不登校からの高校入試ガイド
【静岡 編】
公立・私立の選択肢と制度を完全解説

要約:静岡県の不登校からの高校入試ポイント

【公立】静岡県の公立入試は内申点が極めて重視されており、不登校生にとって第1段階での合格は非常に困難
【公立】内申点を一切見ない長期欠席生徒選抜は、令和8年度受検者全員合格だが、実施校は県内2校2科のみと選択肢は狭い
【公立】全日制の公立高校でもかなりの数が再募集を出しており、定員割れ高校なら学力検査での勝負が現実的
【公立】単位制定時制4校はすべて実質倍率1.00〜1.03で、3年間での高校を目指す不登校生の現実的な受け皿となっている
【私立】静岡県の私立で「調査書を提出しない」一般入試は確認できず、内申不問の受験方式(オープン入試)は事実上存在しない

(※以下は2026年4月上旬時点で調査した情報を基にしています)

中学校をほとんど休んでしまった、通知表に「1」が並んでいる、出席日数の話題が出るだけで胃が痛くなる。

そのような状態で静岡県の高校入試について調べているなら、まずは現実を冷静に直視することから始めなければなりません。

正直に書きます。

静岡県は不登校を経験した生徒にとって、他県と比較して、決して戦いやすい地域とはいえません。公立も私立も、当日の学力検査だけで勝負できる枠が極めて限られており、調査書(内申点)を前提に選抜する文化が制度の中心に据えられているからです。

それでも、教育委員会の最新データを丁寧に読み解くと、絶望的な状況の中にも現実的な抜け道がいくつか残されていることがわかります。この記事では、令和8年度入試の一次資料に基づき、不登校生が静岡県で取りうる選択肢をシビアに整理しました。


■ 不登校でも静岡県の高校入試に合格できる?

「学校に行っていないから内申点がない」「欠席が多すぎて受験すらできないのではないか」という不安は、静岡県においては非常に現実的なものです。

結論から言えば、全日制高校への合格は不可能ではありませんが、他県と比べてその道筋は狭く、戦略的な割り切りが求められます。

静岡県が不登校に厳しいと言われる最大の理由は、公立・私立を問わず、当日のテストの点数よりも調査書の内容が選抜の起点になっている点にあります。作文と面接だけで合否を決めるタイプの高校や、当日点のみで合否判定される制度がほとんど存在しないため、多くの不登校生が定時制や通信制、あるいは不登校生を受け入れる特定の私立校へと絞り込まれていくのが実情です。

それでも、知っているかどうかで進路の幅が変わる制度はいくつかあります。


■ 静岡県の公立高校入試の仕組みはどうなっている?

静岡県の公立高校入試(一般選抜)は、毎年3月初旬の一発勝負で決まります。令和8年度は3月4日に5教科の学力検査、翌5日に面接、3月13日に合格発表という日程です。多くの県と異なり、内申点と面接がメインとなる入試(推薦入試などと呼ばれるもの)や、一般選抜で複数の公立高校を受験できる併願制度は存在しません。

(参照:令和8年度静岡県公立高等学校入学者選抜実施要領/静岡県教育委員会)
※こちらのページ内にPDFファイルがアップされています

共通枠の3段階選抜

公立入試の合否判定は、共通枠において以下の3段階で進みます。

段階対象者選抜資料合格割合の目安
第1段階内申点上位から共通枠定員までの受検者学力検査の合計点共通枠定員の約75%
第2段階第1段階で外れた残りの受検者調査書の学習以外の記録、面接共通枠定員の約10%
第3段階第1・第2段階で外れた残りの受検者調査書、学力検査、面接などを総合判断共通枠定員の約15%
(参照:令和8年度静岡県公立高等学校入学者選抜のあらまし/静岡県教育委員会)

