいない。中2のうちから「もしこういう進路だったらこういう準備が必要ですね」と話をしておくと、いざ動き出すときにスムーズです。
■ 案外、1年や2年抜けても復帰は可能かも
grey-boyさんの記事の中で、こういう不安が書かれていました。
「勉強の進みの早い中高一貫の進学校では、息子のように1年半も不登校を続けていたら、もはや、戻ろうと思っても戻れない」
これは、本当によく分かる不安です。実際、大変でしょう。
でも、不可能ではないと私は思っています。
例として、1年間の海外留学から戻ってきた生徒のことを考えてみてください。1年間、日本のカリキュラムが完全に抜けた状態で帰国し、進級した学年に編入することがあります。
数学でいえば、2次関数を勉強していない状態で三角関数の学習が始まるみたいなことになります。当然、定期テストは散々な結果になります。授業もついていけません。
でも、そうした子は「ついていけない前提」で堂々と授業を受けるんですよね。そうして1年くらい経つと、徐々に日本のカリキュラムに馴染んでいきます。もちろん、留学していた分の別の力(語学力など)は、その間に身についている。
不登校からの復帰も、これと近い形で可能なんです。
実際、私自身が一貫校で働いていたとき、印象的なケースがありました。中2から中3まで、2年間ずっと不登校だった男子生徒が、高1の段階で急に学校に通えるようになったんです。
彼の場合、復帰のカギは友達でした。
彼は中1の頃にちゃんと友達ができていたんですね。その友達との関係が不登校の2年間でも完全には切れていなかった。だから高1になって学校に戻ったとき、すぐに居場所があった。
正直にいって、その友達も勉強熱心なタイプの子ではありませんでした。放課後にゲームセンターに寄る仲間って感じで、楽しく過ごしている感じでした。
2年間のブランクがあって教室に戻ってきた生徒についていうと、勉強は当然、ついていけなかったです。でも、本人も周りも「しょうがないよね」という感じで受け止めて、その子は学校に通い続け、最終的には卒業もしていきました。
ですから、基本的に不登校でも復帰できるルートはあるにはあります。ほとんどの学校は授業についていけないなら出ていけということはありませんし(※通常の進級の話であって内部進学の話は別です)、テストで赤点とりながらでも何とか単位認定して卒業できるように協力してくれます。
少しそれますが、この辺りは男女で傾向の違いもあるかもしれません。
これはあくまで私の印象ですが、女子生徒の場合、人間関係をきっかけとした不登校の比率が男子生徒と比べて高いです。
そして、人間関係が原因の不登校は、その問題自体が解消されない限り、なかなか改善しづらい傾向があります。
一方で、男子生徒の場合、最大の原因が人間関係ではなかったりします。その場合、ふとしたタイミングで学校に登校できるようになることも少なくありません。
例えば友達に誘われたからとかで、学校に居場所があるなら、「まあ暇だし行ってみるか」というノリで学校にくるとか。先ほどお話ししたケースもまさにそんな感じでした。
grey-boyさんのケースでも、中3から復帰するというシナリオは可能性としてはあるんじゃないかと思います。無理に促すわけではありませんが。
■ 高校進学への不安について
それと、「高校進学への不安」についても少しお話しさせてください。入試制度のことではなくて、「基礎学力が抜けた状態で高校に進学する不安」ということです。
「中1の前半までしか授業を受けていない状態で、高校入試を乗り越えられるのか」
入試についていうなら、案外、問題ありません。
世の中の高校入試って、実はそんなにまともに勉強しないまま受験する人もかなりいます。そういう人たちもちゃんと高校生になっています。
地元の公立中学校でも「学校には通っているけれど授業はほとんど聞いていない」「中学2年間ぼーっと過ごしてしまった」というような中学生は、本当にたくさんいます。学力という面では実は不登校でまったく勉強してこなかった生徒と大差ありません。
