中高一貫校で不登校に…内部進学の現実と、大学受験へ向けた親の正しい関わり方

要約:中高一貫校で不登校になった場合
中学受験という過酷な試練を乗り越え、やっとの思いで入学した中高一貫校。「これで大学受験まで安心だ」と思っていたのに、突如としてお子さんが不登校になってしまった。そのときの保護者の方のショックや不安は計り知れません。
「このままでは内部進学できないのでは?」
「せっかく勉強が好きにだったのに」
焦る気持ちは痛いほどよくわかります。しかし、中高一貫校での不登校は決して「キャリアの終わり」ではありません。
本記事では、中高一貫校ならではの不登校の要因や内部進学のリアルな基準、そして再び大学受験を目指すために親がどう関わるべきかを、現実的かつ前向きな視点で解説します。
この記事の筆者について
元中高一貫校教員・現オンラインフリースクール代表この記事の筆者は中高一貫校で教員を務めてきました。その中で、実際に不登校になってしまった生徒の対応や、内部進学ができず外部の高校へ進路変更をする生徒の支援を多く経験しています。
現在は、高校年代向けのオンラインフリースクール「シン・ガッコウ Schorbit(ショービット)」の代表を務めています。教員時代から変わらず不登校や成績低迷に悩む生徒たちに関心を持ち続け、彼らが再び自分らしい道や難関大学への挑戦に向かって歩み出せるよう、伴走支援を行っています。
本記事は、そうした私の「現場でのリアルな経験」に基づく一次情報からお伝えするものです。
■ 大前提:中高一貫校の不登校は「中学」と「高校」で扱いが違う
保護者の方がまず把握しておくべきは、同じ「中高一貫校の不登校」であっても、中学段階と高校段階では制度上の扱いが全く異なることです。
中学段階:義務教育のため卒業可能。地元公立中への転校も容易
中学校は義務教育の期間であるため、長期間学校を休んでいても文部科学省のルール上は進級・卒業が可能です(学校内部で別の規定がされていることもあります)。
また、学校の雰囲気や授業進度がどうしても合わず、学校側から転学(転校)を勧められた場合でも、地元公立中学校への転学が必ず選択肢として存在します。公立中学校は義務教育なので学費もかからず、学習進度も中高一貫校より緩やかであることが多いため、環境を一度リセットして高校受験に備えるという道は十分に現実的です。
高校段階:休んだままでは進級不可。通信制高校などへの転学が必要に
一方で、高校に上がった後に不登校になった場合は状況が厳しくなります。高校は義務教育ではないため、全日制高校では一定の出席日数や成績の基準を満たさないと、単位が修得できず進級・卒業ができません。
さらに、高校段階では、不登校になったからといって地元の全日制高校に転校することは原則としてできません。そのため、高校で不登校が長期化した場合は、自分のペースで単位を取得できる通信制高校などの転学先を探す必要が出てきます。
■ 「内部進学」のリアルな基準と進路選択肢
お子さまが中高一貫校に通う中で、中学段階で不登校になった保護者の方にとって最大の関心事の一つが「そのまま高校へ内部進学できるのか」ということです。この点について詳しく解説していきます。
内部進学の基準や制度は学校によって多様
「中3の〇月に三者面談があって肩たたきにあう」といった情報がネット上にはありますが、内部進学の基準は学校によって千差万別であり、一概には言えません。
中高一貫校といっても完全な一体型(中等教育学校)から中高の併設型まで様々ありますし、公立も私立もあります。学校の状況によって、内部進学という言葉の意味そのものが異なってくるわけです。
中等部と高等部で組織が明確に分かれており、高校に上がる際に入試に相当する厳格な内部進学試験を課す学校もあれば、基本的には入学した全員を高校卒業まで面倒を見る方針の学校もあります。そのため、ネットの情報を鵜呑みにせず、お子さんが通う学校の正確な基準を把握することが重要です。
「外部受験」の提案は追い出しだけでなく助言の場合も
登校状況が著しく悪い、あるいは成績不振が深刻な場合、学校側から「外部の高校を受験してはどうか」「通信制高校の方が向いているのでは」と提案されることがあります。
その中には、内部進学の基準を満たしておらず、そのままでは高校にあがれないので「出ていってくれ」という追い出しの意味のこともあります。ネット上では時折、保護者の方が「学校から見捨てられた」とショックを受けたと嘆くエピソードが散見されます。ところが、必ずしもそうではないかもしれません。
この手の面談において、学校としては、単にお子さまにとっての最適な環境を提案しているだけの場合があります。全日制の高校に進学しても、今の状況のままではどのみち単位が取れず退学になってしまう可能性が高いため、「この子には通信制高校のような、自分のペースで学べる環境の方が合っているのではないか」という、現実的かつ前向きな助言として提案しているケースです。
このように、外部受験の提案が意味するところも様々です。大切なのは、お子さまにあった学習環境を冷静に検討することです。
全日制にこだわらない、多様な進路の選択肢