この仕組みで不登校生にとって厳しいのは、3段階に分かれているにもかかわらず内申点が無関係の選抜方法がないことです。

まず、第1段階で「内申点上位者」のグループに入っていなければ、当日の学力検査でいくら高得点を取っても第1段階の合格対象に入れません。内申点という通行証を持たない受検生は、第2段階と第3段階を合わせた約25%の枠で勝負することになります。

ところが、第2段階は調査書の学習以外の記載事項と面接、第3段階も総合判断で決まる仕組みのため、ここでも内申がまったく無関係というわけではありません。

このような事情により、静岡県は、公立高校入試において厳然たる「内申点の壁」が存在する県と言えます。

内申点の計算方法と「中3だけ」というルール

静岡県の公立入試で点数化される内申点は、中学3年生の評定のみが対象で、9教科×5段階=45点満点です。3学期制の中学校の場合、中学3年生の2学期までが内申点に関わってきます。

ここが、良くも悪くも、不登校生にとって唯一の希望といえるポイントです。

中1・中2でほとんど通えていなかったとしても、中3の2学期末までに教室復帰、別室登校、あるいは定期テストの受験などを通じて評定を立て直すことができれば、入試で使われる内申点の上では事実上ハンデをリセットできる構造になっています。

逆に、中3の段階でも登校が困難で評定が「1」や斜線(評価不能)になっている場合、公立の全日制高校を狙うのは制度の正面突破では極めて難しくなります。(これは文部科学省の意向に反しており、自治体レベルでの制度改革が待たれます。)

もちろん、受験のために無理をするのは正しくありません。どうしても気持ちが前を向いていない中で、高校進学のために中学校にムリヤリ登校するのは絶対に避けるべきです。

これら内申点の仕組みについては以下のサイト(塾オンラインドットコム)に詳しく解説されています。

(参照:【静岡県の公立高校入試】内申点の計算方法!何点必要?ボーダーを徹底解説 – 塾オンラインドットコム「合格ブログ」)

また、静岡県の入試制度を現地の塾講師視点で詳しく解説した記事としては、個人ブログ「Delty Memo」の「静岡県公立入試を徹底解剖!内申・学調で出願校は決まる」が参考になります。このブログでは、中3の2学期末の成績がそのまま内申点として確定する実態や、県独自の「県学力調査(学調)」の結果が三者面談で志望校決定の材料になる慣習など、制度の外からは見えにくい部分まで踏み込んで解説されています。

(参照:Delty Memo – 静岡県公立入試を徹底解剖!内申・学調で出願校は決まる)

■ 内申点が低くても、当日のテストで逆転できる仕組みはある?

したがって、「テストさえ頑張れば合格できる」という単純な逆転劇は、静岡県では起こりにくいのが現実です。それでも、用意されている救済措置と、データから見える現実的なルートをここで整理しておきます。

長期欠席生徒選抜:強力だが選択肢は狭い

静岡県には、内申点(調査書)を一切用いずに選抜を行う「長期欠席生徒選抜」という特別選抜枠が存在します。出願資格は、欠席日数と教育支援センター等への通所等で出席扱いとなった日数の合計が、第3学年で概ね30日以上、または3年間で概ね90日以上の生徒です。

この特別選抜で受験した場合、選抜資料は調査書ではなく、自己申告書、副申書、学力検査、面接の4点になります。

調査書を一切見られないという仕組み自体は、不登校の中学生にとって極めて強力です。ところが、令和8年度の合格者数を見ると、この制度がどう機能しているかが数字ではっきり見えます。

実施校・学科受検者数合格者数実質倍率
県立伊豆総合高校土肥分校 普通科11111.00
県立天竜高校春野校舎 普通科771.00
合計18181.00
(参照:令和8年度静岡県公立高等学校入学者選抜 合格者数一覧/静岡県教育委員会)

