※ Newsでは、Schorbitに関わる出来事をブログ形式で綴っていきます。
SchorbitのYouTubeチャンネルでは、このたび、内田良先生との「不登校に関する語り」をテーマにしたコラボ動画をアップしました。
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【 教育対談 】内田良教授(名古屋大学)と不登校語り part 1 不登校「語り」の死角 高校生の不登校から考える
【 教育対談 】内田良教授(名古屋大学)と不登校語り part 2
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■ 内田 良 (うちだ りょう) 先生について
名古屋大学大学院教育発達科学研究科教授
スポーツ事故、組体操事故、「体罰」、教員の部活動負担や長時間労働などの「学校リスク」について広く情報を発信している。2015ヤフーオーサーアワード受賞。近著に『いじめ対応の限界』 (東洋館出版社)がある。
他の著書に『校則改革』『ブラック校則』『ブラック部活動』(いずれも東洋館出版社)、『部活動の社会学―学校の文化・教師の働き方』(岩波書店)、『教育という病 子どもと先生を苦しめる「教育リスク」』(光文社新書)など多数。
■ 動画について
不登校に関してのこれまでの語りを整理し、これからの在り方を考える内容です。世の「不登校」動画は生徒や保護者に向けて何らかのメッセージを発したものが大半ですが、この動画はそういったものではありません。生徒、保護者、学校(教員)、行政、あるいはフリースクールといったステークホルダーがどのようにかかわっているかについて議論する中で、たとえば「高校生の不登校」が死角となっている事実などが指摘されています。
■ 内容の要約
動画全体を簡単に要約になります。
#1 不登校の語りとは?
- 近年、不登校の語りは「学校に無理して行かなくてもいい」という方向に変わってきたが、問題が解決したわけではない。多様なニーズがあるため「行かなくてもいい」という語りだけで一面的に解決に向かうものではない。
- 高校生なら学校-本人間の二者での対応が中心になるが、学齢が低い(小学生などの)場合は学校-保護者-本人の三者での対応が中心となる。つまり学齢が低いほど、学校-保護者間での不登校対応方針でのすり合わせに苦慮しやすくなる。
#2 高校の不登校
- 義務教育ではなく通信制高校があることから、高校の不登校問題は語られることが少ないが、実際には存在する。その実態把握の調査は難しい。
- 通信制という巨大な受け皿が存在する高校の不登校は、小中のそれとは明確に異なる。全日制に踏みとどまるか、全日制から通信制に転学するかという選択が中心になる。
#3 不登校の保護者
- 不登校について保護者との連携が再三語られているにもかかわらず、保護者の置かれた状況については調査さえされていない。
- 最近になり「不登校の保護者の孤立」は行政も認識するところになった。不登校の子どもを抱えた保護者の離職率が高いこと等を踏まえると、教育問題の枠には収まらず、福祉も絡んだ社会問題である。
- 小中の不登校の受け皿のひとつがフリースクールであり、公教育に準じるエッセンシャルな役割を果たしているといえる。が、その実態は把握されておらず、また全国に均一に存在するわけではないから、地域格差が存在する。
- 不登校に限らず、臨時休校時に最も困るのは小学校低学年の保護者である。しかも、男女格差(母親が仕事を休んで子どもの面倒を見る慣習)も存在する。
#4 学びの保障と先入観
- 不登校の語りの歴史を紐解くと、元は「現状の学校は息苦しいから離脱しよう」というものが大半であった。しかしそこから時間が経ち、今では制度の問題が中心になってきている。制度の問題とは、たとえば学びの機会保障、成果の保障、それによる教育接続(高校や大学への進学)である。
- 学びの多様化学校(旧:不登校特例校)の拡充は、「現状の学校では抱えきれない子どもがいて、そういう子どもの学びの居場所づくりが必要だ」という認識を行政が持っていることを示す。すなわち、不登校に関する公の認識が変わってきている。
- 学びの多様化学校で得られたノウハウは現状の小中学校にも広げていくべきだ。
- 不登校に関する世間の先入観は強い。たとえば教育を学ぶ大学生も「不登校の原因は?」ときくと半数以上が「いじめ」と回答する。しかし現実はもっと多様である。また不登校の原因調査で「宿題ができていないから学校にいけない」と回答した子どもが多かった事実に、多くの学生は意外と感じる。このことは不登校の原因や不登校児童・生徒に対して、多くの人がある先入観を持っていることを示す。
#5 個別対応と教員の負担
- 実技科目(音楽や美術や体育など)は能力が否応なく可視化されることが多い。座学でいえばテストの点数が公表されている状態に近い。これが不登校のひきがねになることもある。これを解消しようとすれば個別対応が必要になる。
- しかし教員サイドからみると、多様な子どもへの個別対応は業務過多になりかねない。教員の人数が子ども人数に対応して決まっている限りこの問題は解消されにくい。
- 不登校やいじめといった個別対応が必要な問題を教員ではない専門家(スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールロイヤー等)に全面的に委ねることは本当に可能なのか? たしかに対応は専門家できるが、専門家が対応することで教員の負担が減るという図式は成り立ちにくいのではないか。
- 教員が業務過多に陥らず個別対応を充実させるには、教員一人あたりのコマ数を減らしてその分の時間を個別対応にあてるか、教員の業務を授業に限定して専門家が完全に面倒をみる(既存の担任業務も含めて専門家が行う)か、いずれかしかない。
#6 公教育とフリースクール
- 不登校の保護者が自らフリースクールを作ったり、悩みを共有する当事者の会を作ったりといった動きをみると、不登校児童・生徒の対応は(保護者の)自助努力が中心となっていること、いいかえるなら、公的な補助の不足を示す。
- 不登校の本人を取り巻くステークホルダー(保護者、学校、行政、フリースクールなど)のネットワークづくりが必要だが、制度面の問題などからできていない。
#7 エンディング
- 不登校やいじめの対応について学校現場の苦悩は語られにくい。教員という立場で声をあげることが難しいからだ。『いじめ対応の限界』はいじめについてその問題を明らかにしているが、それと同様の仕事が不登校でも必要である。