もし内部進学が難しいとなった場合でも、絶望する必要はありません。高校入試で進学校にチャレンジする道や、通信制高校へ入学してそこから大学受験を目指す道など、多様な選択肢が存在します。
実際、リクルート進学総研の調査によれば、今や高校生の約10人に1人が通信制課程の生徒であり、卒業後に大学進学を果たす割合も過去10年で大きく増加しています。通信制高校から大学を目指すルートは、もはや特別なものではなくなっているのです。

■ なぜ中高一貫校で不登校に? 4つの要因をご紹介
そもそも、なぜ優秀なはずの子どもが中高一貫校で不登校になってしまうのでしょうか。実は、その要因については、中高一貫校といえども普通の中学や高等学校と変わりません(一部、中高一貫校特有の要因もあります)。
一般的に、不登校の要因を明確に言い切ることは難しいのを承知のうえで、ここでは、代表的なものをいくつかご紹介します。
要因1:6年間固定化されやすく、リセットが難しい「人間関係」
不登校について、最も本質的な原因として挙げられるのが「人間関係」です。特に筆者自身が見聞きしたところでは、中高一貫校の不登校はこのケースが最も多かったです。
完全な中高一貫校は高校受験でのメンバーの入れ替わりがないため、6年間同じ人間関係が続きます。小規模校でなくても、人間関係が固定化されてしまうことが多いです。
これは安心感に繋がる反面、一度人間関係でつまずいたり居心地の悪さを感じたりすると、「環境をリセットする逃げ場がない」という強い閉塞感を生み出します。
要因2:中学受験の「燃え尽き症候群」と「中だるみ」
小学生時代に過酷な受験勉強を長期間がんばり抜いた反動で、入学後に目標を見失ってしまう「燃え尽き症候群」も少なくありません。高校受験という直近の目標がないため中だるみが生じ、そのままゲーム等にのめり込んで生活リズムが崩れ、不登校へと発展するケースもあります。
また、小学校までは「人より勉強ができる」ことをプライドに生活していた子が、周囲がみんな賢いという中高一貫校の環境に身を置くことにより、プライドが崩れさり、意欲を失って不登校になるケースもあります。
要因3:ハイスピードな授業進度についていけない「深海魚」化
多くの中高一貫校では、公立よりも速く授業が進み、難易度の高い独自教材を使用します。一度授業でつまずくと、自力で遅れを取り戻すのは困難です。成績が学年下位層に低迷したまま浮上できなくなる、いわゆる「深海魚」状態に陥ると、自信を喪失し、学校へ行くエネルギーを失ってしまいます。
この深海魚化と呼ばれる問題は、一般的には中高一貫校の進路を語るときに言及される現象ですが、不登校の遠因になることがあります。ただし、ややメディア等で強調され過ぎているような印象もあります。

要因4:特性(HSC等)への配慮の現実
敏感な子(HSC: Highly Sensitive Child)や特性の強い子が、公立中学校で浮いてしまうのを懸念して、同じような学力層が集まる中高一貫校を受験するケースはよくあります。
しかし現実には、中高一貫校に特別な配慮や設備(別室登校用の部屋など)が必ずしもあるわけではありません。むしろ公立中学校の方が、校内教育支援センターなどの体制が手厚く、柔軟な対応ができるケースもあるほどです。中高一貫校に特殊な対応を期待しすぎると、入学後にギャップに苦しむことになります。
こうした子どもが、環境に適応できず不登校になるケースも少なくありません。中学段階ならば、公立中への転学だけでなく、フリースクールの利用なども検討するとよいかもしれません。
■ 不登校であっても大学受験は戦える
不登校や成績低迷で立ち止まってしまっても、大学受験に挑戦することは十分に可能です。しかし、ここには中高一貫校の保護者が陥りがちなポイントがあります。それらについてご紹介します。
12歳と18歳は違う。大学受験には「内発的動機付け」が不可欠
中学受験は「親の受験」とも言われるように、親の徹底したスケジュール管理や、「合格したら〇〇を買ってあげる」といった外発的な動機付けで乗り切れた部分も大きかったはずです。
しかし、18歳の大学受験は全く別物です。本人が「自分はなぜ勉強するのか」「将来どうなりたいのか」という内発的な動機付けを持ち、自らコントロールして向かわない限り、ある程度の自己が確立した年齢での受験勉強は続けられません。親が無理やりコントロールしようとしても、激しい反発を生むだけです。
本人が安易な道に逃げようとしても、親は本来のポテンシャルを信じ続けるべき
中高一貫校で勉強に挫折すると、本人は自信を失い、勉強から逃げるように「動画配信者になりたい」「ネイルアーティストになりたい」など、全く別の道へ関心を向けることがよくあります。もちろん、その興味を頭ごなしに否定してはいけませんが、親はそれに安易に流されず、お子さんの「本来のポテンシャル」をこっそりと信じ続けてください。
中高一貫校に合格したお子さんは、間違いなく高いポテンシャルを持っています。本人が「やりたい」と心から思えれば、高度な専門職(技術開発や法曹関係など)へ進む能力は十分に秘めているのです。中高生に「医者になりなさい」と強要するのは無意味ですが、親は心の中で「この子には必ず力がある」と信じ抜くことが重要です。