18人受検して18人全員合格、実質倍率1.00倍。

学力検査と面接で大きな問題がなければ、出願した生徒のほぼ全員が合格しているのが実情です。確かにこの制度を利用すれば、不登校でも全日制高校に進学できます。

ところが、この制度の最大の弱点が実施校の少なさです。令和8年度に長期欠席生徒選抜を実施するのは、県立伊豆総合高校土肥分校と県立天竜高校春野校舎の2校2科のみ。

県全体の規模からするとあまりに限定的で、伊豆半島南西部や天竜地区から離れた地域に住む生徒にとっては、物理的に通える距離ではありません。土肥分校には下宿補助制度があるものの、家庭の判断としては大きな決断が必要になります。

また、偏差値帯でみてもいずれも40前後と、いわゆる進学校ではありません。これまでの指導で目にしてきた、中学不登校から全日制高校を経て大学へといった他県で多く見られる事例が生まれにくい土壌となっています。

自己申告書という制度の実際

他の手段を検討していきましょう。

長期欠席生徒選抜を実施していない高校を志望する場合、一般選抜の出願時に自己申告書を提出することができます。出願基準は長期欠席生徒選抜と同じ(中3で30日以上、または3年間で90日以上の欠席等)で、本人が記載し、厳封の上で中学校経由で志望校に提出する形です。

ただ、この書類が合否判定にどの程度の影響を持つのかは、各高校の選抜委員会の裁量に委ねられており、外部からはほとんど見えません

実施要領にも「総合的に審査する」としか書かれておらず、内申点の不足を制度上補填する仕組みではない(少なくともその保障が明示された仕組みではない)ことに注意が必要です。書類を出せば内申不足が消えるわけではない、という現実は冷静に受け止めておくべきです。

ただし、書く意味がないわけでもありません。

役割を「言い訳」と捉えるのではなく、休んでいた期間に何を考えていたか、これからどう学びたいか、という未来側の意欲を伝える書類として位置づければ、面接での話題にもつながり、第3段階の総合判断で考慮される余地は残ります。

学校裁量枠という選抜枠

もう1つ、学校裁量枠についても軽く触れておきます。

各高校が合否判定において、上述した共通枠の合否判定制度に縛られない部分、独自に最大50%まで設定できる「学校裁量枠」も存在します。ですが、基本的にこれは不登校生のための救済枠ではありません。多くの場合、スポーツや芸術での全国レベルの実績、もしくは中学校での学習成績(=内申点)を重視する観点で選抜されます。

令和8年度の合格者数を見ると、人気校の学校裁量枠Ⅱ(希望者対象)は沼津東普通科で約5.05倍、磐田西普通科で約4.28倍、富士東普通科で約2.90倍といった倍率になっており、不登校で内申に頼れない生徒が突破するには相当の学力が必要です。

そのためこの制度は、不登校の中学生にとってあまり有用ではありません。

意外な現実的ルート:定員割れの全日制

不登校生にとって、もしかするとここが最も現実的な希望になるかもしれません。

令和8年度の合格者数一覧を見ると、相当数の全日制公立が再募集を出しています。つまり、3月の一般選抜で定員に届かなかった高校がそれだけ多いということです。

主な定員割れの全日制を以下に挙げます。

高校名募集定員受検者数再募集定員
県立松崎 普通401624
県立富士宮西 普通16011446
県立御殿場南 普通16012536
県立池新田 普通1208436
県立湖西 普通1208932
県立沼津城北 普通805228
県立富士宮東 普通1209723
県立遠江総合 総合16014122
県立川根 普通402517
県立伊豆伊東 普通16014515
県立伊豆総合高校土肥分校 普通352114
(参照:令和8年度静岡県公立高等学校入学者選抜 合格者数一覧/静岡県教育委員会)

これらの高校では、内申点が低くても学力検査で平均点近くを取れれば、現実的に合格圏に入る可能性が出てきます。

共通枠の第1段階は内申点上位から並べる仕組みですが、そもそも受検者が定員を下回っている学校であれば、第2段階・第3段階に回された場合でも不合格者を出す余地が小さくなります。