そういう子たちが中3になってから塾に通い始めて、なんとか受験を乗り越える、高校入試とはそういうものです。
つまり、中1の途中までしか授業を受けていない生徒の学力は、実は世間一般の中学生の状況と比べて、それほどイレギュラーじゃないんです。
ましてや、一貫校で受けていた授業は先取り型なので、そこで遅れたといっても、本来の意味の「中学の勉強の遅れ」とは言えないケースがほとんどです。
なので、中3から普通に勉強を再開すれば、一般的な高校入試の受験学力は十分に身につくことでしょう。
高校に入っても勉強についていけず、単位を落としまくるのではといった心配も不要です。それなりの進学校(全日制の進学校)でなければ、基礎が身についていない状態でも普通に勉強していれば単位はとれます。
ただし、もしお子さんが将来、高校やその先の大学でも勉強を続けていきたいと思うなら、中学の内容は基礎なので、分からないまま放置してはいけません。どこかのタイミングで勉強し直す必要はあります。
でも、それは別に高校に入学してからでも遅くないです。
■ 最後に ― 学校との相性とこれから
ここまで、進路の話、復帰の可能性、高校入試や進学後の話と、いろいろお話ししてきました。
最後にひとつ、そもそもお子さんと学校との相性という点で気になったことをお伝えしておきます。
文章を通して、「課題」という言葉がよく出てくるんですよね。
ところが前回も触れたように、「課題を出さないまま中学校に通って卒業する」というのは、世間一般ではごく普通のことなんですよ。ほとんどの中学校では当たり前のように起きていること。
もしお子さんの通われる学校が、学習管理をウリにしていて、「課題を期日通りに出せない生徒は本校には残るべからず」くらいの勢いで徹底しているとしたら、それはかなり珍しいスタンスです。そして、そのスタンスとお子さんの相性が根本的に合わなかったのかもしれません。
ここは個別事情なので断定的なことは言えません。ただ、文章から感じた印象としてお伝えしておきたいなと思いました。
そして、目下の悩みとしてはお子さんの進路選択ということになるのでしょう。ご家族として、本当に難しい局面にいらっしゃると思います。
ただ、イレギュラーな立場というほどではありません。
不登校の中学生は、今、本当にたくさんいます。30人クラスに2〜3人は不登校なんていう時代になりました。特殊な存在ではありませんし、そのほとんどは何らかの形で高校に進学していきます。
全日制に進む子もいれば、通信制に進む子もいる。形は様々ですが、「進む先がない」ということはありません。
そして、高校に進んだ後の人生もそれぞれの形で開かれていきます。高校生活についていえば、うまくいくこともあれば続かなくて辞めてしまうこともあります。でも、長い目で見れば、必ずどこかに道が見つかります。
中3という最後の中学時代を、お子さんと一緒に少しでも穏やかに過ごせることを、そしてその先で、お子さんが成長していく姿をgrey-boyさんがゆっくり見守れる時間が来ることを願っています。
grey-boyさん、貴重な体験を率直に書いてくださって、本当にありがとうございました。
■ 進路に悩む不登校の中高生、募集中
ということで、前回に引き続き、実際に不登校のお子さまを育てた経験のある方との往復書簡をお送りしました。
中高一貫校での不登校の特徴の1つに、いわゆる内部進学できるかどうかといった進路の問題があります。中学時点で長期間不登校が続いた場合は、内部進学は厳しくなり、外部の高校を受験することになります。
日中の時間、学校に行かないとしても、少しでも勉強を続けていればその際の選択肢は大きく変わります。私たちSchorbitの活動は、「学校に行かないままでも勉強は続けられる」という考えのもと、中学・高校それぞれの段階で自宅からの受験を支援しています。


この2つで、進路に悩む不登校の子どもを再び軌道にのせるためのサポートを行います。
詳しくは該当する画像をクリックしてください。皆様の参加を心よりお待ちしております。