最も残念なのは、不登校になって学習が遅れてしまったから、もう間に合わないと親子ともに諦めてしまうことです。学習の遅れても取り戻せます。
「勉強しなさい」ではなく、人生を楽しんでいる「ロールモデル」を見せる
では、どうすればお子さんのやる気に火がつくのでしょうか。
「勉強しなさい」と口うるさく言うのは逆効果です。効果的なのは、『勉強した結果として社会で力を発揮し、自信満々に楽しそうに生きている大人の姿(ロールモデル)をたくさん見せること』です。
そうした大人との出会いや対話を通じて、「学ぶことには価値があるんだ」「自分もあんな風にかっこよく生きたい」と感じさせることが、自己効力感と学習意欲を取り戻す最大のきっかけになります。子どもが憧れる対象には、実際には努力の結果、成功を収めた人がいるはずで、その事実に目を向けさせればよいのです。
中高一貫校ではそうした取り組みをキャリア教育の一環として行っているケースも多いですが、不登校のお子さんはそうした機会に参加できず、どんどん関心の幅が狭くなってしまいます。同世代の友人から刺激を受けることも減っていきます。オンラインでもいいのでいろんなイベントに参加するなどして、いろんなつながりを得るように促してあげてください。
ここに限っては、子ども任せにすることはおススメしません。自己効力感を失った子どもは、本人の関心が広がるのに任せてしまうと、外部とのつながりで危険な目に遭うことも少なくありません(違法行為に関心を持つ、ゲームで知り合った人と家出するなど)。大変なことではありますが、子どもの成長を促すために最適な他人との出会いを、可能な限り多く与えてあげてください。
■ 回復と学習再開に向けたアプローチ
不登校からの「回復」というと、様々な意味があります。ここでは、学校への再登校ではなく活動的になるという意味での「回復」に向けた具体的なステップをご紹介します。
家庭を安心基地にし、親以外の「ナナメの関係」を活用する
まずは、家庭をプレッシャーのない「安心基地」にすることが最優先です。その上で、思春期特有の親への反発を避けるため、親でも教師でもない第三者、つまり「ナナメの関係」を活用しましょう。
利害関係のない外部の大人、フリースクールのスタッフなど、フラットに相談できる他人の存在が、お子さんの心を開く鍵となります。

焦らなくても大丈夫。基礎からの「学び直し」で十分に間に合う
学習を再開する際は、現在のハイスピードな授業に無理に追いつこうとする必要はありません。焦らずに、つまずいた時点まで戻って「学び直し」をすることが最も確実な近道です。
中高一貫校で不登校になり成績が極端に落ち込んでも、数年後に自分のペースで基礎から学び直し、高校3年生のタイミングで一気に学力を伸ばして難関大学へ逆転合格するケースは、それほど珍しいことではありません。
ところが、無理してすぐに追いつこうとすると、なかなかうまくいかなくて逆戻りというケースもあります。テストの点数などにこだわらず、できることを少しずつ増やしていくという視点での学びが重要です。
■ まとめ
一生懸命に中学受験を伴走し、「この子の将来は明るい」と信じて中高一貫校へ送り出した保護者の方にとって、お子さんが不登校になり、部屋から出てこない姿を見るのは本当に辛く、ショックなことだと思います。筆者自身も、現場で多くの保護者の涙を見てきましたので、そのお気持ちはよくわかります。
しかし、そこで「うちの子はもうダメだ」と絶望する必要は全くありません。
記事の最後に、1つだけ教員として経験した極端なケースをご紹介します。
私が高校1年の担任をしたとき、不登校に近い状態だった生徒がおりました。彼は入学時の成績はよかったのですが、中学3年の途中から休みがちになり、学校への意欲をかなり失っているようでした。
しかし、高校生活の途中からやる気を出し、さまざまな活動に取り組み(例えば科学オリンピック等へのチャレンジ等)、結果として、東京大学に推薦入試(学校推薦型選抜)で入学していきました。これは極端なケースですが、多様な可能性をもつ中高一貫校では、こういうことも起こり得ます。
長い人生において、中高一貫校での挫折は一つの通過点に過ぎません。そこから自分に合った環境を見つけ、心身のエネルギーを回復させ、再び目標に向かって力強く歩み出し、難関大学への進学やその後の社会で大活躍しているケースはけっして少なくありません。
どうか長い目で見て、お子さんの持つ可能性を諦めないでください。
■ 中高一貫校からの不登校生、募集中
ということで、今回は中高一貫校からの不登校生というテーマで様々な角度から書いてきました。すでにご理解いただけたと思うのですが、学校に登校できないことと、進路が閉ざされることはまったく別です。
学校に行かないままでも、勉強のやる気を出し、高校受験や大学受験を突破することは十分に可能です。
実は、私たちSchorbitは、中学・高校それぞれの段階で自宅からの受験を支援しています。
中学生向け、高校受験対策のSchorbit REBOOT
高校年代向け、大学受験対策のSchorbit
この2つで、中高一貫校からの不登校生を再び軌道にのせるためのサポートを行います。
詳しくは該当する画像をクリックしてください。皆様の参加を心よりお待ちしております。