ただし正直に書いておきたい注意点が2つあります。

1つ目は、定員割れしている高校の多くが郊外や過疎地域にあり、毎日の通学が物理的に大変なケースが多いこと。2つ目は、進学実績が一般的な進学校と比較して見劣りする学校も多いため、その先に大学進学を考えるなら入学後の自学努力が一段と重要になることです。

「合格しやすい=自分に合う」とは限らないので、学校見学で雰囲気を確かめてから決めることをお勧めします。


■ 不登校の「欠席日数」や「面接」はどう扱われる?

出席日数が極端に少ない生徒の家庭で必ず話題になるのが、調査書の欠席日数欄が合否にどう響くか、という質問です。実施要領に基づいて整理します。

欠席日数の扱いと出席扱い制度

調査書には欠席日数欄があり、不登校の生徒の場合はそこにある程度の数字が並びます。ただし、共通枠の第1段階は学力検査の合計点で順位を決める仕組みなので、欠席日数の多さだけで一発不合格になる構造にはなっていません。

もう一つ重要なポイントがあります。

教育支援センターやフリースクール、適応指導教室などへの通所が在籍校の校長判断で出席扱いになっている場合、その日数は欠席にはカウントされません。長期欠席生徒選抜と自己申告書の出願基準(中3で30日以上、または3年間で90日以上)も、純粋な欠席日数だけでなく出席扱い日数を含めて計算する形になっています。学校外で頑張った時間は、入試の場面でもちゃんと数えてもらえる仕組みです。

したがって、苦労するとすれば上述した「内申点の壁」が中心になります。

面接での対応

静岡県の公立高校入試の特徴として、「原則としてすべての受検生が面接を受ける」という点です。他県では、面接を実施するのは推薦入試や一部の特色ある学科だけというケースも多いですが、静岡県は異なります。

推薦入試という制度自体が存在せず、一般選抜において「1日目に5教科の学力検査、2日目に面接」という2日間の日程を全員がこなす仕組みになっています。

その志願者全員が対象となる面接ですが、実施要領によれば、調査書の記載事項と関連付けて、学習への適性、学びに向かう力、人間性、進路や趣味・特技などについての質問に口頭で答える形になっています。

面接官が不登校という過去を理由に不合格を決めることは制度上ありません。一方で、面接の評価が内申不足を劇的に覆すケースも、構造上は考えにくいのが現実です。

それでも、過去を弁解する場ではなく、これから高校で何をしたいかという未来の話を自分の言葉で語れれば、第3段階の総合判断において評価される余地は残ります。


■ 全日制以外に、不登校から通いやすい公立高校はある?

全日制公立への道が厳しい場合、現実的な選択肢として「単位制定時制」「学年制定時制」「公立通信制」「私立通信制」が視野に入ってきます。

単位制による定時制4校(三島長陵・静岡中央・ふじのくに国際・浜松大平台)

I部(午前)・II部(午後)・III部(夜間)の3部制で、自分の体調に合わせて時間帯を選べる仕組みになっています。県立三島長陵、県立静岡中央、県立ふじのくに国際、県立浜松大平台の4校が該当します。

従来の学年制の定時制(夜間のみなど)は4年かけて卒業するのが基本でしたが、「単位制」は時間割を柔軟に組めるため、3年で卒業することも可能です。ある程度通学はできそうで、3年で卒業したいという気持ちのある不登校生にとっては有力な選択肢となります。

不登校生にとって特に重要なのが、令和8年度の倍率と再募集状況です。

高校募集定員受検者数合格者数実質倍率再募集定員
県立三島長陵 普通14098951.0345
県立静岡中央 普通1801381341.0346
県立ふじのくに国際 普通12875751.0053
県立浜松大平台 普通1451121121.0033
(参照:令和8年度静岡県公立高等学校入学者選抜 合格者数一覧/静岡県教育委員会)

4校とも倍率は1.00〜1.03で、しかも再募集枠が30〜50人もあります。中学校卒業見込み者だけでなく既卒者・編入学・転入学の制度もあり、高校で挫折してしまった生徒の救済路としても機能しています。

3月の春季選抜のほかに8月の秋季選抜もあるので、年度途中で進路を立て直したい生徒にも入り口があります。

学年制による定時制(各地15校)

下田・伊豆伊東・小山・沼津工業・富士・富士宮東・清水東・静岡・科学技術・榛原・磐田南・浜松北・浜松工業・浜名・新居の15校に、全日制と併設の形で定時制課程が置かれています。

これらは主に「夜間定時制」で、全日制と比べて1日の授業時間(時限数)が少ないため、高校卒業に必要な74単位を修得するのに4年間かかる構造になっています。卒業までに1年余分にかかるとはいえ、午前中の活動が厳しい不登校生にとっては選択肢の一つに加えるとよいでしょう。

令和8年度の合格者数一覧では、これら定時制全体で総定員600に対して受検者310、合格者275、再募集325という数字になっています。

定員のほぼ半分しか埋まっておらず、多くが再募集に回っているということは、入学のハードルが高くない(というか低い)学校が多いという意味でもあります。

こうした学校は、社会人入学や年度途中からの転編入の受け皿にもなっており、選択肢として頭の片隅に置いておく価値はあります。

公立の通信制高校もある(静岡中央高校)

続いて通信制高校です。通信制というと、近年では私立の広域通信制が話題ですが、実は公立もあります。

県内唯一の公立通信制が静岡中央高校です。三島長陵高校内に東部キャンパス、新居高校内に西部キャンパスが置かれており、県東部・中部・西部のいずれからも通える形になっています。なお、こちらの高校は定時制も併設されています(すでに紹介済み)。

つながる会伊豆の記事「不登校の子の進路(伊豆地域)」でも、不登校の生徒が入学対象になっていることや、合同説明会が開催されていることが紹介されています

(参照:つながる会伊豆 – 不登校の子の進路)

ただし、いいことばかりではありません。

公立通信制は学費が抑えられる代わりに、自分で学習計画を立てて単位を取っていく負担が大きく、卒業のハードルは私立通信制よりも高めだと言われています。

サポートが手厚い私立通信制と比較した上で、自学自習が現実的に可能かどうかを冷静に判断する必要があります。


■ 不登校から静岡県の私立高校に合格するには?

つづいて私立高校(全日制)について説明していきます。

多くの都道府県で公立よりも私立の方が不登校生にとって厳しい制度となっていますが、静岡県も例外ではありません。静岡県の私立高校入試は、公立以上に「内申点と出席日数」に依存した、極めて硬直的な仕組みです。

静岡県の私立入試の基本日程と二重のセーフティネット

(公社)静岡県私学協会のサイト「令和8年度入試日程」によれば、令和8年度の主な日程は以下のようになっています。

区分日程
Web出願期間2026年1月14日〜22日
試験日2026年2月3日・4日
合格発表2026年2月13日
再募集A 試験2026年2月19日
再募集B 受付2026年3月17日以降
(参照:(公社)静岡県私学協会「令和8年度入試日程」)

一度目の入試で不合格だった場合のために、2月19日の再募集Aと3月17日以降の再募集Bという二重のセーフティネットが用意されているのが特徴です。

さらに同じ私学協会のFAQでは、私立に入学手続をした後でも、中学校を通じて辞退手続きを取れば公立の再募集に出願できると説明されています。納入済みの入学金は返還されないという注意点はありますが、私立を押さえた後でも公立の再募集に挑む道は残されています。

私立学校の場合、選抜内容は学校によって異なります。私学協会の生徒募集一覧には、御殿場西や磐田東のように単願者は3教科、併願者は5教科と試験科目数が違う学校が複数記載されています。

不登校で学習の遅れを抱える生徒にとって、受験科目が3教科で済むか5教科必要になるかは、受験勉強の負担を大きく左右します。

また、静岡県では併願よりも単願の方が事前の内申基準が緩くなる傾向がある上、勉強する教科数も絞れるケースがあります。学習の遅れが気になる場合は、早い段階で私立単願に絞り、3教科の対策に専念するのも現実的な作戦の一つです。

「内申不問オープン入試」は静岡県には存在しない

ここで一つ、不登校の中学生の家庭に正確に伝えておきたい事実があります。

静岡県私学協会の生徒募集一覧PDFを精査したところ、御殿場西、知徳、日本大学三島、沼津中央、飛龍、桐陽、加藤学園、加藤学園暁秀、誠恵、星陵、静岡県富士見、清水国際、静岡サレジオ、東海大学付属静岡翔洋、静岡大成、静岡英和女学院、静岡学園、藤枝明誠、磐田東、浜松開誠館、浜松日体、聖隷クリストファーなど、県内の私立全日制高校はすべて「調査書」を選抜資料に含めて記載しています。

つまり、首都圏の一部地域にあるような「調査書を一切見ない、当日点だけで合否を決めるオープン入試」は、静岡県の私立全日制には制度として確認できません。公立同様、私立もやはり調査書(内申点)が重要な入試制度のようです。

この事実は、不登校で内申点に大きなハンデを抱えている生徒にとって厳しい現実になります。

「事前相談」という慣習

選抜資料に調査書が含まれているということは、私立を受験する場合も内申点と欠席日数が合否に影響するということです。そして静岡県の私立では、出願前に中学校の担任を通じて高校側と「事前相談」を行い、合否の見込みを確認する慣習が広く行われていると、ウェブサイトで紹介されています。

家庭教師のファミリーの記事「【静岡県の高校受験】仕組みを徹底解説!」では、静岡県の私立高校は内申点の最低基準を事前に中学校側に開示しており、単願か併願かでその基準が変わると解説されています。

また、中学校の先生から「受けてもいいよ」と言われた時点で、内申点においては合格基準を満たしていると考えてよい、とも紹介されています。

(参照:家庭教師のファミリー)

実務的には、中学校を通さずに私立の受験を進めるのは現実的ではないということです。

中学校にあまり通えていない場合、担任の先生との関係構築自体ができていないことが多く、ここが不登校生にとっての追加のハードルになります。早い段階で保護者から学校に連絡を取り、進学相談の場を設けてもらうことが、私立を選択肢に残すための最初のステップになります。

少し古い記事ですが、プロ家庭教師のジャンプの2017年の記事「私立高校入試(静岡県)」でも、静岡県の私立高校は事前に中学校へ合格に必要な内申点を具体的に伝えており、その基準をクリアしていればまず不合格にならないと解説されています。

一方で、当日点が極めて優秀な場合には特進コースへの昇格合格や特待生合格が出ることもあるという具体例も紹介されており、私立でも当日点が無意味なわけではないことがわかります。

(私立高校入試(静岡県) – 発達障害支援のプロ家庭教師のジャンプ)

不登校生のための全日制普通科:飛龍高校三島スクール

それでも、静岡県内に1校、不登校経験者を前提として開設された私立の全日制普通科の高校が存在します。それが県東部・三島市にある飛龍高等学校三島スクールです。

公式サイトの紹介では、平成11年に新設された「不登校、または不登校経験のある生徒、小・中学校で教室に馴染めなかった生徒が学ぶ、全日制高校の普通科コース」と説明されています。正式名称は「全日制 私立 飛龍高等学校 普通科 生活文化コース」です。

(参照:飛龍高等学校三島スクール「三島スクールはどういう学校か」)

調査書の提出は他の私立と同様に必要で、「調査書を見ない学校」ではありません。

ただし、不登校生・不登校経験者の受け入れを学校の存在意義として明示的に掲げているため、内申点や出席日数で門前払いされる構造ではない、という意味では他の県内私立と一線を画します。

不登校特化型である分、入学前の保護者説明会や体験入学への参加が事実上必須とされており、申込みは中学校を通じて行うのが基本になっています。県東部以外の地域から通うのは物理的に厳しい面があるものの、選択肢としては把握しておきたい1校です。

私立を狙う場合の現実的な動き方

私立についてまとめます。不登校生が静岡県の私立を受験するなら、以下の3点を意識しておくとよいでしょう。

1つ目は、不登校生の受け入れ実績がある学校に絞ること。

2つ目は、全日制と通信制課程の両方を持っている学校を選ぶと、仮に不登校になったとしても保険がきくこと(沼津中央高校など、入学後に全日制で続けるのが難しくなっても通信制課程に転籍できる仕組みは保険として強い)。

3つ目は、セオリーでいくと「まず中学校に聞く」のが公式ルートですが、不登校生が「基準の壁」を突破するには、まず保護者から直接学校に問い合わせて個別相談の場を設けてもらうこと。学校によっては、中学校を通さずに対応してくれるケースもあるかもしれません。


■ 不登校からの高校受験を成功させるには?

ここまで読んでくださった方には、静岡県の入試制度が決して不登校生に優しくないという現実が伝わったと思います。それでも、絶望して動かないよりは、現実を踏まえた上で取りうる戦略を整理しておく方が建設的です。

ルートの優先順位を整理すると、以下の4段階で考えるのが現実的です。

  1. 長期欠席生徒選抜(伊豆総合土肥分校または天竜春野校舎) — 通学可能なら検討すべし。倍率1.00倍で実質的に学力検査さえ受ければ合格圏に入る。
  2. 自己申告書を提出した上で、定員割れの全日制公立(松崎・富士宮西・御殿場南・池新田・湖西・沼津城北など) — 学力検査で平均点近くを取ることが前提。
  3. 単位制定時制4校(三島長陵・静岡中央・ふじのくに国際・浜松大平台) — 倍率1.00〜1.03で受け皿として機能。3部制で生活リズムを選べる。
  4. 私立(飛龍三島スクール、その他不登校受け入れ実績のある学校) — 中学校または保護者からの個別相談が必須。

どのルートでも避けて通れないのが、中3の1年間で基礎学力をどこまで戻せるか、という勝負です。

長期欠席生徒選抜にしても、定員割れ全日制にしても、最低限の学力検査の点数は必要になります。逆に言えば、内申がいくら低くても、ここで頑張れれば挽回の余地は確かに残されています。

過去の欠席日数や内申点は変えられませんが、これからの選択肢はこうした情報を知っているかどうかで大きく変わります。


■ 不登校からの高校入試(静岡編)よくある質問


■ 高校入試をがんばる不登校生、募集中

ということで、今回は、不登校の中学生が静岡県の高校入試(主に全日制高校)を合格する方法について考えてきました。

ただし、高校受験は人生の一大転機ではあるものの、取り返しのつかない選択ではありません。どの高校に進んだとしても、その後の大学受験や就職といったタイミングで再びチャンスがめぐってきます。

そのために今やるべきことは、ひとえに、基礎学力を身につけること。特に五教科の中学内容をしっかり学ぶ(学び直す)ことに尽きます。

実は、私たちSchorbitは、高校入試に向けて自宅から勉強する中学3年生の支援プロジェクトを開始しました。

その名も、Schorbit REBOOT

不登校でも高校からはがんばりたい。
高校入試に向けて日中、家で勉強したい。
中学校の学習内容に抜けはあるけど何とか勉強して取り戻したい。

そんな中学3年生(中学2年生の途中から参加可能)を応援します。

詳しくはREBOOT | 中学3年間の学び直しプログラムをご覧ください。多くの中学生の参加お待ちしております。